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掲載日:2020年10月20日

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ワークショップ活動の記録「素材からの想像/造-絵 平面と支持体」

「素材からの想像/造ー絵 平面と支持体」

  • 日時:2020年6月13日(土曜日)、14日(日曜日) 各日とも午前10時~午後3時
  • 場所:創作室2
  • 担当:伏見恵理子(当館学芸員)、大嶋貴明(当館学芸員)
  • 参加者数:1日目8名、2日目8名

1日目 6月13日(土曜日)

新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から中止していたワークショップを、6月から再開した。定員を8名とするほか、感染症対策をして行った。
今回のワークショップは、絵を描くときに使う素材、物質から広がるイメージについて、考え、体験をするものである。どのような素材の支持体に、どのような媒材(絵具など)で描くか、また、それが出てくるイメージをどう変えていくかということに注目した。絵画の支持体とは文字通り絵を支える物で、様々な素材が支持体に使われている。
1日目の午前中は、まず、パウル・クレーの作品を通して、多様な素材と技法が生み出すかたちについて話をした。
次に、支持体と媒材について、話と体験をした。支持体になる素材は、それぞれ違う抵抗感や吸収性を持つので、絵を素材から考えると、媒材と支持体、2つの物質のぶつかり合いとして見ることができる。ぶつかり合いを体験するために、2種類の支持体と2種類の媒材の組み合わせで体験してみた。綿布とグレーのボール紙に、水と油(リンシードオイル)で描き、さらにそれぞれに顔料(バーントシェンナ)を混ぜて描き、抵抗感の違いや痕跡をたしかめた。

創作室の様子 2つの支持体

そのあと、山水画と水墨画における「水」の違い(描かれたものとしての水と、描く材料としての水)について話をした。
次に、水と油の中間的な媒材として、エマルションについて確認した。2つのビーカーを用意し、それぞれに水と油、水と油と洗濯のり(PVA)を入れてそれぞれハンドミキサーにかけ、さらに顔料を混ぜた。界面活性剤になる洗濯のりを入れた方が乳化する様子を観察した。
午後は、まず、絵画の層構造、キャンバスの布地、目止めと地塗り塗料の役割、今回目止めに使う膠について話をした。次に、ウサギ膠の膠水を準備した。
そして、2日目の午前にかけて、2枚の麻布の生地から3種類の状態の支持体をつくり始めた。具体的には、下地加工をしていない麻布の生地を2枚用意し、1枚はそのまま、もう1枚は木枠に張り、膠水による目止めをし、半分の面積にジェッソを塗る。そうすると、3種類の状態の支持体ができる。それを2日目の午後に描き比べる。1日目は木枠にキャンバスを張り、膠水を塗ったところで終了した。織り目が固定されていない、生地を張るのは全員初めての経験だった。織り目にそった線を鉛筆でひき、線を木枠の縦横に合わせ、手で軽く引っ張る程度の強さでキャンバスを張った。膠水を刷毛で塗り、目止めをしているとき、参加者が膠という素材に興味を持っている様子だった。

支持体つくり 支持体つくりの様子 
膠水をキャンバスに塗る

2日目 6月14日(日曜日)

2日目、会場に着くと、キャンバスにしわが寄り固まっていたので参加者は驚いていた。膠水の乾燥と共にキャンバスが縮んだためだ。すぐにタックスを抜いて外し、再度キャンバスを張り直す。(丈夫な支持体をつくるためには、本来は膠の二層目を塗り、張り直した後も膠水を塗るが、今回は時間の関係で工程を省略した。)キャンバス張り器を使って張っているときに、前日に柔らかい生地を手で張ったときとは違い、織り目が膠によって固定され板のように変化したことを感じた。次に、地塗り塗料の種類について確認したあと、キャンバスの半分の面積にジェッソを塗った。乾くのを待つ間、絵を見るときの物質性と現象的な画面についての話をした。

キャンバスの状態を見る キャンバスの状態を記録する 
キャンバスを改めてはる 半分にジェッソを塗る

午後はジェッソが乾き、下地加工をしていない麻布の生地から3種類の状態の支持体がそろった。柔らかい生地の状態、木枠に張り平面化して膠水による目止めをした状態、さらに白の地塗り塗料を施した状態の3つである。
素材の違いによって、媒材をのせたときの抵抗感などが変わったときに、絵の造形、出てくるイメージがどう変わっていくか。それを探るため、3種類を並列に描き比べた。主にアクリル絵具を使った。実際にそれぞれに制作の中で触ってみると、物質的特性が強く出て、抵抗感があるときがある。それが思いも寄らぬイメージを喚起するときもあり、各人がそこから発想を広げて制作した。最後は各自取り組んだ3枚を並べ、制作中の素材についての実感について話した。どのような素材の支持体に、どのような媒材(絵具など)で描くかということを、何を描くかと同じくらい大切なこととして捉えてみるワークショップだった。個人の制作や普段の生活で、しっくりくる素材とイメージの組み合わせを見つける手がかりになればと思う。

素材の違いを確かめる 違いを確かめながら描く

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