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掲載日:2021年2月9日

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ワークショップ活動の記録「インスタレーションの空間・絵画の空間」

「インスタレーションの空間・絵画の空間」

  • 日時:2020年10月17日(土曜日)、18日(日曜日) 各日とも午前10時~午後3時
  • 場所:創作室2とその周辺
  • 担当:大嶋貴明(当館学芸員)、齋藤由布(当館職員)
  • 参加者数:1日目8名、2日目8名

1日目 10月17日(土曜日)

新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から定員を8名とする他、活動前の検温、時中のこまめな手指消毒、一人1台の机を使用し参加者間の距離の確保、参加者同士の会話の場面を極力少なくし、用具は共有しないよう個別に配布するなどの感染症対策をして行った。
今回のワークショップでは、実際の空間を使ったインスタレーションと、絵画的な平面にあらわれる空間表現の各々の特性や可能性について、その空間を変形したり、あるいは空間から受ける感じを変えたり、空間の中で動いてみたりするなどして、三次元と平面上を行き来しながら、様々な空間表現について体験を踏まえ探ってみた。

1日目。まず、音の変化を頼りに捉えどころのない空間を探ってみる。参加者は目を閉じて、スタッフが様々な場所や移動しながら手や木材をたたき合わせて出す音に耳を澄まし、音の変化でどのような空間の変化があるか、体感を通して考えた。
次に、二次元と三次元の空間のとらえについて話をした。その後、4人ずつ2つのグループに分かれ、グループ毎に参加者がローテーションで、スタッフから出される課題をもとに、各グループの机上に長さや太さが異なる木材を配置していく。

空間について 2本の木材

「一箇所だけの特別な場所」「『中心』と感じるギリギリはどこか」「二箇所だけの特別な場所」・・・といった風に始まり、「大きさが違う木材に変えてみる」「『手前』と『前』に置いてみる」「それまでに組んだ木材に、3本足して、全く違った空間をつくる」など、各課題にグループから一人ずつ、課題と目の前の木材が置かれたことによって生まれる空間に対峙しながら、新たな空間を作っていく。それまでの課題で他の参加者が作った空間を崩すような、または配置し直すような行為に、はじめは戸惑いも見られたが、「なぜその配置なのか」を説明する中で自身のイメージがまとまったり、イメージが共有され、新たな気づきにつながっていった。さらに「相互の机上にできている空間の作り方を自分のグループにも取り入れる」「創作室の外、廊下や窓の外から見ても『かっこいい』と見える構成」を作り上げていく。他の人が構成した空間を、別の条件を加えながら再構築していくなどの過程で、意識的に視点を広げ、多面的に「空間」を考えることやその手立てについてじっくり確かめて1日目は終了した。

どんどん配置する さらに配置する

2日目 10月18日(日曜日)

はじめに、3種類の空間((1)現実の空間としての物理的空間、三次元空間、(2)絵画や立体造形などの表現された空間、イリュージョンとしての空間、(3)頭の中でイメージされた空間などの想像空間)を、一日を通して意識し、構成を試みていくことを確認した。
次に、創作室前の廊下と中庭の間の壁を挟んでの内と外とをつなぐように8人が外向きに円状に並び、「視点を動かさず、自分が見える範囲の全ての空間」のスケッチに取り組んだ。今いる場、そこから見える中庭、その奥の通路、そのまた奥の…と空まで取り入れた空間を描くことを意識する。描き始めると筆が止まらない。そのため、ここではあえて30分間の時間制限を設けた。

視野の境界 視野の範囲

内側をかく 外側をかく

それぞれのスケッチに水平線(目の高さ)と視界の端(視野の境)の線を加え、創作室で8枚のスケッチの水平線をつなげるようにして並べてみる。「空間の境目や違いをどう捉えたか」を伝え合い、奥行き感だけではなく、空間のつながりや質の違いが見え、スケッチされていたかを話し合った。
続いて、逆さまに見える空間を歩いてみた。目の下に鏡を当てると足下に空が広がっているように感じる。その状態で廊下や中庭、柱と柱の間を歩く。普段見えているものや感じている空間とは違った空間体験を通して、体験したことのない感覚に触れ、午前を終了。

水平線で並べてみる 鏡で歩く

午後からは、「違う空間をつなぐ」というテーマでインスタレーションの空間を考えた。
共通の材料として、表裏が銀と黒の農業用マルチシート(反射シート)を長さ約25M、幅2Mで一人1枚ずつ用意し、その他、テープや紐、針金などは用途に応じて使えるようにした。最終的には「A4版のクロッキー紙にエスキースして完成」とし、どこの空間をどういう意図でつないだか伝えることができることを目標とした。用紙は3枚配布し、1枚目につくろうと思うもののアイデアを5種類以上描き出し、2枚目にはそれを3つくらいに絞り、最後の1枚に「これだ!」という構図を念入りに描き上げる。構想を練る段階で模型を作ったり、実際にシートを広げたり、動かす、柱に巻いてみるなどしてイメージを確かめていくこととした。多くの参加者がはじめは戸惑い、シートを見つめながら思案を巡らせていたが、「悩む過程が大切であり、そのことも楽しむ」ことが重要と、徐々にアクションを楽しみながらイメージを構築していった。

マルチシート シートを前にスケッチ

巻いてみる 広げてみる

最後は、それぞれのエスキースや、構想を練りながらつくり上げた空間を鑑賞した。一方向からだけの見方になっていないか、空間の中に自分がいるか、また、すっきりとつくることで自分がつくりたいものにより近づくことができるのではないかなど、空間をさらに多面的に見ることを考えるワークショップだった。

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