掲載日:2023年12月5日

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学校アウトリーチ活動の記録2

授業内容

なんでこれが美術なの?美術ってなんだろう―イスと《泉》―

マルセル・デュシャン《泉》と、自分たちが座っているイスを使った活動を通じて、美術や現代美術について考えます。

目的

美術や現代美術の発想について班内でディスカッションやワークを行うことで、現代美術に親しむきっかけにすることを目的としています。

東松島市立鳴瀬未来中学校における実践例

  • 日時:令和5年10月4日(水曜日)5校時、6校時
  • 対象:2年1組、2年2組

現代美術の鑑賞を目的として「なんでこれが美術なんだろう」というテーマで活動する旨を伝え、まずは「美術」について考えることから学習を始めました。3~4人の班を組み、それぞれが「美術」について持っているイメージについて班内で意見交換を行いました。
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その後、モニターに映し出されたマルセル・デュシャンの《泉》の写真を鑑賞しました。「これが美術に見えるか」という問いに、男子生徒よりも女子生徒の方が「見える」と答え、その理由として、「きれいなかたち」や「不思議なかたち」などの答えがありました。
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《泉》の正体が明かされないまま、次は、自分が座っているイスを観察しました。その際、「自分のイスが見分けられるようにすること」と「見つけた特徴から自分のイスにタイトルをつけること」を課題にして活動しました。観察し、タイトルを付けた後で、それを班内で共有しました。生徒の多くは、主にイスについた絵具や座面・背板の木目、背板の裏のシールの跡などから、そのイスの特徴を見出していました。
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自分のイスを様々な角度、視点から撮影する活動では、イスを逆さに立ててみたり、床に座ったりなどしながら、熱心に実験的な写真を撮る様子がうかがえました。撮影した写真から一番イスに見えない写真、一番美術的だと思う写真を選び、なぜそのように感じたのかを班内で発表し、感想を述べ合いました。少し斜めの角度から撮ったことで、イスのかたちが別の印象になった写真や、イスを含めた何気ない風景を撮影した写真など、独創的な写真が数多く見られました。この活動で、普段座っているイスへの印象がどう変わるかを確かめました。
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イスの活動を終えたのちに、再度《泉》をモニターに映し、その正体(既成の男性用小便器)を知らせました。改めて「これが美術に見えるか」という問いに「見える」と答える生徒の数は減り、「正体を知る前後では印象が変わったか」という問いには、「変わった」と答える生徒が約半数を占めていました。
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活動を通じて、自分が座っているイスに抱く印象は変わったこと、また正体を知った前後で《泉》に抱く印象が変わったことを踏まえて、私たちは思いのほか先入観でモノを見ているかもしれないということを考えました。そして、現代美術は、私たちが知っている「美しさ」を再生産しているのではなくて、先入観などを取り払うことで、まだ私たちが知らない、様々な場所に潜んでいる新しい「美しさ」を探しているかもしれないという話を伝え、まとめとしました。

生徒の感想には、「印象に残ったことは、まだ知らないものをみると、美しいか美しくないかが迷うけど、その物の正体を知ったらはっきりと変わるというのが印象に残りました」「『先入観で見てしまう。』ということに共感しました。確かに美術館に普段使っている色々な物が置いてあったら、『芸術なんだ。』と思ってしまうと思いました。これからは様々な視点で見たいです。」などの記述が見られました。

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