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一昔前,牛肉は霜降りがあれば「おいしい」とされていました。しかし,現在では,美味しさについて,図1のように認識が進み,それぞれの項目に関しての研究が進んでいます。そのような中,和牛においては,健康に良いとされるオレイン酸※1を含む一価不飽和脂肪酸(MUFA)含量が注目され,第9回全国和牛能力共進会鳥取大会(H19)からはオレイン酸含量が審査項目に組み入れられ,次回の第12回全国和牛能力共進会鹿児島大会では,新たな出品区分として脂肪の質評価群が設けられることとなってます。
MUFAが多くなることで「香りが良くなる。※2」「脂肪の融点が低くなり,舌触りや脂肪の口溶けが良くなる。」と言われ,従来の脂肪交雑中心の改良だけではなく,近年では,脂肪の質についての改良を進める県が出ています。
一般的にMUFA含量の測定は,牛肉から脂肪を採取し,実験室で抽出を行いガスクロマトグラフィー等の理化学分析を行うため,結果がでるまで一週間程度を要します。
それに対し,宮城県畜産試験場でも使用している食肉脂質測定装置(図2)は,前述の理化学分析とは異なり,棒状のプローブの先端から光(近赤外線)を対象に当て,反射した光の波長や強度を測定し,内臓するコンピュータで検量線を基に計算(※3)し,対象物のオレイン酸やMUFA含量を迅速に推計する装置となっています。
このプローブを枝肉の筋間脂肪に当てること(図3)で,枝肉を傷つけることなく,測定可能であること,5kg超と重量はあるものの持ち運びが可能で実験室ではなく,食肉市場の冷蔵庫内で迅速にオレイン酸やMUFA含量(%)を簡易に推計(図4)できるため,各県で利用が進んでいます。
宮城県では,平成23年にこの装置を導入し現在まで約3,000頭を測定しました。
全国和牛能力共進会鹿児島大会(R4.10)では,脂肪の質の育種値評価が判明していることが出品条件となっています。宮城県における脂肪酸組成の育種価評価(※4)については,これまでの測定結果を基に全国和牛登録協会で分析を行っています。今後も,より精度の高い育種価評価ができ,新たな種雄牛の選定指標の一つとして利用できるよう測定頭数を増やしていきたいと考えています。
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