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(畜産試験場)
豚マイコプラズマ性肺炎(MPS)は,Mycoplasma hyopneumoniae(M.hp)による豚慢性呼吸器感染症の一つであり,養豚業界に大きな経済的損失を生んでいます。一般的な感染症対策として,抗生物質やワクチンの投与,SPF豚の導入等がありますが,これらは,費用がかかる上,豚の生理学的状態や環境要因に左右されます。更に,日本の農水畜産物における抗生物質使用量はヒトの医療現場の3倍以上ともいわれ,多剤耐性菌の出現も懸念されるなど,社会問題にもなっています。これら諸問題を解決し消費者に安全・安心な豚肉を提供するためにも,抗生物質等に依存せず感染症に罹りにくいという「抗病性」を有する豚群の造成技術を開発することが重要と考えられます。
宮城県畜産試験場では,MPSの肉眼的特徴病変である「肺の両側性肝変化」の面積を少なくする方向に改良を重ね,遺伝学的にMPS抗病性を示すランドレース種系統豚「ミヤギノL2」(LA)の育種に成功しております。今回,LA等純粋種5品種と,これらの雑種(雑種第一代,三元交雑種),計12品種238頭(表1)を用い,肺の肉眼・組織学的病変の発現状況及び肺組織内のM.hp抗原量をスコア化して比較することで,MPS抗病性育種の基礎的知見の収集を試みました。
その結果,LAの肉眼・組織学的病変及びM.hp抗原量は他品種よりも有意に少なく,LAのMPS抗病性選抜の有効性が確認されるとともに,肺組織内のM.hp抗原量も減少する方向に改良された可能性が示唆されました。また,LA交雑種(雑種第一代,三元交雑種)のスコアはLAと一般交雑種の中間に位置したことから,LA及びLA交雑種の活用により農家の家畜衛生状態が向上し,最終的に収益の向上につながる可能性が示唆されました。以上のことから,抗性物質等に頼らない効果的な家畜衛生管理方法として,抗病性育種は有効であると考えられました。
図1 スコア化の例
図2 各スコアの品種間比較
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