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掲載日:2014年9月26日

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トピックス(H26)/病害虫の遺伝子診断技術の開発と防除への応用

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(農園研 バイオテクノロジー開発部)

病害虫の診断方法の一つとして、遺伝子診断技術の開発が進んでいます。遺伝子診断を行うことで、微量の試料から、観察だけでは診断が難しい病害虫の検出や種の同定、薬剤耐性の有無等を迅速で正確に調べることができるようになってきました。

現在、病害虫の防除は、化学農薬を中心とした防除方法から、様々な防除方法を組み合わせ、被害程度を低く維持する総合的病害虫管理技術(IPM)に移行しつつあります。このため、従来の遺伝子診断技術の他に、病原菌の量や薬剤耐性を有する病害虫がどの程度存在しているのか等、量的な違いを数値化できる定量技術を開発し、想定される被害に応じた防除対策を行うために役立てようとしています。

農業・園芸総合研究所バイオテクノロジー開発部では、平成24年度から病害虫の定量的遺伝子診断技術の開発に取り組んでおり(1)土壌病原性微生物の定量化、(2)薬剤耐性菌の有無とその存在比の定量化、(3)微生物農薬の検出と定量化について試験を行っています。このうち,土壌病原性微生物であるトマト萎凋病菌の定量化技術について紹介します。

トマト萎凋病は、Fusarium oxysporum という病原菌が植物体に感染することで発病します。感染した植物体に含まれている病原菌の量は、リアルタイムPCR装置(図1)で測定できます。この装置により、病原菌のある特定の遺伝子を増幅し、その遺伝子コピー数を推定することができます。そこで、植物体に存在する病原菌由来の遺伝子コピー数と萎凋病発症状況との関連性について調べました。試験の材料として、トマト萎凋病菌レース2耐病性品種3系統「ベスパ」、「チェルシーミニ」、「プロテクト3」及び感受性品種2系統「強力米寿2号」、「ポンテローザ」を用いました。病原菌を植物体接種し、接種3週間後の植物体組織を用いて解析を行った結果、耐病性・感受性品種のいずれも、萎凋症状が出なかった場合は、8.1×10コピー以下でしたが、感受性品種が萎凋症状を示した場合では、103コピー以上検出されました(表1)。このことから、103コピー以上の病原菌由来遺伝子が植物体から検出された場合に萎凋病の発病の恐れがあると考えられました。

今後もさらに病原菌の定量値と作物の被害度の関係を詳しく調査することにより、生産者の方が、防除の実施を判断する上で目安となる基準を作りたいと考えています。

リアルタイムPCR装置
図1 リアルタイムPCR装置

目的とするDNAを、人工的に短時間で増幅し、検出する装置。

増幅前のDNAが多いほど、少ない反応回数で検出できることから、検出できた反応回数を測定することにより、DNAの量が分かる。

トマト萎縮病菌レース2の定量

お問い合わせ先

農業・園芸総合研究所企画調整部

名取市高舘川上字東金剛寺1(代表)

電話番号:022-383-8118

ファックス番号:022-383-9907

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