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掲載日:2019年2月13日

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第三百六十七回宮城県議会知事説明要旨

平成31年2月13日

本日ここに第三百六十七回宮城県議会が開会され、平成三十一年度一般会計当初予算案をはじめとする提出議案を御審議いただくに当たり、平成三十一年度の県政運営の考え方と議案の概要を御説明申し上げます。

説明に先立ちまして、天皇陛下におかれましては、御即位三十年をお迎えになられました。二百三十万の県民とともに謹んで御慶祝申し上げます。陛下におかれましては、四月末の御退位に伴う退位礼正殿の儀を控えておられるところであり、御即位以来、常に我が国の発展と国民の幸せを願われ、特に東日本大震災の発生後は、本県にたびたびの行幸を賜り、県民に心温まる労りと励ましのお言葉を賜りました。御厚情に衷心より感謝申し上げますとともに、皇室の御繁栄をお祈り申し上げます。

五月には、皇太子殿下の御即位に伴い剣璽等承継の儀及び即位後朝見の儀が執り行われ、元号も改められることとなっております。「平成」には「国の内外にも天地にも平和が達成される」という願いが込められており、次の時代におきましても、我が国及び世界の平和と繁栄が続きますことを切に願う次第であります。

それでは、御説明いたします。

間もなく東日本大震災の発生から八回目となる三月十一日を迎えようとしております。この間、震災前の生活とはかけ離れた厳しい環境の中で、御家族を失った喪失感や将来への不安を抱えながら日々の生活を送られてきた方々の御心情を察しますと、震災の爪痕の大きさを改めて実感するとともに、被災された方々が心の底から笑顔になれますよう、一日でも早く創造的な復興を成し遂げなければならないという思いがこみ上げてまいります。

今年度も私自ら被災地を訪問し、多くの方々とお会いしてまいりました。そこで目の当たりにしたのは、ハード面の復旧・復興が進んでいる中においても、一人ひとりの生活基盤や生業における復興の状況の差に加え、心の復興などに時間の経過が生み出した様々な課題が生じているという現実であります。震災直後においては、多くの被災された方々がいらっしゃる中で自ら口に出せなかったものの、八年という時間の経過とともに悲しみに苛まれるようになった方、新たなコミュニティの中で孤立感を覚え、健康状態も悪化している方など、震災による心の傷は時間が全て解決するものではなく、今もなお被災された方々の日々の生活に影響が生じていることについて心を配る必要があります。

このような現状を十分に踏まえ、私は、復興計画期間が残り二年余りとなった中、県民の皆さまとともに、創造的な復興という名の坂道を最後まで全力で登り切り、県民一人ひとりが幸福を実感し、未来に向け元気で笑顔があふれる宮城を創り上げることが自らの使命と考えております。そのために、「前へ前へ」との思いを胸に、復興の総仕上げに加え、地域経済の活性化、次世代を担う子どもたちの育成、高齢化社会への対応や地方創生などの課題に全力で取り組んでいく所存であり、議員各位の更なる御理解、御支援をお願い申し上げる次第であります。

平成三十一年度は、宮城県震災復興計画に定める発展期の二年目となり、復興の総仕上げを達成するための極めて重要な年であることから、国の手厚い財政支援もいただきながら、復旧・復興事業の推進に最大限の力を注いでまいりたいと考えております。ハード事業については、今年度中に全ての災害公営住宅が完成し、防災集団移転促進事業も全ての地区で住宅が建築できる状況となる見込みでありますが、公共土木施設の復旧・復興事業については、計画変更や事業間調整、用地取得等により想定以上の期間を要している箇所もあることから、残り二年以内に全ての事業を完了させるべく、国、市町村等の関係機関と連携を密にしながら対応してまいります。

また、被災された方々の日々の暮らしを継続して支援していくため、心のケアや見守り活動、健康支援等の施策に積極的に取り組むとともに、地域コミュニティの活動や地域で支え合う体制づくりの支援を進めてまいります。これらのソフト事業は、被災された方々が健康で心豊かな生活を続けていく上で必要不可欠なものであり、復興・創生期間後の国の財政支援の方向性にも留意しながら、きめ細かく息の長い支援について引き続き検討してまいりたいと考えております。

宮城の将来ビジョンの実現に向けては、全国的に景気回復が進んでいる一方で、本県の特徴である復興需要の収束にも配慮しながら、地域産業の競争力を高め、経済の活性化・地域振興を強力に推し進める施策の展開が欠かせないものであります。高い有効求人倍率に対して雇用のミスマッチが生じている県内の状況に鑑みますと、産業を担う人材の育成・確保、AIやIoT等の先端技術の積極的な活用などが必要不可欠であり、これらの課題に優先的に取り組むことにより、県内中小企業の競争力強化や商店街の活性化、製造業の集積やインバウンド誘致等を推進し、地域経済の持続的な発展につなげてまいりたいと考えております。

本県の基幹産業である農林水産業の振興につきましては、TPP11の発効等による我が国経済への影響にも十分留意し、生産体制の効率化・高度化に加え、六次産業化や輸出を視野に入れた農林水産物のブランド化を展開していく必要があります。来年度からは、農林水産部を農政部と水産林政部に再編し、高度化・細分化する様々な課題に迅速かつ丁寧に対応していくこととしており、引き続き魅力と競争力のある農林水産業の創出・振興に向け万全を期してまいります。

我が国全体が抱える課題である人口減少・少子高齢化は、本県でも被災した沿岸部をはじめ顕著となっておりますが、人口が集中しております仙台市においても、平成二十九年における出生数が死亡数を下回り、戦後の混乱期を除いて初めて人口が自然減に転じております。

人口減少・少子高齢化は、生産年齢人口の減として本県経済の成長にとってマイナス要因となるものであり、高齢者・女性の就業促進による労働力の確保や働き方改革の推進に取り組むとともに、外国人労働者の受入拡大に向けた改正出入国管理法が成立したことなども踏まえ、介護分野をはじめとする外国人材の活用や留学生の県内定着を促進してまいります。人口減少に歯止めをかける抜本的な対策としては、安定した雇用の創出、移住・定住の推進、子育て支援の充実などの地方創生に向けた施策に力を注ぐことが必要であり、地方創生推進交付金の活用等を通じ、富県宮城実現のためのエンジンである地方創生を更に推し進め、豊かで持続可能な地域社会の構築に努めてまいります。

また、持続可能な社会の実現のためには、地球温暖化や生物多様性などの環境問題に対応することも必要であり、SDGsの考え方を踏まえ、県民生活・事業活動の低炭素化や環境関連産業の振興など、環境と経済をともに向上させる取組を積極的に進めていくこととしております。

上水道、工業用水道、下水道の三事業に係る「みやぎ型管理運営方式」につきましては、改正水道法が成立したことから、平成三十三年度中の事業開始を目指し取組を更に加速させてまいります。上工下水の一体化は、効率化や維持管理コスト削減を目指すものであり、創造的な復興を進める上での重要施策であることから、県民の皆さまをはじめ関係市町村等への丁寧な説明を行うことにより、その効果についての周知を図り、民間の力を最大限活用した持続可能な経営基盤の強化に取り組んでまいります。

県有施設の老朽化対策につきましては、速やかに検討組織を立ち上げ、震災復興計画の終了後を見据えた施設の在り方等について有識者の方々の御意見をいただきながら、施設の整備・再編に係る基本構想の策定を行うとともに、公有地の効果的な活用方法の検討を進めてまいりたいと考えております。

東京二○二○オリンピック・パラリンピック競技大会につきましては、競技会場の最寄駅周辺や空港などで活躍する都市ボランティアの募集を四月から行う予定であるほか、来年三月には、聖火の種火が東松島市に空輸され、その後「復興の火」として県内で展示されることとなっております。開幕まで二年を切り、日増しに大会の機運が高まりつつありますが、来年度は、子どもを対象としたオリンピアンによるサッカー教室をはじめ、様々な機運醸成イベントを実施するほか、サッカー競技の会場となる「ひとめぼれスタジアム宮城」の整備を鋭意進めることとしており、オール宮城で知恵を出し合いながら、より多くの県民に関わっていただくことのできる大会になるよう努めてまいります。

同じ年に本県で初めて開催される「全国豊かな海づくり大会」につきましては、式典行事会場が石巻魚市場に、海上歓迎・放流行事会場が石巻漁港に決定しております。今後、実行委員会において、大会テーマの選定や基本計画の策定等を行うこととなりますが、本大会は、震災復興計画の最終年度において、震災で甚大な被害を受けた本県水産業が復興を果たした姿を広く発信し、全国からの御支援に感謝の気持ちを伝える絶好の機会であり、大会の成功に向け、関係機関と調整を図りながら計画的に準備を進めてまいります。

我が国を取り巻く経済情勢につきましては、グローバル化、ボーダレス化の更なる進展により国際的な政治・社会問題による影響が避けられない状況にあります。アメリカでは、中間選挙の結果により上院下院のいわゆる「ねじれ現象」が発生するなど、政治情勢による通商問題を含めた様々な影響が懸念されております。また、ヨーロッパでは、イギリスの欧州連合離脱への動きや、欧州連合の牽引役であったドイツのメルケル首相の現任期限りでの退任表明により、新たな基軸が定まらない状況であり、アジアにおいても、日韓関係の緊張や米中間の貿易摩擦等様々な問題が生じております。このようなまさに混沌とした国際情勢の中、TPP11や日EU・EPA等の経済連携協定の発効により、我が国経済は新たなフェーズへ足を踏み入れることとなり、今後の見通しは、世界景気の減速懸念も含め大いに不透明なものと言わざるを得ません。

一方、先月、国が発表した経済見通しによりますと、相次いだ自然災害により個人消費を中心に我が国経済は一時的に押し下げられたものの、雇用・所得環境の改善が続く中、各種政策の効果により緩やかに景気が回復し、今年度の実質経済成長率は○・九パーセント程度のプラスが見込まれております。来年度については、通商問題が世界経済に与える影響や、海外経済の不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要があるとされておりますが、国の「経済財政運営の基本的態度」の政策効果も相まって、雇用・所得環境の改善が続き、経済の好循環が更に進展する中で、内需中心の景気回復が見込まれているところであります。

先ほど申し上げましたとおり、本県は復興需要の収束という特殊要因を抱えており、不安定な世界情勢の中でも経済成長を実現するためには、できる限りの施策を出動させ、地域経済全体にその効果が行き渡るよう意を用いていく必要があります。引き続き富県宮城の取組を進め、しっかりとした経済基盤を築き、その成果を福祉や教育、環境などの施策の拡充につなげることにより、「生まれてよかった、育ってよかった、住んでよかった」と思っていただける宮城を実現できるよう万全を尽くしてまいります。

なお、宮城の将来ビジョン及び宮城県震災復興計画が平成三十二年度で終期を迎えることから、宮城県地方創生総合戦略の改定と合わせ、来年度から次期総合計画の策定に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。

(当初予算の編成方針)

次に、当初予算の編成に当たっての基本的な考え方を御説明申し上げます。

国の平成三十一年度予算案は、少子高齢化により拡大する社会保障や消費増税に対応した経済対策を重視する方針のもと編成されております。その中には、幼児教育の無償化に加え、待機児童の解消を目指した保育の受け皿拡大等の「人づくり革命」や「防災・減災、国土強靱化のための緊急対策」などの経費が盛り込まれ、一般会計の総額はおよそ百一兆四千億円と初めて百兆円を超え過去最大の規模となりました。また、東日本大震災復興特別会計には、震災復興特別交付税のほか、災害復旧事業費や復興交付金など、復興の推進に必要な財源が計上され、引き続き復興の完遂に向け事業を進めることができるものと評価しております。

地方財政対策では、幼児教育の無償化や地方創生の推進に係る財源が重点的に計上され、地方税収は全体で若干の増加を見込むほか、地方交付税についても七年ぶりに前年度を上回り、地方一般財源総額も前年度を上回る水準が確保されました。また、国・地方で折半していた地方財政計画の最終的な財源不足が解消されたこと等により、赤字地方債である臨時財政対策債の発行が抑えられるなど、一般財源の質にも配慮した所要財源の確保がなされたものと考えております。

平成三十一年度当初予算案は、昨年十月に策定した「平成三十一年度政策財政運営の基本方針」に基づき、引き続き被災された方々へのソフト支援や公共土木施設の復旧事業など震災からの復興に最優先で取り組むとともに、「政策展開の方向性」に沿った地域経済の振興策や復興の進展による新たな行政課題の解決のための施策に予算を重点配分することとして編成したものです。

このうち震災対応分は、復旧・復興の完遂に向け、国の復興予算を最大限活用するとともに、復興基金など県独自の財源も積極的、機動的に活用しながら、被災された方々へのきめ細かい支援や地域の活性化に向けた施策を予算化したところであります。通常分の歳入では、地方譲与税や地方特例交付金の増が見込まれるものの、税収全体の大きな伸びは期待できない状況であります。また、地方交付税は若干の増が見込まれる一方で、臨時財政対策債の発行は大幅な減少を見込んでおり、巨額の財源不足に対応するため、退職手当債などの特例的な県債の活用に加え、財政調整基金の大幅な取崩しに依存せざるを得ない厳しい状況にあります。このため、既存事業についてはシーリングの設定や徹底した見直しなどにより抑制を図った上で、宮城の将来ビジョン実現のため必要不可欠な新規施策等について重点的に予算化しているところであります。

この結果、平成三十一年度当初予算案は、一般会計の総額では今年度を下回ったものの、依然として一兆円を超える規模となっております。

復興・創生期間後の震災復興に対する国の財政支援につきましては、今年度も私自らが直接復興大臣に支援の延長をお願いするなど、可能な限りの要望活動をしてまいりました。その甲斐もあり、先月開催された復興推進委員会において復興庁から示された「『復興・創生期間』における東日本大震災からの復興の基本方針」の見直し案では、これまで本県が被災市町とともに要望してきた主要な項目は、概ね反映されたものと考えております。一方で、その詳細については、未だ明確となっていない状況にあります。特に原子力災害への対応や心のケア対策、コミュニティ再生支援等のソフト事業は、中長期的な実施が不可欠であることから、引き続き他の被災自治体と連携し、国に対して被災地の厳しい実情を伝えるとともに、継続的な支援の要請を行ってまいりたいと考えておりますので、議員各位の御理解と御協力をお願い申し上げる次第であります。

平成三十一年度当初予算案における主な施策について、「政策財政運営の基本方針」に掲げた四つの「政策推進の基本方向」に沿って御説明申し上げます。

(力強くきめ細かな震災復興)

初めに、震災復興について御説明申し上げます。

まず、被災された方々の生活再建と生活環境の確保についてであります。不自由な仮設住宅にお住まいの方の数は大きく減少し現在では九百人程度となったものの、全ての方が健康を維持しながら自力再建できる日を迎えられますよう、引き続き見守り活動等への支援を実施するほか、新しい住まいの確保に向け、情報提供や戸別訪問などの再建支援を進めます。また、転居後において、新たなコミュニティの一員として地域との関わりを持ちながら、心から安心して活力ある日々を送ることができますよう、地域コミュニティの再生活動や交流拠点の設置、NPO等のノウハウ活用を通じたきめ細かな被災者支援を継続的に行います。

放射性物質による汚染廃棄物につきましては、各圏域で焼却や農林地還元により処理が進められておりますが、県といたしましても一時保管状態の早期解消に向け、各圏域での処理の促進が図られるよう、国と連携しながら関係市町村等の取組をしっかりと支援してまいります。

保健・医療・福祉提供体制については、引き続き心のケアセンターの運営を支援することにより、被災された方々への継続したきめ細かなケアに取り組みます。また、石巻圏域子ども・若者総合相談センターの運営を継続するほか、みやぎ子どもの心のケアハウスの設置市町村を拡充することにより、心の問題から生じる不登校等への体制整備を進めます。このほか、各学校にスクールカウンセラーを配置し、児童・生徒が精神的に安定して学校生活が送れるよう引き続き配慮していくとともに、心のケア支援員や心のサポートアドバイザーを配置することにより、いじめ・不登校等の問題行動への対応支援にも取り組むこととしております。

「富県宮城の実現」に向けた経済基盤の再構築についてでありますが、引き続きグループ補助金等により被災事業者の施設・設備の復旧整備に対して助成を行うほか、生産性の向上による経営安定化や雇用支援、失われた販路の回復や新規開拓への支援に注力してまいります。

観光面では、今年度好評をいただいた通年型のキャンペーンを引き続き実施する予定であり、国民的アニメーションと連携することにより、効果的に本県の魅力を発信し、県全域での交流人口の拡大を図ります。今年度オープンした宮城オルレにつきましては、新たな市町での設置を目指すほか、より多くの方に訪れていただけるよう誘客促進や受入環境整備を進めます。また、インバウンド向けウェブサイトの充実強化により、マーケティングの発想によるデジタルプロモーションやアクセスデータの継続的な収集・分析を実施し、本県の認知度向上やインバウンド誘客を積極的に推進してまいります。

民営化から三年目を迎えます仙台空港については、昨年十月にはピア棟の供用が開始され、四月以降には二つの航空会社が台北線を増便し毎日運航する予定であり、更なる利用者の増加に向け、LCCをはじめとする航空会社に対する路線開設支援に取り組みます。今後とも、富県宮城の重要施策である交流人口の拡大を目指し、民営化の利点を活かしながら、積極的にエアポートセールスや利用促進に努め、仙台空港の利用拡大を進めるとともに、空港運用時間の二十四時間化に向けて、地元との合意形成が図られるよう空港周辺地域の方々と丁寧に協議を行ってまいります。

農林水産業の早期復興については、被災した農地や漁港施設等の復旧に引き続き全力で取り組みます。また、震災により失われた県産農林水産物や食品製造業の販路の回復に重点を置き、商品のブラッシュアップや商談会参加等への助成を行うほか、所得増につながる農業の六次産業化に対しては、継続して専門人材チームによる集中支援やフォローアップ支援を進め、魅力ある農林水産業の創出を図ります。また、「全国豊かな海づくり大会」の開催準備を鋭意進め、一年前プレイベントや大会リレー放流等を開催するとともに、水産加工業及び漁業就業者確保対策として、引き続き従業員宿舎整備に対する助成を行います。

依然として続く東京電力福島第一原子力発電所の事故による風評被害対策としては、県産農林水産物の魅力について各種広報媒体等を活用した効果的なアピールを行うことにより、イメージアップと消費拡大を図るほか、特用林産物の放射性物質検査について、安全な原木の供給再開に向けた検査体制の整備を行います。

公共土木施設の早期復旧については引き続き他自治体からの応援職員の方々の力をお借りしながら、平成三十二年度の完了を目標に、道路、河川、海岸、港湾等の工事を迅速に進めてまいります。また、今月に気仙沼市まで延伸される予定の三陸縦貫自動車道をはじめ、昨年十二月に登米市の中田工区が開通したみやぎ県北高速幹線道路や四月に供用が開始される気仙沼市の大島大橋など、復興事業として進められている交通インフラの整備につきましても、一日も早い完成に向け重点的に整備を推進いたします。

安心して学べる教育環境の確保についてでありますが、震災の体験を踏まえ、学び支援コーディネーター等の配置を引き続き行うことにより、学ぶことの意義を再認識させながら学習習慣の形成と地域コミュニティの再生を図ります。このほか、自然の家を積極的に活用し、アジアを中心とする国々から被災地への教育旅行を受け入れ相互交流を図るため、関係機関との連携や環境整備を推進してまいります。

防災機能・治安体制の回復については、震災の記憶・教訓を未来に受け継ぐことの重要性を考慮し、石巻南浜津波復興祈念公園に建築が進められている中核的施設内に、震災・復興関連の展示整備を行うこととしております。また、第二回世界防災フォーラム・防災ダボス会議に参画し、これまでの復興や今後の防災・減災への取組等について情報発信を行います。被災庁舎の復旧では、南三陸警察署の建設工事に着手する予定であり、その他の被災した警察施設についても平成三十二年度内での完成を目指し、速やかに設計・建設に取り組んでまいります。

(地域経済の更なる成長)

次に、地域経済の更なる成長についてであります。

県内への設置が決定いたしました次世代放射光施設については、引き続き土地造成及び基本建屋の設計・建築経費に補助することにより、産業構造の変革が期待される世界レベルの施設の早期運転開始を目指し、地域産業への波及や人材の定着、雇用創出に確実につながるよう努めてまいります。

企業誘致については、トップセールスをはじめとする効果的な誘致活動を行うことにより本県への投資促進を図り、地元企業の技術力向上、取引機会の拡大を進めます。また、自動車メーカーとの連携による沿岸被災地における電動モビリティを活用した実証事業へ助成を行い、新ビジネスの創出や地域課題の解決につなげるほか、特定複合観光施設区域整備法の制定等を踏まえ、本県への統合型リゾート導入の可能性について調査・分析を行います。

地域の中小企業・小規模事業者の振興につきましては、消費増税やインバウンド誘客対策としてキャッシュレス決済を推進・検証する実証事業を行うほか、県内企業の電子機器開発を後押しするため、産業技術総合センターにEMC総合試験棟を整備します。また、次世代に向けた持続的で発展的な商店街の構築を目指し、ビジョン形成や若手リーダーの創出を進めるとともに、創業推進に積極的な市町村や団体において、他地域の参考となり得る創業支援モデルの構築を行います。

人手不足の解消と人材育成につきましては、地方創生推進交付金を活用し、東京一極集中の是正に向けて、マッチングサイトを通じた首都圏から県内企業への就業や伴走型支援による起業の促進に努めてまいります。また、IJUターン就職支援オフィスの体制を増強するほか、働く意欲のある女性や高齢者等の新規就業につなげるため、仙台・黒川地域に就職支援センターをモデル的に設置するなど県内企業の人材確保に取り組みます。さらに、県内企業への働き方改革の浸透は重要な課題であることから、各企業において働き方の見直しを図り、人材確保の面から働きやすい職場環境整備を進めるため、「働き方改革宣言企業支援制度」を創設することにより、取組企業を支援してまいります。

受入拡大が見込まれる外国人材の雇用につきましては、企業向け相談窓口の設置やセミナー開催に取り組むほか、留学生等を対象とした合同企業説明会の開催や県内企業の就職情報誌を作成することなどにより、県内中小企業における外国人材の活用や留学生等の県内就職を積極的に支援いたします。

農林水産業の振興につきましては、本県の基幹産業として引き続き各種施策を進めてまいりますが、農業においては、今年度本格デビューしました「だて正夢」や「金のいぶき」を中心としたみやぎ米の生産支援と需要・販路拡大に向け、「栽培塾」の開催や各種メディア等を活用したPR活動を実施いたします。また、地域農業の担い手を確保する観点から、引き続き新規就農者の育成支援や女性が働きやすい環境整備を行うことに加え、「農山漁村交流拡大プラットフォーム」を設立し、農村と都市間の交流拡大に向けたイベントツアー等を実施します。このほか、競争力ある園芸産地を育成するため、いちごの新品種「にこにこベリー」の栽培技術の現地導入及び本格デビューに向けたプロモーション活動を行うとともに、園芸作物を生産する法人等に対して施設・機械の導入や広域連携による取組を支援します。畜産業の振興につきましては、「仙台牛」のより一層のブランド力強化と全国的な知名度向上を図っていくとともに、質の高い県産牛の生産拡大を目指し、次期全国和牛能力共進会の出品対策を進めるほか、優良雌子牛の増頭への助成による生産基盤の拡充を行います。

水産業の振興につきましては、担い手確保のため、セミナー開催や専門家派遣により水産加工業者と障害者のマッチングに取り組むほか、ホタテ貝養殖における地種生産拡大への支援や地球温暖化による海水温上昇に対応した養殖種の探索を推進するなど、収益性が高く安定した県内養殖生産体制の確立に努めます。

林業の振興については、中高層建築にも利用可能なCLTの活用を促進するほか、ICTを活用した素材需給ネットワークシステムの導入を進め、原木供給体制の効率化を図ります。また、森林経営管理制度の円滑な運用を図るため、「市町村森林管理サポートセンター」を設置し、市町村を支援してまいります。

(安心していきいきと暮らせる宮城の実現)

次に、安心していきいきと暮らせる宮城の実現についてであります。

宮城の将来を担う子どもたちの育成に係る環境整備については、乳幼児医療費助成や認定こども園の施設整備支援等を継続するほか、十月からの幼児教育の無償化実施に伴う市町村への支援や、保育士の業務軽減による保育の質の向上を目指す観点から、保育支援者の雇用を促進する助成制度を立ち上げます。

福祉分野では、保護観察対象少年を臨時職員として雇用し、就労に必要なスキル等の習得を促すことにより、更生を支援する取組を開始します。また、七月を目途に子ども総合センター内に「発達障害者支援センター」を設置することとし、合わせて県内七圏域に心理士等の専門員を配置することにより、発達障害児者への支援体制の一層の強化を図るほか、市町村が行う心身障害者医療費助成に要する経費について、新たに精神障害者を対象に加え、助成を拡充します。高齢者介護では、外国人介護人材確保に向けて、引き続き資格取得支援を行うほか、地域の元気な高齢者を介護助手として育成し、介護施設への就職を進めてまいります。県民の健康・生命を守る観点からは、青・壮年期の歯周病予防対策として、働き盛り世代の歯と口腔の健康づくりの普及啓発や東北大学と連携した健康な地域づくりに係る先進モデル研究事業を行うほか、自死対策として大学生を中心とした若者支援事業に取り組みます。

医療分野では、救命救急センターの運営やドクターヘリの運航について引き続き助成を行うほか、救急搬送の効率化に向けて、四月から仙台医療圏において救急搬送情報共有システムの運用を開始し、効率的で質の高い医療提供体制の拡充に努めます。また、循環器・呼吸器病センターの機能移管に伴い四月から栗原中央病院に設置される結核病棟の運営支援を行うことにより、政策医療としての結核対策を維持・充実してまいります。このほか、がん対策をはじめとする政策医療の持続的提供と健全経営の維持等の観点から、有識者の御意見を伺いながら県立病院の在り方検討を進めることとしております。

教育の面では、喫緊の課題である学力向上対策として、教育事務所に「学力向上マネジメント・アドバイザー」を配置し、モデル地区において効果的な対策を導入することにより、成功事例の積上げと水平展開を図ります。県立中学校及び高等学校におきましては、生徒が授業で使用するタブレットパソコンの整備を順次進めることにより、学習の基礎である情報活用能力を養成し、情報化社会において主体的に学び、考え、行動する人材の育成を目指します。また、旧教育研修センター跡地等につきましては、利活用検討委員会の報告を踏まえ、民間活力による軽度知的障害のある生徒のための高等学園の整備に向け、企画提案の募集・事業者の選定を行うこととしております。さらに、震災による遺児・孤児に対するこども育英基金の奨学金を増額するほか、震災以外の要因による遺児・孤児についても、既存の事業をベースに対象及び支給額を拡充した奨学金制度を創設します。

私立学校に対しては、その重要性に鑑み、運営費や授業料軽減への補助を継続して行うことなどにより、保護者の経済的負担の軽減と学校経営の健全化を進めてまいります。また、宮城大学については、大学改革の一環として、教育・研究環境の更なる充実を図るため、大和キャンパスの新棟建設を支援することとしております。

いじめ・不登校対策につきましては、昨年十二月に議員提案である「いじめ防止対策推進条例」が施行されたことを踏まえ、若年層のコミュニケーションツールとして普及しているSNSを活用した相談体制を整備することなどにより、早期発見・早期対応につなげてまいります。このほか、引き続きスクールソーシャルワーカーや心のケア支援員等の配置・派遣により、児童生徒の抱える様々な問題へのサポートを行います。

スポーツ振興につきましては、本県の児童生徒の基礎的な体力・運動能力向上への更なる取組が必要であることから、地域人材を活用した体力・運動能力及び地域スポーツ力向上に資するモデル事業を実施します。このほか、宮城県スポーツ協会の各種事業を支援することにより、特に将来有望なジュニア選手の発掘、育成強化について積極的に取り組みます。

間もなく創建千三百年を迎える多賀城跡につきましては、現在、基盤整備事業等を進めているところであり、引き続き多賀城市と連携しながら、本県の貴重な歴史遺産を後世に伝えてまいりたいと考えております。

なお、文化振興に関連して、昨年十一月、米川の水かぶりをはじめとする「来訪神 仮面・仮装の神々」がユネスコの無形文化遺産に登録されることとなりました。伝統を守りつないできた地域の方々の長年の御尽力に感謝いたしますとともに、今後も末永く受け継がれ、地域の活性化にもつながっていくことを期待しております。

警察関係では、若柳警察署と築館警察署を統合する「(仮称)栗原警察署」の土地造成を行うほか、交番及び駐在所の機能向上、安全対策の強化については、防犯カメラや執務室内への導線を遮断するカウンターの設置を進めてまいります。また、東京二○二○オリンピック・パラリンピック競技大会への対応として、翻訳機能付きタブレット端末の整備のほか、警察施設やパトカーに英語による表記を進めることとしております。

(美しく安全なまちづくり)

次に、美しく安全なまちづくりについてであります。

近年、全国各地で発生している豪雨災害を踏まえ、引き続き吉田川、大江川の床上浸水対策特別緊急事業を集中的に実施するとともに、国の「防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策」等の予算を活用しながら、七北田川や迫川などの河川改修事業を推進してまいります。

また、総合防災情報システムの改修のほか、地震発生時の迅速な初動体制の確立、震度情報の公表等を行うための震度情報ネットワークシステムの更新を行い、自然災害における被害の拡大防止を図ります。

震災により失われた海岸防災林につきましては、平成三十二年度までに再生工事を完了させる予定であり、植栽した樹木が生長するまで、引き続き県民参加型の防災林管理活動を促進することとし、活動団体への支援などの取組を行います。

県有施設の計画的な維持管理については、優先度を考慮し、県庁舎等整備基金も活用しながら各施設の長寿命化を進めるとともに、震災復興計画期間終了後を見据えた計画的な再編整備等の在り方を調査検討するための懇話会を設置し、基本構想を策定いたします。

また、再生可能エネルギーを取り巻く環境が変化し、県民が自発的に自家消費に取り組む仕組みづくりが必要となっていることから、電力の自家消費により産み出される環境価値を「見える化」した上で売却し、その売却益を環境教育事業等に充当する「J-クレジット導入事業」を開始します。

主に中山間地域において大きな課題となっている鳥獣被害の防止につきましては、ニホンジカの監視強化のための行動把握事業を立ち上げるほか、イノシシによる農業被害が増加していることから、地方振興事務所に配置する鳥獣被害対策専門指導員を増員し、六名体制とすることにより、市町村との協力体制を強化し、被害の低減に努めてまいります。

水道事業につきましては、人口減による料金収入の減少や施設の老朽化による大量更新の発生等の困難な課題を抱えていることから、水道事業者の現状分析や将来予測に加え、関係市町村等の広域連携シミュレーションなどを行います。

以上、施策の主な内容について御説明申し上げましたが、平成三十一年度の当初予算規模は、一般会計で一兆一千百二億七千余万円、総計で一兆五千九百五十六億九千七百余万円となります。財源の主なものとしては、県税二千九百十億円、地方交付税二千七十四億円、国庫支出金二千五百九十一億四千百余万円、繰入金二千百八十一億三千百余万円を計上し、また、臨時財政対策債及び借換債を含め県債一千九百五十二億七千八百余万円を発行することにしております。

次に、予算外議案については、条例議案二十三件、条例外議案三十一件を提案しておりますが、そのうち主なものについて概要を御説明申し上げます。

まず、条例議案でありますが、議第十七号議案は、森林の整備及びその促進に関し、市町村を支援するための基金を設置しようとするもの、議第十八号議案及び議第三十七号議案は、流域下水道事業について来年度から地方公営企業法を全部適用し、企業局へ事業を移管することに伴い所要の改正を行おうとするものであります。また、議第二十四号議案、議第三十五号議案、議第三十六号議案及び議第三十九号議案は、手数料の新設、改定、免除を行おうとするもの、議第二十五号議案は、復興産業集積区域における県税の課税免除の取扱いを改め、適用期間を延長しようとするもの、議第二十六号議案は、児童ポルノ等の提供を行うように求める行為を禁止しようとするもの、議第二十八号議案は、国の指針に基づき医学生修学資金の償還免除に係る業務対象期間や必要従事期間などを改めようとするもの、議第三十一号議案は、先ほど御説明いたしましたとおり、東日本大震災みやぎこども育英基金の使途を拡充しようとするものであります。

次に、条例外議案でありますが、議第四十号議案は、多文化共生社会推進計画の策定について、議第四十一号議案は、包括外部監査契約の締結について、議第四十二号議案は、地方独立行政法人宮城県立病院機構が作成した業務運営に関する目標を達成するための計画を認可することについて、議第四十三号議案ないし議第五十一号議案は、工事請負契約の締結について、議第五十二号議案ないし議第六十九号議案は、工事請負変更契約の締結について、議第七十号議案は、市町村受益負担金について、それぞれ議会の議決を受けようとするものであります。

以上をもちまして、提出議案に係る概要の説明を終わりますが、何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。

お問い合わせ先

広報課企画報道班

宮城県仙台市青葉区本町3丁目8番1号

電話番号:022-211-2281

ファックス番号:022-263-3780

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