2014年発掘調査情報
1 復興調査について
1.基本方針
東日本大震災から3年が経過しました。宮城県教育委員会としては,高台移転や復興道路などの復興事業に伴う発掘調査を円滑・迅速に実施し,早期終了を目指しております。
2.円滑・迅速な発掘調査のための施策
(1)宮城県発掘調査基準の弾力的な運用
復興事業に限り,発掘調査基準を弾力的に運用し,原則として,遺跡が壊される範囲(平面・深さ)のみを調査対象とします。これにより,盛土施工部分や,下層の調査等を省略することが可能になるため,調査期間の短縮が見込まれます。
(2)調査体制の強化
宮城県教育委員会では,平成24年度より他県市から発掘調査専門職員の協力を得て,調査体制の強化を図っております。平成26年度は17名の支援を受けております。
【平成26年度の調査体制】
- *宮城県職員:文化財保護課20,東北歴史博物館1,多賀城跡調査研究所2
- *派遣職員(自治法派遣)
山形県 群馬県 埼玉県 神奈川県 新潟県 長野県 岐阜県 三重県 兵庫県 島根県 奈良県 岡山県 山口県 香川県 佐賀県 宮崎県 新潟市
3.主な復興事業に伴う調査
- (1)復興道路建設事業に伴う調査(三陸沿岸道路・県道等)
- (2)沿岸市町復興事業に伴う調査(高台移転・土地区画整理等)
- (3)JR常磐線復旧事業に伴う調査
- (4)被災した個人住宅,零細・中小企業の再建事業に伴う調査
2 発掘調査成果・進捗状況
宮城県教育委員会は復興事業に伴う発掘調査を中心に実施または市町に協力しています。平成26年度に実施している遺跡の調査成果・進捗状況は次のとおりです。
A.復興事業に伴う発掘調査
1.山王遺跡(多賀城市)
【所在地】多賀城市山王字南宮 JR東北本線陸前山王駅の近くです
【調査理由】三陸沿岸道路仙塩道路の多賀城インターチェンジ建設・4車線化工事
【調査期間】平成26年4月7日~6月30日
【調査主体】宮城県教育委員会
【調査担当】宮城県教育庁文化財保護課
【調査面積】約1,200平方メートル
【調査概要】
- 平成元年~6年度に調査に着手しましたが,震災後,復興事業として事業化されたため発掘調査を再開しました。
- 平成24年3月26日から調査に着手し,平成25年度までに4車線化部の約6,000平方メートル,多賀城インターチェンジ部の約21,000平方メートルの調査が終了しています。
- 平成26年度は,残り約1,200平方メートルを対象に4月7日から調査に着手し,6月30日に終了しました。
- 奈良・平安時代の道路跡,掘立柱建物跡,竪穴住居跡などが発見されました。

今回の調査地と多賀城跡

調査区全景(北東より)
- 平成26年6月21日(土曜日)午前10時30分より現地説明会を開催しました。

2.新中永窪遺跡・熊の作遺跡(山元町)
【所在地】山元町坂元ほか
【調査理由】JR常磐線復旧工事
【調査期間】平成26年4月7日~平成27年1月31日
【調査主体】宮城県教育委員会
【調査担当】宮城県教育庁文化財保護課
【調査面積】新中永窪遺跡;約2,900平方メートル 熊の作遺跡;約1,500平方メートル
【調査概要】
- 計画地内に8遺跡あります。平成25年4月17日から調査に着手し,平成25年度に6遺跡の調査がほぼ終了しました。
- 平成26年度は4月7日から調査に着手し,1月31日に終了しました。
- 新中永窪遺跡では,奈良・平安時代の竪穴住居跡,須恵器窯跡,木炭窯跡,製鉄炉跡などが発見されました。

須恵器を生産した窯跡

製鉄炉跡
- 平成26年6月15日(日曜日)に現地説明会を開催しました。参加者は約130名です。ありがとうございました。
現地説明会の様子
- 熊の作遺跡では,古墳時代後期の竪穴住居跡,奈良・平安時代の掘立柱建物跡,門跡,塀跡などが発見されました。
- 門跡,塀跡の南側の低湿地から,土師器・須恵器とともに木製品(檜扇・木錘・曲げ物など),鉄製品などが出土しました。また,土器に「大領」「子弟」と墨書されたものも発見されました。
3.台の下貝塚ほか(気仙沼市)
【所在地】気仙沼市唐桑町台の下
【調査理由】防災集団移転促進事業
【調査期間】平成26年4月7日~7月24日
【調査主体】気仙沼市教育委員会
【調査協力】宮城県教育委員会
【調査面積】約200平方メートル
【調査概要】
- 計画地内に台の下貝塚・台の下館跡の2遺跡があります。平成25年7月22日から調査に着手し,約6,800平方メートルについて終了しました。
- 平成26年度は計画地東側の約200平方メートルを対象として、4月7日から調査に着手し,7月24日に終了しました。
- 縄文時代の竪穴住居跡(中期),埋葬人骨(後期・晩期),遺物包含層(中期~晩期),貝層(中期)などが発見されました。

調査区全景

人骨の検出状況
4.猿喰東館跡(気仙沼市)
【所在地】気仙沼市最知北最知
【調査理由】個人住宅建築工事
【調査期間】平成26年4月7日~6月2日
【調査主体】気仙沼市教育委員会
【調査協力】宮城県教育委員会
【調査面積】約1,500平方メートル
【調査概要】
- 平成25年11月18日から調査に着手し,平成26年度も引き続き4月7日から調査に着手し,5月29日に終了しました。
- 中世の館跡で,館跡の中心部にあたる平場北・東部とその東側について調査を行い,掘立柱建物跡,土塁,堀跡などが発見されました。

北上空からみた館跡

東からみた館跡の様子
5.内山遺跡(女川町)
【所在地】女川町鷲神浜字内山
【調査理由】被災市街地復興土地区画整理事業
【調査期間】平成26年4月14日~7月18日
【調査主体】女川町教育委員会
【調査協力】宮城県教育委員会
【調査面積】約4,400平方メートル
【調査概要】
- 平成26年4月14日から調査に着手し,7月18日に終了しました。
- 縄文時代の竪穴住居跡,貯蔵穴,遺物包含層などが発見されました。

女川小学校6年生が見学に来てくれました

縄文時代の貯蔵穴の様子
- 平成26年6月21日(土曜日)に現地説明会を開催しました。

6.山下館跡(山元町)
【所在地】山元町浅生原舘前
【調査理由】津波復興拠点整備事業に伴う避難道建設工事
【調査期間】平成26年3月3日~
【調査主体】山元町教育委員会
【調査協力】宮城県教育委員会
【調査面積】約3,500平方メートル
【調査概要】
- 平成26年3月3日から調査に着手し,7月11日に終了しました。
- 平場,土塁,堀跡,掘立柱建物跡などが発見されました。

土塁と堀跡の調査状況

堀跡の調査状況
- 平成26年6月15日(日曜日)に現地説明会を開催しました。参加者は約70名です。
現地説明会の様子
7.合戦原遺跡(山元町)
【所在地】山元町高瀬字合戦原
【調査理由】防災集団移転促進事業・災害公営住宅建設事業
【調査期間】平成26年8月1日~平成27年3月27日
【調査主体】山元町教育委員会
【調査協力】宮城県教育委員会
【調査面積】約8,600平方メートル
【調査概要】
- 平成26年8月1日から調査に着手しました。
- 古墳時代終末から奈良時代にかけての横穴墓群,古代の製鉄炉跡,木炭窯などが発見されました。
- 平成27年3月8日に現地説明会を開催しました。
- 調査は平成27年度も継続して行う予定です。
8.崎山遺跡(女川町)
【所在地】女川町石浜字崎山
【調査理由】被災市街地復興土地区画整理事業
【調査期間】平成26年11月4日~平成27年1月31日
【調査主体】女川町教育委員会
【調査協力】宮城県教育委員会
【調査面積】約700平方メートル
【調査概要】
- 平成26年11月4日に調査に着手し,平成27年1月31日に終了しました。
- 縄文時代(前期・後期)の遺物包含層,奈良時代の竪穴住居跡が発見されました。竪穴住居跡には,石で組んだカマドが作られていました。

- 平成26年12月21日に現地説明会を開催しました。参加人数は104名でした。
9.羽黒下遺跡(石巻市)
【所在地】石巻市給分浜字羽黒下
【調査理由】防災集団移転促進事業
【調査期間】平成26年11月4日~平成27年3月27日
【調査主体】石巻市教育委員会
【調査協力】宮城県教育委員会
【調査面積】約7,900平方メートル
【調査概要】
- 平成26年11月4日から調査に着手しました。
- 縄文時代(前期~晩期)の遺物包含層,土坑などが発見されました。
- 調査は平成27年度も継続して行う予定です。
B.通常事業に伴う発掘調査
1.入の沢塚群(栗原市)
【所在地】栗原市築館堀口
【調査理由】一般国道4号線築館バイパス建設工事
【調査期間】平成26年4月21日~12月18日
【調査主体】宮城県教育委員会
【調査担当】宮城県教育庁文化財保護課
【調査面積】約7,500平方メートル
【調査概要】
- 平成26年4月21日から調査に着手し,12月18日まで行いました。
- 古墳時代前期の竪穴住居跡,大溝跡,塀跡,古代の竪穴住居跡,中世以降の塚が発見されました。

竪穴住居跡の調査状況

大溝跡と塀跡
2.団子山西遺跡(大崎市)
【所在地】大崎市田尻中目
【調査理由】田尻西部地区ほ場整備事業
【調査期間】平成26年5月29日~
【調査主体】宮城県教育委員会
【調査担当】宮城県教育庁文化財保護課
【調査面積】約3,400平方メートル
【調査概要】
- 平成26年5月29日から調査に着手し,11月28日に終了しました。
- 奈良・平安時代の道路跡,竪穴住居跡,井戸跡,溝跡,土坑などが発見されました。