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掲載日:2012年9月10日

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農業早期復興プロジェクト/海水流入農地の実態把握と早期改善/地下水の塩害対策

(農園研 情報経営部)

津波被害農地は約12,500ha(内,畑地は1/5)にのぼり,現在,農地災害復旧事業,除塩事業等によって,農地災害復旧が進められ,過去の被害時の事例等を参考として,土壌の除塩作業が急ピッチで進められています。しかし,施設園芸産地(亘理・石巻等)では,地下水(井戸水)の塩分濃度が高いことなどから,土壌の塩分濃度が低下しても栽培に必要な用水の確保が困難となっています。
現地では,用水の確保のため,使用できる井戸の確保,貯水槽の設置,毎日の水汲み作業など大変な作業が続き,支援物資として導入された浄水機も砂や有機物が詰まる等のトラブルも発生しています。

貯水槽の写真
貯水槽の設置

水汲みの写真
毎日の水汲み作業

浄水機の写真
支援物資の浄水機

そこで,栽培用水確保のため,逆浸透膜※浄水装置等の導入による地下水除塩効果の確認及び効果的な利用法について検討しています。

※逆浸透膜とは・・・浸透膜に仕切られた水溶液は濃度の低い方から高い方に水分子が自然に浸透しますが,濃度の高い方に圧力をかけることで,水分子だけを浸透させる(逆浸透)ことができます。それに用いられる膜が逆浸透膜です。孔がの大きさが概ね2nm以下の膜で,水分子だけを透過し,無機塩類や細菌などの不純物を透過させません。

逆浸透膜の図1

濃度の高い食塩水側に圧をかけると,水分子が濃度の低い真水側に移動します。

逆浸透膜の図2
【試験・調査概要】
イチゴ現地農家において,地下水の塩分濃度が高く使用できない場合の逆浸透膜浄水器の導入による用水確保について検討しています。 ミズピュアの写真

  • 1)対象農家:
    JAみやぎ亘理管内イチゴ農家 1戸(現在JAみやぎ亘理で選定中)
  • 2)使用装置:
    LC600HP/SE,商品名「ミズピュア」アクア・カルテック株式会社
    AC100V,幅440mm×奥行295mm×高さ885mm
    ろ材:逆浸透膜(RO膜)・精密濾過膜(MF膜)・カーボンフィルター
    浄化能力:最大2,016L/日。
  • 3)調査内容:
    1. 現地における地下水(原水)の塩分除去効果の確認
      塩分濃度(EC、pH値),処理水量(L/h),排液量(L/h),時間的な除塩効果の推移,1日の限界稼働時間 等
    2. 効果的な利用法(浄化装置のみでかん水容量が不足する場合)
      1. 原水または排液併用型
        浄化装置での水量不足を補うため,一定濃度(EC0.7mS/cm)以下になるようにコントロールしながら,かん水時に原水または排液を混和して供給する。
      2. 複数台の利用(シミユレーションのみ)
      3. 調査内容
        処理後の水質(EC,pH,塩分濃度等),導入コスト,利便性,経費,生育・収量 等

【試験・調査状況(結果)】

  1. 亘理普及センターとJAみやぎ亘理がイチゴの作付前に地下水を調査(8月1日~8月31日)した結果では,ECが0.3~6.0mS/cmの範囲に分布しており,かん水の基準としているEC0.7mS/cm以下の井戸は全体の15%以下と極めて低い状態であることを確認しています。また,降雨後にECが上昇する等の情報を生産者に報告し,地下水の利用についてECを測定後にかん水するように指導を行っています。
  2. 逆浸透膜を導入した地下水除塩システムにより,EC(0.7以下)は原水の1/10以下,pHは原水よりやや低下,Clイオン濃度(210ppm以下)は原水の1/10以下,Naイオン濃度は原水の1/5~1/10以下に下げることができ,また,浄水能力は1t/日程度となっています。
  3. ただし,装置の設置場所の温度変化は機器の故障の原因となる可能性があり,また水温の低下は浄化能力の低下につながるため,装置の設置環境整備について検討する必要があり,さらには上水道利用等とのコスト比較,排水対策,装置のメンテナンス,かん水必要量の確保等についてひき続き検討する必要があります。

(平成24年3月29日更新)

亘理山元地区水質調査(東北農政局調査)
亘理山元地区水質調査グラフ
震災後,EC(塩分濃度)が上昇
逆浸透膜浄水機を導入した地下水除塩システム(簡易図)
逆浸透膜浄水機を導入した地下水除塩システム(簡易図) 逆浸透膜浄水機を導入した地下水除塩システムの写真
設定:1時間45分稼働,15分休憩(内15秒フラッシング)
○EC,pH,Clイオン,Naイオンの推移

ECのグラフ pHのグラフ Clイオンのグラフ Naイオンのグラフ

図中の赤線の囲い排水を原水にもどす体系(12月17日~27)により急激に原水のEC等が上昇,12月28日より排水路に変更し安定
○浄水機の能力
浄水機の能力グラフ


地下水温・気温グラフ温度の低下とともに処理能力が低下

お問い合わせ先

農業・園芸総合研究所情報経営部

名取市高舘川上字東金剛寺1(代表)

電話番号:022-383-8119

ファックス番号:022-383-9907

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