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当館のコレクションである、ヴァシリー・カンディンスキー(1866~1944年)作品《水門》(1902年)、《「E.R.キャンベルのための壁画No.4」の習作(カーニバル・冬)》(1914年)、《活気ある安定》(1937年)の高精細レプリカを使用した授業です。この授業では、生徒は作者を知らない状態で、鑑賞の活動を行います。個人で作品の細部を観察した後、グループで作品を見比べ、同じ画家が描いた作品の組み合わせを推理します。
高精細レプリカを通じて、当館のコレクションに親しんでもらいながら、鑑賞の活動を行います。レプリカを前に他者と意見を交わし、自分にはない感じ方や考え方に触れることで、作品をより深く味わうことを目的としています。
はじめに、当館のコレクションや特色について、クイズを交えながら紹介し、本日の活動の中で大切にしてほしいことをお話しました。

次に、作品の部分写真を載せた「クローズアップシート」を手に、個人で作品を観察して、シートの写真に該当する作品がどれかを考えてもらいました。生徒たちは、レプリカを近くで見て、その大きさや、色々な筆遣いが見えることに驚きながら、細部まで見ていました。答え合わせでは、3名の生徒にレプリカの前に来てもらい、作品の中で該当する箇所を指し示してもらいました。
 
続いて、6人程度の班に分かれて、3点の作品を見比べ、同じ画家が描いた作品の組み合わせを推理する活動を行いました。天地逆さに見てみて印象が変わるか試す、絵具の塗り方を見る、サインを見比べるなど、積極的に丁寧に見る姿が見られました。組み合わせを考えるツールとして、作品を小さくプリントしたアートカードを使い、班で話し合いました。
 
活動のまとめとして、各班が推理した組み合わせと、その理由とする共通点や相違点を、班の代表者が全体に話しました。「配色やグラデーションが似ている」、「絵具の重なり方が似ている」など色彩に注目する声や、「天地逆さに見ても、変わらず絵に見える」、「(目に見え)ないものを描いた」など、描かれた対象に注目した声がありました。サインを見比べて分類していた班もありました。
 
最後に、3作品の作者が全て同じことを明かし、カンディンスキーの紹介をしました。各班の着眼点と絡め、色彩や描いた対象についてお話しました。授業後に生徒からは、「1つ1つの作品が独特な雰囲気で、全部違う人が描いたと思ったら、全部同じ人が描いていて面白かった」、「同じ人が3つの作品を作っていても、その絵から感じることはそれぞれ違い、面白かった」などの感想が寄せられました。作品の見比べをきっかけに、一人の画家の表現の幅広さを実感し、他の人の感じ方にも触れ、作品をじっくり見る時間になりました。
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