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授業前半では、パウル・クレー(1879-1940年)と、画家が手がけた3作品、《緑の中庭》(1927年)、《橋の傍らの三軒の家》(1922年)、《アフロディテの解剖学》(1915年)について、高精細レプリカやスライドを用いて紹介します。作品の色の塗り方や、幾何学的な形の組み合わせ方、制作方法などに注目して3作品の細部を観察し、様々な手法を用いて生まれた独特な表現を味わいます。後半は、グループに分かれ、普段絵を描く時とは違う方法を使って様々な色や形を重ねる実験をします。最後に、各グループが制作した作品を全員で鑑賞します。
パウル・クレーの作品鑑賞を通して美術館のコレクションに親しみ、クレーの芸術観や作品の多様な表現について理解を深めます。また、普段は使わない方法で描画活動に取り組むことで、様々な色や形を重ねる中で生まれる効果を味わい、自分と他者の表現を鑑賞することにより、制作方法に同じ制約がある中でも様々な表現が生まれることを体感します。
はじめに、当館の創設年やコレクション数について紹介しました。あわせて、作品の収集、保存や展示など、美術館の基本的な役割についてもお話ししました。

続いて、ドイツ表現主義の画家パウル・クレーについて取り上げ、その芸術観や作品を紹介し、レプリカやスライドを用いて当館所蔵の3作品を鑑賞しました。《緑の中庭》の絵の具の搔落としや、《橋の傍らの三軒の家》の柔らかな色彩と幾何学図形の組み合わせ、《アフロディテの解剖学》の大胆な切断や結合など、それぞれの作品に見られる実験的な表現に児童たちは興味津々の様子でした。児童たちに感じたことを自由に言葉にしてもらうと、「塗った所を削ったの?」「にじんだ色が綺麗!」「上手く描けたのに切っちゃうの?」等、驚きの声が聞かれました。

その後は、様々な表現に挑戦したクレーの制作態度にならい、グループに分かれて描画の実験に取り組みました。
とはいえ、「今までやったことのない方法で絵を描こう!」と言われても、それを考えることは難しいものです。そこで、こちらで用意したあるルールに則って描画活動に取り組んでもらいました。
児童たちは、サイコロを振り、出た目に応じて使える画材と描く形が決まるというちょっと変わった描き方で、順番に形と色を重ねていきます。
 
普段、何か具体的なものや風景を思い浮かべ「これを描こう」と思って描画することが多い児童たちにとって、自分の意志とは関係なく描く対象や使う画材が決まっていくというルールは、とても新鮮だったようです。いつもなら混ぜようと思わない色や線が交わり、別々の児童が描いた図形が組み合わさって、不思議な形が生まれていきます。活動が進むにつれ、「この線かっこいいね!」「新しい色が生まれそう」「この形、宇宙人に見えてきた!」と会話も弾み、色とりどりの画面の様子も、自分とは異なる表現への向き合い方も、豊かに変化していきました。
 
最後に、出来上がった作品を展示して全員で鑑賞しました。児童たちは「壁に貼るとまた違って見えるね」と感心したり、他のグループの作品を見て「魚に見えてきた!右が口で、左が尾ひれだよ」「あの絵は人が手を広げて、片足で立ってるみたいに見える」と言って自分たちも同じポーズをとってみたりと、感想が尽きませんでした。
 
 
同じルールで制作しても、出来上がった作品は実にさまざま。生涯をかけて新たな表現を探求したクレーに思いを馳せつつ、児童たちの自由で多彩な表現を味わう時間となりました。
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