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農業生産の動向

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年3月29日更新

農家数の動き

管内の総農家数は3,960戸(2015農林業センサス)で2010農林業センサスに比較して約31%減少しており,販売農家数では約35%の減少となっています。販売農家での専兼別の構成は,専業農家が約23%,第一種兼業農家が約14%,主副業別の構成は,主業農家が約24%,準主業農家が約23%となっています。平成22年との比較では専業農家が約28%減少し,主業農家も約31%減少しており,東日本大震災(以下,震災と呼称)により多くの農家が離農したと推察されます。

経営規模別農家数を5年前と比較すると,3.0ha未満と5.0ha未満の農家数はそれぞれ約37%,30%減少しましたが,5.0~10.0haの農家数は約12%の減少に留まっています。一方,10.0ha以上の農家数は約83%増加しており,震災以降,沿岸地域に於いては,経営を再開した担い手組織等への農地集積が進んでいることが推察されます。

震災後は50haを超える法人も平成28年10月現在で10法人が設立されるなど経営規模が拡大しており,今後もこの零細層の減少と経営規模の拡大傾向が進むものと予測されます。

農業産出額の動き

管内の農協受託販売額は,震災前の平成22年には85.8億円であり,内訳は園芸の46.5億円(54.2%),米穀の36.7億円(42.8%),畜産1.6億円(1.9%)でした。

震災が発生した平成23年の農協受託販売額は43.1億円(平成23年比50.3%)まで減少しましたが,その後,農地の復旧や生産施設の整備が進み,営農再開が図られたことから平成25年には60.3億円(平成23年比70.3%)に,平成26年には74.7億円(平成23年比87%)まで回復しました。

管内の農業産出額は,震災直後の平成23年度には69.5億円でしたが,生産の再開が進み,平成26年には93.6億円まで回復しています。

作目別の生産動向

園芸が盛んな地域であり,東北一の産地であるいちごや,指定産地となっているきゅうり,トマトなどの果菜類をはじめ,花き類,果樹など多彩な作物が生産されていますが,震災の前後で,状況が大きく変化しています。

震災前は,太平洋沿岸の温暖な気候を利用し,東側に位置する沿岸部では,施設による葉物野菜やメロン,いちごなどの果菜類,カーネーションなどの花き類が主に土耕栽培で行われていました。震災後,津波の影響による土壌の塩害,地下水の塩水化により,生産困難なほ場が多数見られる状況となりましたが,農地の除塩等の対策が進められ,花き類等をはじめ,生産は震災前に戻りつつあります。一大産地であったいちごは,用水確保等の問題もあり,多くが土壌を必要としない高設養液栽培に切り替えられ,大規模な団地として平成26年産から本格的な生産が再開されています。さらに,被災エリアを中心に大規模な土地利用型農業生産法人等が多数設立され,水稲栽培では作業の効率化やコスト低減を目指した直播栽培などの取組が増加するとともに,複合部門としての野菜類の栽培も増加しています。一方,西側に位置する傾斜地は震災の影響も少なく,従来からの産地であるりんごや新たな特産としてのいちじくなどの果樹産地が形成されています。

エコファーマーの認定や特別栽培農産物の認証に即した生産による持続性の高い農業の取組みや,農業生産工程管理(GAP:Good Agricultural Practice)や食品トレーサビリティーといったリスク管理の取組みが進められています。復興を進める過程で,畜産農家が少ないという管内の状況もあり,耕畜連携などによる土づくりが課題となっています。

東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う農畜産物の風評被害対策が現在も必要であり,主要農作物や園芸品目等を中心としたモニタリング調査を実施し,結果について情報提供を続けています。

土地利用型作物

水稲の作付面積は平成27年度で約4,680ha(震災前の約95%)まで回復しています。沿岸部では被災により営農を取りやめた農家が多く,震災後は新たに誕生した集落型農業法人(名取市・岩沼市)や地域担い手組織,中核的大規模農家(亘理町・山元町)など大規模土地利用型経営体が主体となって水稲生産を行う体制となっています。
各経営体の水稲作付面積は拡大しており,育苗に係る施設や労力の不足が生じていることなどから,水稲直播栽培の導入が進んできています。
亘理町,山元町では新規需要米の取組みとして,ほ場整備終了後1作目の作付けに耐肥性多収品種「げんきまる」を作付けし,飼料用米として出荷が始まっています。

麦類の栽培は名取市のみで,平成27年産は大麦を中心に約60ha程度となっており,震災前とほぼ同面積に回復しています。10a当たりの収量は県内標準レベルですが,空芯麦等の発生による品質の変動が大きいことから,適期播種の徹底や適切な肥培管理等,1等麦の安定生産への取組みが重要となっています。

大豆は平成27年度で約580ha栽培されており,震災前とほぼ同面積に回復しています。震災後は従来の転作組合等に加え,沿岸部で新たに誕生した大規模土地利用型経営体も参画して生産が行われています。
10a当たりの収量は平均180kgとなっており,県内標準とほぼ同等となっています。ほぼすべての品種が「ミヤギシロメ」のため,収穫調製等の作業性の問題から,作期分散を図るための中生品種の普及拡大を検討しています。
ほ場整備後の本暗渠施工は始まっていますが,まだ未施工のほ場が多く,湿害が発生していることから,排水対策が重要となっています。

そばは平成27年度で約70ha栽培されており,震災前と同等又はやや上回る面積に回復しています。
作型は「秋そば」で,梅雨明け後8月に播種する体系のため,湿害を回避し安定した収量を得るための,排水対策が課題となっています。

野菜

震災前は,経営の基幹品目としていちご,きゅうり,トマト,せりなどが生産されていましたが,多くの品目が震災により被害を受けました。このうち,いちごは亘理,山元両町の団地(40.6ha)における高設養液栽培の取組みや法人組織が複数設立されたことなどにより,平成28年3月現在で作付面積は震災前に対して約67%の65ha程度まで回復し,このうち農協取扱いは平成27年6月現在で約55ha,27億円の販売額となっています。

きゅうりは名取市,岩沼市の被災した沿岸部において施設の復旧が進み,さらに震災後設立された土地利用型生産法人も複合部門として導入しています。

トマトは一部で施設の復旧が行われていますが,土壌や地下水の条件が未だ整わず,収量低下や葉菜類への品目転換などで,生産は震災前の半分程度にとどまっています。一方,震災後設立された法人で,長期多段取りトマト栽培が開始されます。

名取市のせりは震災の影響は少なく,3億円以上の販売額で基幹品目として生産が継続されています。

沿岸部で作付けの多かったこまつな,チンゲンサイ,ほうれんそう等を中心とする葉菜類は,施設の復旧とともに,経営の補完的な品目から専作とする経営体が増えており,さらに果菜類からの品目転換や土地利用型経営体の複合経営部門の品目として導入が進み,徐々に作付けが拡大しています。
そのほか,名取市のみょうがたけ,えだまめ,たまねぎ,岩沼市のはくさい,メロン,亘理町のしゅんぎく,山元町のピーマン,パプリカ,そのほか地域全般にわたるゆきな,そらまめ等,従来より多様な品目が盛んに生産されていましたが,震災後は,被災地域における土地利用型経営体の複合部門としてのキャベツ等の加工・業務用野菜の生産が行われるとともに,野菜生産を中心に取り組む法人等によるねぎ,たまねぎ,さつまいも等の大規模な露地野菜の作付けが始まっています。

果樹

基幹果樹として,管内西部を中心にりんごが栽培されています。震災による直接的な被害は少なかったものの,2市2町の約100名の生産者で約100ha栽培されていたものが,高齢化及び後継者不足等により,ここ数年は漸減しています。生産面では,各地域毎及び市町毎に生産組織があり,病害虫共同防除組織も地域ごとに組織されています。品種の構成は「ふじ」が主体で,約80%を占めています。

みやぎ亘理農協の支援により山元町を中心に栽培面積が拡大している品目として,いちじくがあります。現在の生産規模は,約20名のみやぎ亘理農協部会員を中心に約10haとなっており,今後もさらなる拡大が見込まれています。

そのほかの果樹では,もも,おうとう,ぶどう,ブルーベリー,アセロラ等が数戸の農家で栽培されています。震災によりアセロラは壊滅的な被害を受けましたが,1戸が再生産に取り組んでいます。被災地区においては,生食用ぶどうを中心として新規導入のための栽培試験が行われており,実際に導入も始まっています。

花き

名取市でカーネーション,ばら等,亘理町できく等が栽培されています。花き全体の販売額は,震災前の平成22年には5.3億円でしたが,震災の津波によりカーネーション産地,きく産地とも被災し,震災直後の平成23年には3.5億円まで減少しました。その後,生産の再開が進み,平成26年には4.8億円まで回復しています。

震災以降,カーネーション産地では,燃油コスト削減のため,ストック等の低温開花性品目を導入する動きがみられます。また,環境に配慮した取組みを進めるため,名取市花き生産組合の15名がカーネーションでエコファーマーの認定を受けており,近年,花き日持ち性向上対策への関心が高まりつつあります。

みやぎ亘理農協花き部会では,きく班で共選・共販体制が定着していますが,経営の安定化を図るため,省エネによるコスト低減と上位等級品の割合を増やすことが課題となっています。洋花班では,トルコギキョウの生産を主体としながら,連作障害や燃油・資材高騰の影響を緩和するため,きんぎょそうやストック,ラナンキュラス等を輪作体系に取り入れて栽培を行っています。直売用花きも増加しており,直売所の意向を受けた少量多品目生産に取り組む生産者が増加しています。

畜産

乳牛は,戸数及び飼養頭数とも年々減少傾向にあり,亘理町のみ酪農組合(8戸)があります。管内で5戸が乳用牛群検定に加入し泌乳量や繁殖成績の向上に取り組んでいます。飼養管理に関して,受精卵移植による黒毛和種子牛の生産と,それに伴う乳用育成牛の導入が特徴です。自給飼料に関しては,全般的に飼料自給率が低く飼料作物面積も減少傾向にあり,購入飼料への依存が高い状況にあります。一方,平成21年度から山元町で稲発酵粗飼料の生産に取組んでおり,平成27年度は亘理町でも取組みが始まるなど,粗飼料の自給力向上に向けた動きがあります。

肉用牛は,繁殖・肥育とも水稲との複合経営がほとんどであり,高齢者の1~2頭飼育が多く,大規模な飼養農家は少ない状況にあります。

6次産業化

農産加工は,平成28年3月現在個人24名,26グループの50経営体が活動しています。組織的な活動として,名取市と亘理町に農産加工に関する協議会があり,名取市では味噌,大豆煮,たけのこの水煮など,亘理町ではジャムや漬物などが加工販売されています。一方,加工の共同利用施設における老朽化や,個人での設備導入における資金的負担や営業許可などの問題があり,新たな商品開発が困難な状況です。

震災からの復興過程で大規模農業生産法人が数多く設立され,収益性向上のため6次産業化の取組が進んでいます。特に,亘理・山元両町の法人では,生産物であるいちごを原料としたワインや菓子などの商品化が活発に行われるとともにワイナリー建設や輸出が始まり,経営の多角化がさらに進むと考えられます。

管内における「六次産業化・地産地消法」に基づく総合化事業計画の認定状況は,平成27年12月現在で4件となっています。