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掲載日:2012年9月10日

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平成20年度景観フォーラムを開催しました

みやぎ景観フォーラム(平成20年度)概要

開催の写真です。日時:平成20年11月4日(火曜日)13時~15時40分
場所:松島中央公民館(松島町磯崎字浜1-2)
入場者数:約160名
主催:宮城県・松島町・宮城県観光連盟

1 基調講演~魅力ある景観と観光振興~

  • 古浦地区の写真です。講師
    • 清水愼一(しみず しんいち)氏
      (株式会社ジェイティビィー常務取締役)

松島町手樽(春の景観)
「みやぎ・身近な景観百選」選定作品

今,海外旅行は伸び悩んでいるが,そんな中でも旅行者に根強い人気があるのはヨーロッパである。夫婦で旅行した場合,約50万円の旅行費がかかるのだが,それでもヨーロッパに行かれる方が多い。また,ヨーロッパに行かれる方は大半がリピーターである。行かれた方のほとんどから,まち並みに感心したという言葉が返ってくる。

例えば,イタリアのボローニャのまち並みは,40年くらい前から新しい建物を建設せず既存建築物をリニューアルして,まちの中心をシンボルとし,まち並みを形成していった。古い建物を非常に大事にした結果がすばらしいまち並みとなった。また,ドイツのドレスデンという町は,2004年に世界遺産に登録しており,エルベ川のまち並みは第二次世界大戦で破壊されたまちであったが,復旧する時に新しい物を造らないで,もう一度復元した。

やはり魅力的なまちには,「心地良い」「楽しい」「歩いてまわれる」「五感を味わえる」「生活を感じる」「よそ者意識を感じることがない」などが共通している。歴史とまち並みが人を集める。旅の気分は体より頭であることが最近の考え方であり,ヨーロッパの都市の魅力は,地域の歴史・文化を大事にした都市であり,歩いて楽しめ,かつ等身大で「よそ者」でも生き生きした生活を実感できることが人気の理由だと感じる。

今,「まち歩き」も非常に人気がある。最近いろいろな所で「まち歩き」を実施しているが,成功した例の一つが長崎である。市長が,「長崎は歩いてこそ味わい深い都市」と言ったことを契機に,いろいろなイベントを開催するよりも歩いてもらい,都市を感じてもらうキャンペーンを実施した。これにより,長崎には半年間で700万人訪れた。今あるものを大事にしながら歩いて感じてもらうことの典型であると思う。

篤姫ゆかりの薩摩今和泉駅は,TVの影響により観光に訪れる人がたいへん多くなった。地元では,せっかく遠方から訪れた人達に何かお持てなししたいと,篤姫観光ガイドを39人で立ち上げ実施した。訪れた人もガイドした人も楽しかったとの成果があった。

最近の観光形態は変化しており,観光施設を廻って旅館・ホテルでゆったりする旧来型観光(周遊観光)は影を潜め,地域の歴史,伝統・文化,食生活をじっくりと味わう滞在型観光(たび)が定着しつつある。
「まち歩き」によって,今まで見えなかったものが見え,魅力的なまちへと変化させていく。
ヨーロッパや日本で元気があるところを見ていくと,雰囲気や景観がこれからの観光に大きく影響していることがよくわかる。

今の観光客に共通することは,テーマパークや雄大な自然があるとかではなく,心地良い雰囲気を求めている。このことから観光地に必要なものは,歴史,文化,食を大事にし,生き生きとした生活が実感でき,歩いて心地良く楽しめるまちであることだと思うし,住民にとっても必要なことだと思う。

景観というと,必ず観光客と住民の間で景観論争がでてくる。私はこういったものには,共通のベクトルがあり得ると思っている。観光客は,観光する際に景観を重要視している。地域住民も観光で大切なものは,「歴史,生活,文化資源の保全活用」と「自然資源や風景の保全活用」であると,観光客と同じように考えている。それなのに,なぜ景観論争が起きてしまうのか。これからの観光は,地域に溶け込むことである。逆に言うと,溶け込むことが出来るような空間・雰囲気を作れるか。あるいは住民と一緒になって味わえるかどうかが問われている。この場合,景観とは空間・雰囲気そのものだと理解している。どうしても景観というと,目に入るものだけで議論しがちになる。だから必ず揉めてしまう。問題は観光客も住民も心地良く感じるかがポイントだと思う。観光と景観が両立するかで議論になるが,私はその議論は違うと思う。

心地良いものは何か。それはやはり地域の歴史・文化を大事にし,歩いて楽しめ,生き生きとした生活が実感できるなどの言葉に集約していると思う。

景観を進めていくと必ず規制の問題がでてくると思う。しかし,景観規制の問題は単なるデザインや色彩,高さの規制によるものではない。では,どんな問題がでてくるのか。それは,規制枠内ではなにをやっても構わないとか,規制で生活が脅かされるとかの議論や喧嘩などがおきてしまうことである。やはり規制とは,住民や来訪者が長期にわたって作り上げていくことだと思う。

松島でも,今後,世界遺産の問題や景観の問題が焦点になってくると思う。そろそろ松島でも皆さんで議論する時期が来たのではないか。そうしないと観光客が松島から減ってしまう恐れがある。また,住民にとっても誇れるまちになり得るかどうか,議論する時期だと思う。今日ここにお集まり頂いた方々は,松島の景観に関心のある方々だと思うので,ぜひ議論していただきたい。このような話は,行政が決めることではない。皆さんで議論して決めてほしい。行政が一番問題な時もあり得る。だからこそ皆さんで議論して決めてもらいたい。

仙台に泊まった人が行きたい観光地は,松島・塩釜である。そのような意味から松島・塩釜は重要な観光地であることがわかる。しかし,歩いて楽しめるまち並みなのか,魅力のあるまち並みなのかが問われている。そこからもう一度来たいまちになるのかどうかに繋がってくる。

景観について,今いろいろな問題がある。歴史的なまち並みの破壊,路地の消滅,地場商店街のシャッター通り化,高層マンションの建設,耕作放棄地の拡大そして車優先の道路など,そういったことに対して具体的な議論をしてほしい。首長にもそういった機会を設けてほしいと思う。私は,「心地良い空間,雰囲気」はより良い景観に繋がっていくと思う。この景観について松島の皆様にはぜひ議論してほしい。例えば,ドイツのフランクフルトでは,美観を目的とした遊歩道を整備したのだが,整備後,その遊歩道に整備前の写真を設置した。なぜ設置したのか。整備前と整備後,どちらに心地良い空間を感じるかを利用者に問いかけるため設置した。私はこのような手法は良いと思う。同じように松島でも,20年前や50年前の写真があって並べてみたら,皆さんの議論がしやすいのではないか。今後の松島の景観形成と観光振興に向けて期待している。

2 パネルディスカッション~魅力ある美しいみやぎの景観づくりに向けて~

  • パネルディスカッションの様子です。コーディネーター
    • 森山雅幸(もりやま まさゆき)氏
      (宮城大学食産業学部教授)
  • パネリスト
    • 清水愼一(しみず しんいち)氏
      (株式会社ジェイティビィー常務取締役)
    • 東 潔(あずま きよし)氏
      (国土交通省東北地方整備局建政部長)
    • 大橋健男(おおはし たけお)氏
      (松島町長)
    • 李 景莉(り けいり)氏
      (松島国際観光株式会社ホテル松島大観荘)

(森山)
景観法が施行されてから,景観に関する計画やシンポジウムなどいろいろな取組みがみられるようになった。先ほどの基調講演でも話があったように,かなり広い範囲で景観が取り扱われており,いろいろな要素が含まれているため,わかりにくいところもあるかと思う。松島町のこれからの景観づくりについては,日本三景の一つとして全国的に有名なこの地の景観をどのようにしていくのかが焦点になってくると思う。景観は,かなり広い分野の方々で協力し意見を交わしながらつくっていくものであり,総合的な行政が求められている。一緒に行動していくことは難しいことだが,松島の風土と地域性に根ざした景観を作っていくことが大事だと考えている。今後,策定することであろう景観計画には,皆さんの経験を景観づくりや観光に活かし,行政の方々と一緒に景観づくりをしていただきたい。
初めに,松島の景観についてどのように評価しているのか伺いたい。

(大橋)
松島には260余りの島々があり,古来より親しまれ江戸時代から松尾芭蕉に「扶桑(ふそう)第一の好風(こうふう)なり」と言わしめた景観がある。また,瑞巌寺のような歴史的文化的遺産もあり,これらが松島の景観を構成していると思っている。しかし,海岸周辺の景観を見たとき,観光地の真ん中を通っている国道45号線はいつも渋滞し,貨物車や重機が頻繁に走行している。それらの影響から良い景観とは言い難い。また,景観を考える際には,建物の高さ,広告物の有り様や素材などを全体として考えて,統一感のある整備を行う必要があると思う。しかし統一感が強すぎても良くないと思うので,バランス良く進めていく必要がある。

五大堂の写真です。
(冬の五大堂)

(李)
私は,4年前に台湾から来た。外国人にとっても仙台,松島の知名度はとても高く,その魅力の一つとして,彩り鮮やかな自然の風景があることだと思う。外国人でもあっても和の心に触れることができる。例えば,観覧亭でお茶を飲みながらのんびりと海を眺める,そんな貴重なひとときを外国人観光客は求めているのだと思う。生まれ育った国・台湾を離れ,松島で仕事をすることを決めたのも,この松島の自然豊かな景観と美しい海に惹かれたからで,松島に来て良かったと改めて感じている。

観覧亭の写真です。
(秋の観覧亭)

(東)
私個人の印象としては,東北はどこに行っても美しい所だと思う。仙台をはじめ松島も観光地として人気が高い。20年前に初めて松島を訪れ,今年の夏にもう一度松島を訪ねたが美しい島々は健在だった。ただ,一つだけ変わった思うことがあり,イメージで申し訳ないが町に元気がなくなっているという印象を受けた。松島町の方々は非常に幸せだなと思う。「松島」と言って知らない人はいないのでないか。日本三景として,小学校の授業でも暗記をさせられるくらいであり,日本人なら必ず知っている地名だと思う。
同じ日本三景の宮島(広島県廿日市市)では,鳥居の間から見える対岸の景観が良くないと問題となったことから,現在,廿日市市で景観計画を策定すべく,景観セミナーやワークショップ等を開催し,市全体で議論を行っており,市民の共通認識の形成を図っている。また,天橋立(京都府宮津市)でも京都府が景観計画を策定しており,景観保全区域等を設定している。同じ日本三景の一つである松島においても景観計画を策定し,良好な景観の形成を目指していただければと思っている。

(森山)
次に良好な景観を形成する目的や効果があれば,みなさんの意見を伺いたい。

(清水)
鳴子では米作りをみんなで支えていこうという活動をしているが,鳴子温泉のまわりの水田が全て耕作しない地域になったらどうするといった議論が行われた。当然,雑草が生い茂ることになるだろう。あるいは,木などが乱雑に生えてくることにもなるだろう。そんな状況になったら,鳴子温泉にお客様が来るだろうか。鳴子温泉に来るお客様は単に温泉だけを目的に来ているだけではなく,鳴子のまち歩きをしてこけし職人を見るなど,じっくり湯治を楽しむことを兼ねている。そういったお客様が水田に耕作していない地域を見たらどうなるだろうかと議論し,二つの取組みが出てきた。一つ目の取組みは,本来,湯治というのは体を休めることであるが,鳴子温泉に来たお客様に耕作を手伝ってもらうこと。二つ目の取組みは,みんなで買い支えようということであった。この活動には,旅館の方々も積極的に参加してもらった。なぜならば,鳴子温泉のまわりの水田が耕作しない地域になったら,お客様に大変不愉快な思いをさせてしまうことになる。耕作し,できた米を割高ではあるが,旅館やお客様に買ってもらう。まわりで支えあいながら景観が守られている。私は,このことが農村景観ではないのかと思う。単に目で見える景色だけが景観ではないと思う。全てに繋がることが景観の効果であると考えている。ぜひ,松島でも鳴子のような取組みを参考に,皆さんでいろいろと議論してほしい。そうすることで,景観は地域にとっても観光にとっても有効なことであると見えてくると思う。

(東)
良好な景観形成を図るためのツールとして景観法という法律がある。景観法とは一言で言うと規制をかける制度であるが,全国一律の景観規制を定めることを目的としているのではなく,地域でどういった景観を備えたまちづくりをしたいかという議論をして,それを実現させていくための法律である。この法律では,都市部,農村部を問わず,例えば,建物の高さのコントロールやランドマークの保全,眺望景観や歴史的まち並みの保全,国道など公共施設の景観に配慮した整備など様々なツールが用意されている。
景観法を活用したまちづくりをするためには,市町村が景観行政団体であることが必要である。都道府県や政令市,中核市は法律上、景観行政団体となっているのだが,その他の市町村については,都道府県の同意を得て景観行政団体になっていただく必要がある。宮城県は景観行政に熱心なので,もし,松島町が景観行政団体に移行したいと要望したら,県は同意されるものと思う。景観行政団体になると,景観計画を策定していくことになるが,この計画の中で,景観計画区域や良好な景観形成のための方針や基準を定めていくこととなる。また,景観行政団体になれば,屋外広告物法に基づく条例も市町村で制定できることから,景観に考慮したまち独自の規制を行うことができる。良好な景観形成を図るツールとして,松島町には,できれば景観行政団体になっていただき,景観法を活用してもらいたいと考えている

支援する取組の例1です。 支援する取組の例2です。


(森山)
最後に,今後,松島の景観をどのように活かしていけばよいか伺いたい。

(大橋)
私としては,景観行政団体となり景観を通したまちづくりを目指していきたいと考えている。観光地の景観をはじめ,高城地区の中心市街地の景観,農村・漁村地区の景観など,町内全域でそれぞれの良さを出す景観行政を進めていきたい。例えば,観光地では歩行系のネットワークを整備していきたいと考えている。それにより,観光客をはじめ地域住民の方々にも住みよい魅力のあるまちになると考えている。
近年,全国的に景観に関して取組みを行うことが大きな流れになってきている。松島でも遅ればせながら景観についてキャッチアップしていこうと思っている。まずは,景観行政団体への移行を目指すが,そのためには当然,住民の方々との話し合いを実施し,納得いただいた上で景観行政を進めていきたいと考えている。また,景観行政を進める中で規制の議論になるかと思うが,松島は既に文化財や特別名勝の規制がかかっている。この規制の問題は,何のために規制を守っていくのかを住民が分からないということである。景観形成を進める際は,何のためにどういった規制をかける必要があるのかを住民の皆様に説明し,特別名勝の規制ではなく,地域住民の方々にもメリットのある景観形成のための規制ということをはっきりさせて取り組んでいきたい。

松島の北部エリアの景観です。 松島の南部エリアの景観です。

(李)
宿泊施設一つだけでお客様を呼ぶことは難しい。しかし,松島は他の観光地より素晴らしい自然景観に恵まれていることから,誘致しやすいという利点がある。私が勤務する施設にも外国人観光客が宿泊されるが,その多くは松島の良好な自然景観に憧れて,足を運んでいただいた方々である。また,松島の良好な景観もお客様の期待を裏切らずに感動させてくれる。やはり目に見える良好な景観と目に見えない人情の温かさが景観効果であると思う。魅力あるまちづくりの手法として,美しい松島の景観を持続させ,守り続けていくことが最大の手段であると考える。

(清水)
住民も観光客も心地良いと感じる景観づくりのような,身近なところから議論していけば良いと思う。また,既にある規制の問題やこれからの規制については長い時間をかけて合意形成していく必要があると思う。しかし,合意形成していく上で一番の問題は,一部の不心得者である。みんなの流れを平気で壊してしまう人,自分だけがいいと思っている人が必ず出てくる。そのいった人を含めてどう対応していくかが,景観法の主旨であると思う。是非,そんなことを思いながら皆さんで議論していただきたいし,私どもも応援していきたいと考えている。

(東)
まちづくりにはいろいろな視点がある。景観まちづくり,観光まちづくり,防災まちづくりなど切り口はたくさんある。しかし,どの切り口で整備を進めても最後には「住んでいる人や訪れる人が居心地が良い」ということに繋がる。また,景観計画については,用途地域のような利害関係にとらわれずに議論ができる分野でもある。松島町でもエリアによって,それぞれ良いもの悪いものがある。一つひとつ小さなものを発見していき,松島町全体のために皆さんで議論すると,より良いまちになっていくと思う。

良好な景観形成の効果例

整備前のまち並みの写真です。

(整備前のまち並み)

整備後のまち並みの写真です。

(整備後のまち並み)

(森山)
松島の歴史・文化を大切にして,持続可能な景観を形成することが重要で,これらを観光資源として活かしていくことを皆さんで考えてほしい。そのためにも,自然を大事にしていくこと,生活を充実させることも重要だと思う。保護と開発のバランスを考えながら,まちを育てたいというエネルギーや情熱,人材育成などを話し合っていただきたい。景観づくりにとって地域性は大切な要素だと思うし,まち全体が良くならないといけないと考えている。また,公共性も大切なことで,美しいものは美しいと皆さんが思うことも重要である。それから,いろいろな方に受け入れもらう多様性,日々の生活の中にある景観も重要だと思う。

最後に,皆さんで参加されることが,共有の価値を景観づくりの中に見出すことにもなるので,もう一度,松島町の住民であること強く意識してもらいたいと思う。また、皆様のコミュニティー意識づくりの一環としても考えていただき、今後の松島の景観づくりを良い方向に導いていただくことをお願いしたい。

開催パンフレットはこちらです。

お問い合わせ先

都市計画課行政班

宮城県仙台市青葉区本町3丁目8番1号

電話番号:022-211-3132

ファックス番号:022-211-3295

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