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合同会社でんでんむしカンパニー

代表社員

中村 未來さん

1987年生まれ、東京都出身。建築と環境学を学ぶために鳥取環境大学へ進学し、卒業後大阪の一級建築士事務所に入所。東日本大震災後、被災地の現場で、暮らしを取り戻すお手伝をしたいとの思いが生まれ、復興応援隊制度を利用し南三陸町へ移住。南三陸町観光協会でツアーの受入や簡易宿所許可取得や民泊の推進を主に担う。有志数名と耕作放棄地を活用した活動と、空き家を活用して小さな宿をつくる活動をスタート。2017年合同会社でんでんむしカンパニーを設立。

誰もが心地良い、自分の心に素直で心地よい選択、心地良い場所で心地良い仕事ができる社会を実現したい

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移住して宮城で起業しようと考えたのは何故ですか。

移住したのは、東日本大震災がきっかけです。2011年8月、私がボランティアに入った気仙沼の小泉地区の夏祭りで、そこに暮らしていた地域の方々とお話しをする機会があり、もうここに住むのは難しいだろうなと思うような状況でしたが、「同じ場所で暮らしたい」と話されていることが私にとって衝撃的で、暮らしを取り戻すお手伝いがしたいと思いました。活動の候補地の情報を集めている中で、興味のあるプロジェクトの募集があったので応募し、南三陸に来ることを決めました。実際に来てみたら、エネルギー溢れる人たちがたくさんいて刺激を受けました。

現在の活動内容を具体的に教えてください。また、活動をする上で心がけていることはありますか。

一日一組限定の小さな宿の運営と、藍の栽培や藍を使った製品作りを行っています。宿や藍に関する業務は2名のパートスタッフや両親にも手伝ってもらいながら行っています。宿のパンフレットは町内のデザイン会社さんに依頼しましたが、商品パッケージを含め、原料作りから染色、製品化、包装まで全て自分たちで行っています。私は、建築をずっとやってきたので、農業のことも染め物のことも分からなかったのですが、栗原市栗駒で藍染をされている方の技術を見学させていただいたり、栽培に関しても、毎年データ取りや情報を集め試行錯誤しながら藍染の技術と藍の栽培について独学で勉強しています。

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ワーク・ライフ・バランスで心がけていることはありますか?自分らしく働く・暮らすために重視していることも教えてください。

仕事と子育てのバランスや両立についてはすごく悩んでいます。仕事の内容が、農作業や染色など、季節や天気によって変動することも多く、人間の都合ばかりでは上手くいかない中で子育てもしています。仕事が好きなので、油断すると仕事に多くの時間を使ってしまいますが、子どもとの時間を大切にしたいという思いも強く持っているので、子どもが保育園から帰ってきてから寝るまでの間は、パソコンやスマホを極力触らずに、子どもとの会話や食事、遊びに集中するように意識しています。種蒔きや宿泊受入前の空間を整える作業などは、子どもも巻き込んで一緒に行うことも多いです。

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今後、思い描いている活動は?そのために努力していることや、宮城や企業に期待していることも教えて下さい。

南三陸の先輩たちで、農家さんですが山仕事もして機械を直したり、漁師さんだけど畑仕事もするなど、暮らしに関するいろいろなことをできる方がたくさんいて憧れています。自分も藍染と宿をやっていますが、旅館業やプロダクトづくりという枠だけじゃなく「使われなくなってしまったものに、ちょこっと手を加えて未来へ繋がるモノ・コトづくり」というコンセプトを掲げているので、それに沿うものがあれば、業種や内容問わず取り組んでいきたいと考えています。この町自体が「いのちめぐるまち」というのをコンセプトにしていて、循環型社会を目指しているのが私もすごく共感している部分です。例えば私のところのトイレもバイオトイレという、中におがくずのようなものが入っていて、最後は堆肥として使えるようなトイレにしています。それを畑にやったり、薪ストーブから出る灰を畑に撒いたりしています。

学生インタビュー

現在、2人のお子さんがいるとのことですが、仕事と育児を両方する上で心掛けていることはありますか。

繰り返しになりますが、保育園から娘が帰ってきた後は、パソコンやスマホを極力触らずに、子どもとの会話や食事、遊びに集中するように意識しています。仕事も大切ですが、今は仕事よりも娘たちとの時間を優先したいので、娘たちと向き合う時間が何よりも大切です。畑作業では、長女と一緒に種蒔きをすることもあり、自然に触れるのはとても良い体験だと考えているので、娘たちと一緒にできる作業はなるべく一緒にするようにしています。仕事も育児もすべてを100%理想通り行うことは難しいので、常に優先順位を考えながら、今やるべきこと、やりたいことを精査しながら日々をすごしています。

人生を歩む中で大切にしている価値観や軸となる考え方があれば教えてください。

誰もが心地良い、自分の心に素直で心地よい選択、心地良い場所で心地良い仕事ができる社会の実現というのが私の大きな目標です。現代社会は情報の量も多い、スピードも速いで、その中で生きるのはとても大変だと思います。そのような目まぐるしい社会の中でも、心地良く生きられる人が増えるよう、私自身が一つのモデルとなれたり、この場所が癒しとなれるよう空間を開いていきたいと思っています。私自身も「どの選択が心地良いかな、どういうふうに1日を過ごしていったら気持ちが良いか」と考えながらお仕事の内容や暮らし方を考えています。

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Interviewer

鈴木 茅優さん 宮城学院女子大学

中村さんのお話では、震災からの復旧・復興という課題の他にも少子高齢化や耕作放棄地、空き家問題といった地域課題に対して真摯に取組む姿が印象的でした。また、藍を栽培する上で土の成分や水分量にこだわるなど、より良い藍づくりのために日々、試行錯誤している様子が伺えました。今回のインタビューでは、目で見て楽しめ、舌でも味わえる藍の奥深さを学ぶことができ、大変有意義な時間を過ごせました。私も中村さんのように、課題に直面した際は自分の目と耳で現状を把握した上で、自分に何ができるかを考えていきたいです。

MY SCHEDULE

  • 5:00

    起床

    娘たちが起きてくるまでメールの返信等PC仕事、収穫の時期はすぐに藍畑へ

  • 6:30

    娘たちの身支度手伝い、朝食

  • 8:00

    娘の見送り、お茶を飲みながら今日1日のスケジュール・タスクをチェック。または染色準備

  • 8:30

    空間を整えた後、仕事開始

    事務、染色、農作業等

  • 10:00

    出社した従業員たちとタスク共有、打ち合わせ等

  • 12:30

    昼食

  • 13:30

    仕事

    事務、染色、農作業等

  • 15:30

    ボイラー着火(お風呂の準備)

  • 16:30

    外回り業務

    そのまま娘のお迎えにいきます

  • 18:30

    帰宅後、入浴、夕食、洗濯

  • 20:15

    娘たちと遊ぶ。絵本読み聞かせと寝かしつけ

  • 21:15

    (自分も寝落ちなければ)娘の園のこと(編み物や刺繍、会計業務等)または仕事

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休日の過ごし方

娘たちと一緒に薪運びや、まだまだ続く古民家の改修、敷地内整備をしたりして過ごすことが多いです。仕事が落ち着いて数日間お休みを取れそうな時は、旅行に行ったりお出掛けもします。仕事と生活が曖昧な暮らし方をしているので、仕事の日とあまり変わらない時間の過ごし方をしています。

※記載内容は取材当時のものです。