
株式会社ゼルコバドリーム
取締役
1982年生まれ。蔵王町出身。父が営む村上牧場(2014年に法人化。現在の社名へ変更)に長女として生まれる。宮城県農業短期大学畜産科で学んだ後、北海道酪農学園大学に編入してさらに2年間学ぶ。大学卒業後の2005年、村上牧場に就農。2014年に結婚。両親や夫とともに牧場の経営に携わっている。
両親が牧場の仕事をしていたため、周りの友達のようにお出かけに連れて行ってもらえず、子どものころはむしろ牛が嫌いでした。それが変わったのが中学生の時。母に「仔牛にミルクをあげるアルバイトをしない?」と言われ、お小遣いが欲しかったので手伝うことにしたんです。最初はいやいやながらやっていたのですが、毎朝ミルクをあげているうちに仔牛たちがだんだん私になついてきて、その時に初めて「両親がやっていたのはこんなに尊い仕事だったんだ」と気づくことができました。その出来事をきっかけに家業に興味が湧き、継ぎたいと思うようになりましたね。
牧場では約200頭の乳牛を育てており、牛舎の掃除、エサやり、搾乳と何でもやります。また、六次化産業としてヨーグルトの加工・販売も手がけており、ヨーグルト工房の方の業務も兼務しています。さらに労務管理や経理といった事務的な業務全般も担当しています。当社では、「トータルカウコンフォート」という牛の快適性を追求した飼養管理を基本としているのが特徴です。その一環でもあるのですが、牛に対しては常に思いやりの心を持って接するよう心がけていますね。牛はとても繊細な生き物なので、こちらがイライラしていたりするとそれを敏感に感じ取り、ミルクの品質にも影響が出てきてしまうんです。
仔牛が生まれ落ちてから一人前になってミルクを出すまでに2年ほどかかります。そのため、無事に出産し、ミルクを出すようになった時には、「自分の力や時間を費やしてよかった、細心の注意を払って育ててきてよかった」と心の底からうれしさがこみ上げます。そしてその牛乳を消費者の方に「美味しいね」と褒めていただいた時には充実感を覚えます。また、「酪農ガールズ」での活動もやりがいにつながっています。「酪農ガールズ」は、2010年に仙南地区の酪農家の女性後継者や酪農家に嫁いだ女性たちと、「賢く魅力的な酪農女性」を目指して結成したグループ。年4回程度集まって、牧場見学会や技術研修会、料理教室、フラワーアレンジメント教室など多彩な活動を行っています。同業の人たちとの交流はとても励みになりますね。
酪農というと「つなぎに長靴」というスタイルをイメージされると思いますが、それが嫌だったので、朝5時半に出勤して牛の世話が一段落した後は、きちんと身なりや化粧を整えて過ごすようにしています。お洒落をしていると気持ちも前向きになり、仕事のモチベーションもアップしますね。そういった意味で、月1回のネイルサロン通いも必須。爪をきれいにするだけでなく、サロンで過ごす一人の時間も私のささやかな楽しみです。職業柄、完全に仕事とかけ離れることはできませんが、書道やネイルサロンのように自分でいられる時間をできるだけ持つようにしています。
私の住んでいる蔵王町は子育て支援に力を入れており、サポートの種類も豊富で充実している点が魅力だと思います。住んでいる人も温かく、子育てしやすい町ですね。宮城で生まれ、ほぼずっと宮城で暮らしているので、他の地域に住もうと思ったことはないです。
自分たちがいなくても任せられる従業員を育てつつ、AIやロボットを導入できるところは導入し、生産性を上げていくこと。また、ヨーグルトの販路をさらに広げていくことを考えています。将来的には自分の子どもにできたら継いでほしいなという気持ちがあります。もちろん強いるつもりはありませんが、子どもたちが自然に「継ぎたい」と思える両親の姿を見せていきたいですね。牛の飼料は自給できるものが少なく、どうしても輸入物に頼らざるを得ない状況ですが、昨今の円安により価格が高騰しています。それでも牛の健康と牛乳の品質を保つためには、輸入飼料は必要不可欠です。行政には現場に足を運んで現状を知っていただき、生産者目線でのサポートをお願いしたいです。
2年間頑張って育てた牛が、自分の力が至らないために亡くなってしまったことです。この仕事をしていると、体力面というより精神的な面で大変だと感じることのほうが多いです。牛はとても繊細な生き物で、夏には熱中症、産後には体力不足で弱ってしまうことがあります。また、お世話をする人間が変わると牛もわかるので、そうしたストレスがかからないように、世話を担当する人を同じにしています。
専門の短大での学びは直接的に仕事に活きているとよく実感しています。実習を通じて学んだ北海道の寒冷対策は、自分の牧場の寒冷対策を考えるためのベースになりました。また、学生時代にお世話になった先生や友人とは今もLINEでつながっていて、何か困ったときに相談に乗ってもらったりしています。学生時代に築いた人脈・ネットワークは、今の私にとって大切な財産ですね。
Interviewer
小出 紗英さん 東北大学
起床
身支度を整え、愛犬の散歩をしながら牧場へ出勤
牧場到着
作業着に着替えて牛舎の掃除、搾乳機器の準備
担当作業終了
自宅に戻り朝食の準備
長男送迎
長女&次男、幼稚園保育所へ送迎
先生に引継ぎ、ママ友とご挨拶。この数分の時間で元気と笑顔をもらってます。
牧場に出勤し、搾乳作業
スタッフから状況を教えてもらいます。
ヨーグルト工房に出勤
スタッフに声掛けやミーティングをする。スタッフとの女子トークは楽しみの一つです。
昼食&片付け&夕食の準備
事務所にて事務作業や打合せ
牧場に出勤
牛の様子を見ながら餌やり
帰宅
残りの家事を急いで済ませます。牛の出産があったりするとこの時間が取れない事もしばしば…
長女&次男お迎え
お迎えに行くと嬉しそうに走ってきてくれます。
帰宅
長男も帰宅するので、夕飯を出す準備をします。
子供たちと夕飯
再び牧場へ出勤し、搾乳作業スタート
本日の業務終了
やっと帰れる!と、ホッとする瞬間です。
夫の夕食を出し、子供たちと入浴
子供たちは先に夢の中へ
私はInstagramを見たり、夫と海外ドラマを見たりします。
就寝
休日の過ごし方
自分が子どものころに寂しい思いをしたので、休日は3人の子どもたちとの時間に充てるようにしています。遊園地や動物園、イチゴ狩りなど屋外で楽しめるところに遊びに行くことが多いですね。子どもたちと出かける時間は、子どもたちの成長を感じる時間でもあります。私一人の趣味というと、書道です。子どものころに習っていて、最近また再開したのですが、毎日忙しく過ごす私にとって無心になれる大切なひとときです。
※記載内容は取材当時のものです。