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株式会社新澤醸造店

杜氏

渡部 七海さん

1996年生まれ、神奈川県大和市出身。発酵食品に興味を持ち、東京農業大学短期大学部の醸造学科で酒類、主に日本酒について学ぶ。大学卒業後、1873年創業の老舗蔵元・株式会社新澤醸造店に入社。入社3年目の2019年、22歳で杜氏(製造責任者)に抜擢される。

醸造の奥深さに魅了され、おいしいお酒を追い求める

現在の会社を選んだ理由を教えてください。

新澤醸造店とは、大学2年生の時に先輩の紹介で試飲会のお手伝いをしたことが出会いです。料理の素材そのものが持つ力を引き出し、食事をよりおいしく感じさせる「究極の食中酒」を造るという取り組みに面白さを感じ、入社しました。酒造りは男性メインというイメージでしたが、女性も酒造りに関わっていて、やりたいことに対してのチャンスがきちんともらえる環境だと感じたことも、この会社を選んだ理由です。

現在の業務内容を教えてください。
また、仕事をする上で心がけていることはありますか?

私は人事の仕事や他部署の手伝いなども行っていて、その日によって業務内容は異なるのですが、杜氏としては酒造りの責任者として現場をしっかりと管理するのが仕事です。酒造りの全工程に目配りし、あらゆるタイミングを見極め、分析し、数字に上がってこない味覚のチェックも行います。また、基本的にチームで作業していますので、メンバーに指示を与えたり、円滑なコミュニケーションを図るのも杜氏の役割です。醸造は奥が深く、すぐに結果が出るものではありません。また、時間の経過や管理の仕方などによっても香りや味が変化していくものなので、出来上がった瞬間だけおいしくて喜んでいるようでは駄目。その時に飲んだ人に「おいしい」と感じてもらえるよう、当社の代表がよく話す「お客様の口に入るまでが酒造り」という言葉を肝に銘じて仕事をしています。

どのような時、やりがいを感じますか?

醸造の魅力はまさにその奥深さ。醸造にはゴールがなく、一生追求していけるところが一番のやりがいだと感じています。2022年、「世界酒蔵ランキング」で当社が第一位を獲得しましたが、そうした評価や賞をいただけることも励みになりますね。

人間関係や職場の雰囲気を教えてください。

当社には若い人から年配の人まで様々な世代が在籍していますが、年齢や経歴、性別に関わらず、能力で仕事を任せてもらえる社風です。私も22歳で杜氏に指名され、戸惑いもありましたが、醸造部のみなさんが「やってみたら?」と後押ししてくれました。みんな仲がよく、言いたいことを言い合い、協力し合いながら、よりよいお酒を目指しています。また、産休・育休制度やテレワーク制度なども確立されていて、女性が長く安心して働ける環境です。女性の管理職もおりますし、関連会社の社長も女性ですので、女性の活躍の場も広いと思います。

ワーク・ライフ・バランスで心がけていることはありますか?
自分らしく働く・暮らすために重視していることも教えてください。

仕事の日はきっちりと仕事に取り組み、休みの日はしっかり休むようにしています。休日でも醸造部のメンバーから連絡が入ったりするのですが、決めた時間以外には携帯を見ないようにして、できるだけデジタルデトックスするよう心がけていますね、オン・オフの区別をきちんと付けることが、自分らしく働くために必要なことだと思っています。

あなたが思う宮城の魅力は何ですか。
宮城で暮らす理由も教えてください。

他県から来ているので、魅力に感じるところはたくさんあります。まず、海産物がおいしいこと。スーパーで売られている魚でも普通においしいので驚きました。あとは大らかというか、穏やかで優しい人が多いこと。ほかの酒蔵と交流する機会も多いのですが、宮城の酒蔵の人はみなさんとても優しいです。とてもいい環境で仕事ができているなと実感しています。

今後思い描いているキャリアデザインはありますか。

まずは自分の力で生きていけるように土台を固めること。そして、おいしい日本酒を造るための機会や環境を与えてくれた会社にしっかりと恩返しをしたいですね。より働きやすく、入りたいと思ってもらえるような会社や部署にし、後輩をしっかり育て上げ、いずれは杜氏の業務を渡して、自分は次のステップへと進みたいと思います。次のステップはまだ考え中ですが。日々の業務をしていると方向性はその時々で変わるので、先々の目標をあまりきちんと立てすぎないようにしています。

学生インタビュー

なぜ食品関係のお仕事に興味を持つようになったのですか?

私の祖母は料理について詳しく、調味料を製造元から直接取り寄せることもしていました。私の幼少時、家にあった味噌が切れたため、母がスーパーから買って調理をしたところ、私は「この味噌は味が違うから食べたくない」と言ったそうなんです。そういった経験から、幼いころから味にはうるさかったのかなと思います。ですので、祖母の影響から食についてはよく考えるようになりました。

常に現状に満足せず、仕事に向上心を持って取り組んでいる渡部さんのモチベーションはどこから出てくるのでしょうか?

今まで支えてくださった多くの人に恩返しをしたいという気持ちがモチベーションになっています。始めは単に日本酒という「液体」を作りたいという思いで入社しました。しかし、酒造りに取り組む中で、個人の力の限界を感じ、それと同時に、社内の人やお酒を取り扱ってくださる酒販店、飲食店など、多くの人の支えがあって酒造りができているのだと実感しました。今はその方々のためにも、よりよいお酒を造り続けたいと思っています。

Interviewer

輕部 知紘さん 東北学院大学

全国最年少女性杜氏(当時)となった渡部さんを取材し、年齢からは想像できないほど、会社全体のことを考え、将来を見据えて行動していたことが印象に残りました。また、その背景には支えてくださる方への恩返しという、温かい動機があったこともわかり、仕事に対する信念、思いが少しうらやましくも感じました。

MY SCHEDULE

  • 7:00

    起床

  • 8:00

    出社

    酒造りのある日は川崎町にある蔵に出勤。蔵の中で仕込みの準備を行います。

  • 9:00

    仕込み作業

    お米を大きな釜で蒸していきます。蒸し上がった米を麹室に移動させ、仕込み作業スタート。

  • 10:30

    事務仕事

    その日のタンクの様子や米の具合をデータ化して分析する醸造の事務仕事を行います。

  • 12:00

    お昼休憩

  • 13:00

    瓶詰め作業や人事関係の仕事など

    リキュールの瓶詰めや酒粕を詰める作業を行います。その後は給与計算、労務管理、人材採用といった人事関係の仕事をこなします。

  • 16:00

    終業

  • 17:00

    帰宅

    夕食・晩酌、読書、入浴など。

  • 22:00

    就寝

休日の過ごし方

インドア派なので、基本的には家の中で過ごすことが多いですね。趣味は読書で、気になる本があればジャンルにとらわれず読むようにしています。推しは元NMB48の渡辺美優紀ちゃんです。握手会に参加して、あまりの可愛さにファンになりました。日々の活動をファンクラブサイトでチェックするのはもちろん、イベントがあれば遠くても足を運びます。

※記載内容は取材当時のものです。