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起業家トーク

 

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#テーマ
「自分でキャリアを選択するということ」

自然卵農園を運営し、クレープやプリンなどのスイーツも人気の大沼あかねさん。笑顔と幸せで人と人をつなぐ紅茶教室Lily's Teaを運営する柴田麗麗さん。そして、南三陸町でのボランティアをきっかけに、現在はまちづくりのアドバイザーや防災教育、ライターなど幅広く活躍する大場黎亜さん。それぞれの分野で輝く3人の女性経営者が、起業のきっかけや事業を続けるうえでの挑戦、宮城で働く魅力について語り合いました。

  • 大沼 あかねさん

    自然卵農園株式会社

    代表取締役

  • 柴田 麗麗さん

    株式会社Lily’s Tea

    代表取締役

  • ooba

    大場 黎亜さん

    株式会社Plot-d

    代表取締役

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現在のお仕事と起業のきっかけ

大沼はじめまして。自然卵農園の大沼と申します。自社の養鶏場で作るこだわりの自然卵「卵皇(らおう)」を使って、クレープやプリンといったお菓子を製造・販売しています。キッチンカーでのクレープ販売から始め、現在は、青葉区五橋の「自然卵のクレープ 五橋店」、南三陸町のハマーレ歌津商店街の工場兼販売店舗を運営しています。店舗運営だけでなく、卸売業やフランチャイズ展開も行っていて、フランチャイズは15店舗まで広がりました。

大場南三陸町を生活拠点にしながら、まちづくりのアドバイザーや防災教育・ライターなどさまざまな活動している大場と申します。東京出身ですが、震災をきっかけにボランティアとして南三陸に通うようになり、地域に深く関わるようになりました。その後、町民の方と結婚してこちらに住みながら、町民としても地域づくりに取り組んでいます。最近ではグリーンツーリズムのインストラクター・コーディネーターとしての活動や宮城県第1号の農山漁村集落情報発信支援員にも任命されて事業を実施。2022年には一般社団法人東北GYROsを設立し、里山保全活動も進めています。

柴田紅茶教室Lily's Teaを運営しております柴田です。本日はよろしくお願いいたします。私はスリランカで直接仕入れる新鮮な紅茶を使ったお茶会を通じて、おいしい紅茶の入れ方やティータイムの楽しみ方をお伝えしています。また、「ティータイムスタイリスト」という資格制度を立ち上げ、これまでに約100名が資格を取得しています。そのほか、紅茶缶やティーポットなどのオリジナル商品の販売も行っています。ここにいる3人とも自分で事業を立ち上げたわけですが、皆さんはどのようなきっかけで起業したのですか?

大沼今から20年前くらいに、末っ子が幼稚園に入園して少し手が離れたタイミングで「自分の時間を自由に使いたい」と思ったのがきっかけです。嫁ぎ先が商店街にある釣具店だったのですが、夜市があると何かしらの店を出さないといけなくて。それでクレープを売ったことをきっかけに、キッチンカーでの販売も始めました。当時はクレープもキッチンカーも珍しかったので、それがヒットして軌道に乗りました。

大場私は、学生時代は教員を目指していて、早稲田大学の教育学部に通っていました。在学中に震災が起こって、先が見えないなかでメディアの情報を鵜呑みにして震災を語る教員にはなりたくないと思ったんです。それで、自分の目で現場を見てみたいと思い、ボランティアに通うようになりました。その後復興支援のイベントで知り合った前職の上司に誘われ、一度まちづくり関係のコンサル会社に就職したんです。その際、「将来的には独立する」と伝えて、経験を積ませてもらいました。その会社では、東京と南三陸町を行き来しながら、全国を飛び回る仕事をしていました。2017年、結婚を機に南三陸町に移り住み、2019年に独立してPlot-dを設立しました。

柴田私は子どもの頃からピアノをやっていて、大学もピアノ専攻で音楽の教員免許も取りました。でも教育実習をしたときに、「音楽の道は違うかも」と思ったんです。そんなときに頭に浮かんだのが紅茶でした。まず紅茶を販売する会社でアルバイトを始めて、その後紅茶研究家・磯淵猛先生のスリランカツアーに参加したことで紅茶の魅力にどんどんのめり込んでいきました。友達から「紅茶について教えてほしい」と言われたことをきっかけに2014年1月に紅茶教室を立ち上げて、「お茶を買いたい」という声に応える形で店舗への卸売や商品開発にも取り組みました。法人化したのは2022年です。

起業家に必要なもの

柴田起業して社長になろうと思えば誰でもなれると思います。でも、安定とは程遠いという厳しさもありますよね。続けるのは本当に難しい。お二人の話からも、やっぱり「思い」が大切ですし、それがあるからこそ続けられるんだなと感じているところです。

大場私も起業1年目はすべてが手探りでした。しかも、ようやく軌道に乗りそうだというタイミングでコロナ禍になってしまって。プロジェクトが白紙に戻り、いっときは会社を閉じることも考えました。それでもなんとか給付金でしのぎながら、「まずは3年続ける」という目標を立てたんです。3年やれたら、次は5年、次は10年…と、「ずっと続けなきゃ」というよりは「今は逃げずにやりたい」という思いを積み重ねてきました。それに、独立したときに応援してくれた人たちの期待に応えたいという気持ちも強いです。

大沼うちもそうやって少しずつ形を変えてきました。最初は必要に迫られてやっていただけだったのが、事業が大きくなるたびに肉付けされていった感じです。例えば工場を移転するとか、仙台に店舗を出すとか。

大場考えてみると起業することが目的ではなくて、自分のやりたいことに一番合う形が株式会社だったのかもしれませんね。でも、起業した以上は「自分はこれをやるんだ」って覚悟を決めるしかないかなっていう気もします。

柴田私もそう思います。全ては覚悟だなって。経営者として、まずは自分自身に誠実でいることが一番大事だと思っています。人に誠実でありたいなら、まずは自分自身に誠実じゃなきゃいけない。誰が見ていなくても、自分は見ている。そういう気持ちが事業を続けていく支えになっています。

宮城で働くことの良さとは

大沼私は「伸びしろ」だと思っています。宮城はまだ発展途上というか、成熟しきっていない感じがあります。それが逆に商売する上では魅力的ですね。私は商売人という立場で、この3人のなかで一番お金の動きに近い仕事をしていますから、そういう意味でも、宮城にはまだ可能性がたくさんあると感じています。

大場わかります。仙台って「ちょうどいい都会」なんですよね。東京は何でもありすぎて、かえって選ぶ楽しさが減っているように感じます。でも仙台なら、探せば欲しいものがちゃんと揃っているし、動きやすい。クオリティの高いものも揃っているのに、まだ新しいものを受け入れる余地もある。そこが面白いですよね。

柴田宮城には、新しい挑戦を受け入れる懐の深さがあるように思います。発展途上だからこそ可能性がありますよね。

大場仙台という都会と、その周りに広がる農山漁村の関係性が魅力的なんです。自然の豊かさと都会の便利さが共存していて、多様な働き方ができる。私は南三陸町に住んでいますが、仙台へも出てきて、東京にも会社を持って、日本全国とつながりながら、まちづくりの仕事ができています。

柴田「人とつながりやすいこと」も宮城の魅力ですね。私の父は香港人で、母が仙台出身の日本人なんですが、日本に来てからそれを強く感じました。宮城では、誰か必ず共通の知り合いがいて、人とのつながりが自然に広がっていく。そういうところが素敵だと思います。

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自分らしい働き方を模索する

大場私は地元の中学生や高校生向けに出前授業を行う機会が多いのですが、いつも「キャリアは自分でデザインできる」というテーマで話しています。地元にいながら全国で活躍することもできるし、逆に外に出て地元のために働くこともできる。自分のライフスタイルやキャリアをどうデザインするか、それが一番大事だと思います。

柴田本当にその通りで、今ライフスタイルを自分でデザインできる時代だと思います。起業したいならまずやってみればいいし、迷ったらその道のプロに話を聞けばいいんです。

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大沼私はフランチャイズをやっていることもあり、起業について相談を受けることが多いです。本当に起業する人は、相談に来たらその場で決断をしてすぐに動き出します。もちろん、何度も相談に来て「お金を貯めてから始めます」と言う人もいますが、私はその時間がもったいないと感じてしまいます。厳しい言い方かもしれませんが、起業するなら時間の価値をしっかりと考えて大切にしてほしいと思います。

大場確かに、時間と経験が自分の人生にどれだけの価値をもたらしてくれるのかという視点は重要ですよね。それをしっかり考えて、自分に投資できるかどうかが分かれ道になるのかもしれません。

柴田一方で、「起業するつもりじゃなかったけど結果的に起業した」というケースもありますよね。本当に必要なタイミングが来れば自然と仕事が動き出すこともありますし。だから、起業するかどうか2年や3年悩んでもいいと思うんです。悩んだ経験自体がその人の糧になりますから。起業することが目的ではなく、自分が置かれた環境でどれだけ花を咲かせられるか、そのための挑戦を楽しむことが、どんな仕事でも大事なんだと思います。