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三世代トーク

#テーマ
「こんな宮城が好き・
こんな宮城にしていきたい」

宮城県で働く引地恵さんと高山香織さんは、2人のお子さんを持つワーキングマザー。
東北大学大学院でNPOの研究を行っている峯村遥香さんは、
今後のキャリアデザインを見据え、ふたりへの興味が尽きません。
年齢も出身もバラバラだけれど、この宮城で出会った3人の「ずうっと宮城トーク」をどうぞ。

  • 高山 香織さん

    アナウンサー/司会業/ナレーター/ジャズカフェ店長代理

  • 峯村 遥香さん

    東北大学大学院

  • 引地 恵さん

    一般社団法人WATALIS代表理事/株式会社WATALIS代表取締役

女性の働き方はどう変わった?

峯村はじめまして。東北大学大学院でNPOの経営について学んでいる峯村遥香です。出身は神奈川県横須賀市です。高校時代にNPO法人に出会いそこから興味を持ってNPOを学ぶために東北大学に進学しました。今日はよろしくお願いします。

引地よろしくお願いします!私は、亘理町で一般社団法人WATALISと株式会社WATALIS、そして事業の一環としてコミュニティカフェを経営している引地恵です。私は亘理の出身で、大学も宮城なので県外に出たことはありません。大学卒業後は大日本印刷に初の女性総合職として就職しました。3年勤務して、地元の亘理町で公務員になりました。そして、2011年の東日本大震災で思うところがあって退職し、2012年からWATALISの活動を始めています。

高山今日は、お会いできてうれしいです。高山香織と申します。私は、新潟県の出身で、大学で東京、就職で名古屋、その後仙台という土地遍歴をたどりました。大学卒業後は、メーテレという名古屋のテレビ局でアナウンサーをしていました。仙台に来てからは、アナウンサー、司会業、ナレーターなど話す仕事ももちろんですが、これまでの経験を活かしてコミュニケーションデザイナー、大学の客員講師、学習塾での面接指導、ジャズカフェの店長代理など、いろいろなお仕事をさせていただいています。

峯村おふたりともいろいろなことをされていて、スゴイです!今は女性活躍推進の時代ですが、就職した当初から現在まで、女性の活躍についてどのような変化があったと感じていますか?

引地私の時代は、地元に就職先がなくて…。企業にも指定枠があるような状態で、大手でも「この人が結婚で辞めるから補充しよう」という感じだったんですよね。当時女性の仕事は一般事務をやる一般職と、男性と同じく働く総合職のふたつがあって。私は、大日本印刷の東北事業部では初の女性総合職だったので、女性のロールモデルがいませんでした。結婚、出産のときにはどうしたらいいんだろう?と思っていたし、一生仕事を続けていたかったので、結婚を機に公務員になったんです。当時は、やはり公務員でも女性はなかなか管理職になれないような時代でしたね。公務員を続けながら子供2人を育てましたが、育児休暇もとらず働いていました。

高山私の時代はある程度、育児をしながら働くことへの理解が始まってくるんですね。でも、やっぱり結婚したら「いつ辞めるの?」と聞かれることも多かったです。私の仕事がこんなにマルチになったのは、男女格差に理由があって。女性が家事育児をするのが社会的常識としてあって、いろいろなことを諦めるしかなくて。その中で、徐々に「私は選択したんだ」と考えるようにしました。震災後、復興の様子を伝える番組を担当したことがあったのですが、それをきっかけに河北新報社のプロジェクトで「被災地で話をしてほしい」という依頼が来て、それから大勢の前で話す仕事が来るようになり、そこから大学の仕事が決まり…という感じでした。少しずつ増えていったので、少しずつ子供たちも大きくなり手が離れてくるわけです。そうすると、できる仕事も増えていきました。その中でも、主軸は「子供には私がちゃんと寄り添う」だったので、それだけはブレないようにしてきました。

峯村引地さんのお話にあった「総合職」が、私たちの世代では何を指すのかわからない人が多数だと思います。そういう意味なんだ!って私も驚きました。そして、おふたりのお話を伺って、私は母の顔を思い浮かべました。母は看護師なのですが、子育てのために仕事を辞めて、10年キャリアが空いてしまったんです。復職はしましたが、キャリアを閉じたことによって諦めたことがたくさんあることを最近聞いたばかりで。私も将来は結婚したり、子供を育てたりしたかったので、高山さんの「選択していく」という生き方は素敵だなと思いました。

引地私は夫の実家が子供たちの面倒を見てくれたのですが、やはり周りから「お母さんが一番なんだよ」って言われたりすることもあったから、子供に申し訳ない気持ちはいつもありましたね。

高山子育てしながら働いていると、「春休みなのに、子供大丈夫?」とか、ありますよね。でも、男性はそういうことは言われていないと思うから、子供に「ごめんね」って気持ちはないかもしれないですね。

峯村私は母から「申し訳ない」と言われたことはないですが、きっと同じような気持ちを持っていたかもしれません。今日この対談が終わったら、さっそく母に電話します!(笑)
ところで、おふたりはお仕事を続けていて、世代間ギャップを感じることはありますか?

引地社会のことや世の中のことをよくしたいと思っている人が多い感じがしますね。少なくとも私は当時、世の中の課題とか考えてなかったと思います。あとは、車をほしがらないのが一番のギャップかな(笑)。私の時代は、社会人になったら「まず車を買って、乗る」でしたから。所有することにこだわらないし、働き方もバランスよくホワイト寄りを選ぶ。仕事に全投入ではないし、転職が前提っていうのを感じますね。

高山マスコミにいると「ここで一生がんばります、夜中でも働きます!」だったのが、今やそういう現場でも「休みはどのくらいもらえますか?」って就活生は聞きますものね(笑)。「休みいりません」という空気感の中で働いてきたので、それはギャップかもしれません。

峯村今は就活をしていると、企業のアピールもどれだけホワイトかをPRしているんです。引地さんの転職前提というお話ですけれど、すでに就職している同期は、誰もが口をそろえて「3年で辞める」と言っています。ワーク・ライフ・バランスという考え方も大事ですが、私自身はスキルアップを目指してハードに働きたいです。

こんな宮城に、なったらいい

峯村みなさんが好きな宮城について教えてください。

引地大学も仙台で、県外に出たことがなくて。ほかの場所で暮らしたことがないから決定的な違いはわからないけれど、「緑が多くて食べ物がおいしいこと」ですかね。

高山宮城は四季がそれぞれ濃いと思います。それでいて、名古屋みたいに夏は酷暑にならないし、新潟みたいに雪に埋もれないし。ちょうどよく日本らしい四季が楽しめる場所だと思います。峯村さんは大学からこちらに来ていかがですか?

峯村郷土料理があって、伝統的なお祭りがあって。私の地元にないものがあるので宮城だけじゃなく、東北がうらやましいです。あとは、震災をきっかけに移住した若手の社会起業家が多くて、熱い大人が多いというイメージです。そういう熱い大人のひとりであるTOHOKU360の安藤歩美さんと、このポータルサイトの取材の中で会えたのはすごくうれしかったです。おふたりは、宮城で会ってみたい方はいますか?

引地私は公務員時代に民俗調査の仕事をしていたんですね。宮城の中でも北と南では全然違うから、県内のいろんな人に会って話をして、その人生の尊さに触れたいですね。

高山私は仕事柄たくさんの方とお話ししましたが、まだ会ったことがなくてお会いしたいのは、伊集院静さんです。著書も読ませていただきました。でも、実際にお会いしたら何を聞いても薄い質問になってしまいそうで、結局「いいお天気ですね」くらいしか言えないかもしれないです(笑)。

峯村おふたりは、今後宮城をどのようにしていきたいと考えていますか?

引地生まれ育った場所である宮城が「懐かしくて、新しい未来がある」場所になったらいいなと思います。華々しく世界が激変する未来像もあるかもしれないけれど、懐かしさの中にある本質的な美しさを感じる感性を誰もが持てるといいかな。自分は着物地をアップサイクルしているのですけれど、着物には嫁ぐ娘の幸せを願う親御さんの気持ちが入っていたりする。もう着物としては着られないかもしれないけれど、想いを受け継ぎたいから今の時代に合うよう、別の形にアレンジしているんです。着物だけじゃなくて、使っていない土地、農地もみんなで活用していける未来が宮城に合うのではないでしょうか。だから私は、野菜も作っているし、蜂も飼っているし、空き店舗をカフェにしたりもしている。これからも、自分ができることからやっていこうと思っています。

髙山新しい教育プロジェクトを立ち上げたいと思っています。多様性が求められている時代なのに、義務教育の中でそれができているかというと、ちょっと違う気がして。だから、自分で自分のことを考える力を育てていけるような教育プログラムを立ち上げたいです。宮城は、四季が豊かなので体験プロジェクトなどもいいかもしれませんね。楽しい大人になれるような子供時代を過ごせる場所にしたいです。

峯村それこそ私は、楽しい大人がいることに気づいたときに、宮城が好きになりました。誰かから聞いた言葉ですが、「既存のビジネスはニーズが先にある。震災後はやりたいからやってみたら、そこにニーズがついてきた」というのがすごく印象的で。そういう大人は毎日が実験と遊びで楽しそうで。そういう大人が増えていったら、地域全体が楽しいと思います。

選択肢のある、豊かな人生を

峯村これから就職する学生さんにメッセージをお願いできますか?

引地新幹線もあって東京もすぐだから、ぜひ宮城で暮らしの豊かさとか人の温かさにふれていただいて、一緒に楽しい大人になっていけたらと思います。

高山辛いことや人間関係で悩むこともあると思います。だからこそ、面白がる気持ちを持ってほしいです。それこそ、子供が小さかった頃、私が仕事で家を空けてしまう時は代わりにいろいろな大人が出入りしていて。子供に対して申し訳ないと思っていましたが、あとになって聞いてみると子供たちは全然気にしていなかったんです。逆に、「この家でよかった。ママ、めっちゃ楽しそう!」といってくれるので、楽しんでいる大人の存在は、子供や後世の人にいい影響があると思います。

峯村就活の世界に入ると「こうあるべき」というレースに乗ることになります。疑問を持っても流される方が楽で、ネームバリューで企業を選んで、そこそこの年収と称賛が得られてしまう。私は、就活を控えた身として「こうあるべき」じゃない選択肢を選んだ人も称賛される世界であるといいなと思っています。でも、そう考えている結果、常に迷走していて(笑)。でも、迷走した結果、今日ここに来ることができたのでよかったです。

引地(笑)。今日は、みなさんと「はじめまして」で、年代も違うのに、こんなにいろいろなことが分かりあえるなんて!すごく貴重な時間で楽しかったです。

高山生き方は一つじゃない時代になっている中で、女性だけじゃなくて、男性も選択肢はいっぱいあって、「みんな違ってみんないい」ということを改めて感じられてよかったです。

峯村「ロールモデルにたくさん出会うことが豊かな人生を作る」というのをおふたりから感じました。私も10年後、20年後に「こうしてきました」という話ができたらいいなと思います。