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宮城県議会情報公開審査会答申第4号

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年11月9日更新

答申第4号

答   申

第1 審査会の結論

宮城県議会議長が行った公文書の部分開示決定は,妥当である。

 

第2 異議申立てに至る経過

  1.  異議申立人は,宮城県議会の保有する情報の公開に関する条例(平成11年宮城県条例第27号。以下「条例」という。)第4条の規定により,宮城県議会議長(以下「処分庁」という。)に対し,平成27年12月2日付けで「安部孝県議の政務調査(活動)費に関する一切の文書(平成22,23,25,26年度分)」について,開示の請求(以下「本件開示請求」という。)を行った。
  2.  処分庁は,本件開示請求に対する公文書として,平成22年度及び平成23年度の支出報告書,政務調査実績報告書,領収書等添付票,支払証明書並びに平成25年度及び平成26年度の支出報告書,政務活動実績報告書,領収書等添付票,支払証明書を特定したうえで,条例第8条第2号に該当する情報を除いて公文書を開示する公文書部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い,平成27年12月16日,異議申立人に通知した。
  3.  異議申立人は,平成28年2月8日,行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により,本件処分を不服として,処分庁に対し異議申立てを行った。

 

第3 異議申立人の主張要旨

  1. 異議申立ての趣旨
     異議申立ての趣旨は,本件処分の取消しを求めるというものである。
  2. 異議申立ての理由
     異議申立人が,
    異議申立書,意見書及び口頭意見陳述において主張している内容は,おおむね次のとおりである。
異議申立ての理由
(1) 今回非開示となった部分については,条例第8条第2号に規定する非開示情報に該当しない。
 
(1)
 個人識別情報は非開示とされているが,条例第1条に規定する「議会の有するその諸活動を説明する責務が全うされるようにするとともに,県民の議会への理解と県政参加を促進し,もって広く開かれた議会の実現に寄与する」目的からの制約は免れ得ず,個人のプライバシーを侵害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲内にとどまると考えられるものについては,条例第8条第2号ただし書きイ「慣行として公開され,又は公開することが予定されている情報」に該当するものと解釈されるべきである。 
 条例と宮城県情報公開条例(以下「県条例」という。)の,非開示情報を定めた第8条第2号の文言はほぼ同一であり,同様に解釈されなければならない。宮城県においては,県条例の解釈及び運用基準の一つである「会議等に係る食糧費に関する行政文書の開示基準」「知事交際費関係文書の開示に係る取扱い基準」を定め,会議等に係る食糧費の支出及び知事交際費の支出に関して個人識別情報が開示されている。
 宮城県におけるこうした食糧費や知事交際費に関する取扱いは,食糧費は官官接待の温床となり,知事交際費もその使途の不透明性が指摘されてきたことから,使途の透明性や適正性の確保の要請が強いこれらの費目については個人のプライバシーを侵害するおそれがあるとしても,受忍すべき範囲内にとどまると考えられる限り開示することとしたものである。
 政務活動費及び政務調査費(以下「政務活動費等」という。)は,かつての食糧費や知事交際費以上に不正に支出され続けているのであるから,「個人のプライバシーを侵害する恐れがあるとしても,受忍すべき範囲内にとどまると考えられる」ので,「慣行として公開され,又は公開することが予定されている情報」に当たり得ると解釈されるべきである。
 もちろん政務活動費等関係文書であっても個人のプライバシー性の高いものもあり得るが,例えば事務所賃貸料の領収書に個人名が記載されている場合,転貸借などは極めて例外的であるから,通常貸し主は当該不動産の所有者である蓋然性が高く,そして不動産の所有者の氏名,住所は登記簿謄本によって公示されている。したがって,一般的に極めてプライバシー性は低い。
(2) 今回非開示となった部分については,条例第10条による裁量開示がなされるべきである。
 本件で非開示情報とされた箇所には,政務活動費等の不正支出の証拠が記載されており,本件文書を開示することによって政務活動費等の支出が適正であったかどうかをチェックし,もって政務活動費等の使途の適正さを図るという公益と,非開示情報の規定によって保護される利益とを比較衡量すると,前者の方がはるかに勝ることは誰の目にも明らかであり,条例第10条による裁量開示がなされるべきである。

 

第4 処分庁の説明要旨
 処分庁が理由等説明書で主張している本件処分の理由は,おおむね次のとおりである。

処分庁の説明要旨
(1) 今回の開示請求において非開示とした部分は,主として領収書等に記載された個人の氏名,住所,私印の印影及び口座情報である。これらは全て条例第8条第2号に定める「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され,若しくは識別され得るもの」に該当すると判断したものである。
(2) 事務所賃借料の領収書を例に挙げると,その受領者が法人,又は不動産の賃貸を業として行っている個人と判別される場合は開示し,個人であり,かつ,不動産の賃貸を業として行っていると判別できない場合は非開示としている。
(3) 不動産の貸し主は当該不動産の所有者である可能性が高く,不動産所有者の住所,氏名は不動産登記事項であるため公開予定情報に当たるとする指摘があろうかと思うが,次の理由により非開示としたものである。
・条例第3条には「議会の保有する情報を積極的に公開するよう努めなければならない」に続けて,「この場合において,個人に関する情報が十分保護されるよう最大限の配慮をしなければならない」と規定している。これは,個人に関する情報は,一旦公開されると本人に回復しがたい損害を与えることがあるため規定されたものであり,慎重な取扱いをしていること。
・受領者(貸し主)が不動産登記簿上の所有者と一致するとは限らないこと。
・不動産登記簿は,その不動産の所有者を公示するものであって,賃貸借の貸し主を公示するものではないこと。

 

第5 審査会の判断

  1. 条例の基本的な考え方について
     条例は,「地方自治の本旨にのっとり,県民の知る権利を尊重し,宮城県議会の保有する公文書の開示を請求する権利」(条例第1条)を明らかにすることにより,「議会の有するその諸活動を説明する責務が全うされるようにするとともに,県民の議会への理解と県政参加を促進し,もって広く開かれた議会の実現に寄与することを目的」(同条)として制定されたものであり,原則公開の理念の下に解釈・運用されなければならない。
     当審査会は,この原則公開の理念に立って条例を解釈し,インカメラ審理を行った上で,以下判断するものである。
  2. 本件公文書の概要について 
    本件公文書の概要
     本件公文書は,宮城県議会議員である安部孝氏から会派を経由して議長に提出された政務活動費等に関する文書であって,平成22年度及び平成23年度の支出報告書,政務調査実績報告書,領収書等添付票,支払証明書並びに平成25年度及び平成26年度の支出報告書,政務活動実績報告書,領収書等添付票,支払証明書である。そのうち,非開示とされた部分は領収書等添付票のうち次の記載事項である。      
    領収書等添付票
    (1)各種領収書類
     支払先である個人の住所・氏名・私印の印影,法人や企業等の担当者の氏名及び私印の印影,政務活動費等を充当していない物品等の購入に関する情報,議員のクレジットカードに関する情報,量販店のポイントに関する情報
    (2)キャッシュサービス利用明細票
     議員の金融機関口座に関する情報,支出先である個人の氏名及び金融機関口座に関する情報,支出先である法人の金融機関口座に関する情報
    (3)電気・ガス・水道の使用量のお知らせ
     検針員の氏名
    (4)クレジットカード利用明細書
     議員のクレジットカードに関する情報,議員の金融機関口座に関する情報,政務活動費等以外の利用情報
    (5)通帳の取引明細の写し
     政務活動費等以外の利用情報
    (6)携帯電話料金のお知らせ
     公表していない議員の携帯電話番号,議員のクレジットカードに関する情報,ポイントに関する情報
  3. 本件処分の妥当性について 
    本件処分の妥当性
    (1) 条例第8条第2号本文該当性について
     条例第8条第2号本文は,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され,若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識別することはできないが,公開することにより,なお個人の権利利益が害されるおそれがあるもの」を非開示事由として規定している。処分庁は本件公文書のうち,非開示とした事 項については条例第8条第2号に該当するものとしていることから,その妥当性について検討する。
     処分庁が非開示とした部分を審査会で見分したところ,領収書等添付票については,上記2のとおりの情報が記載されており,(2)のうち「支出先である法人の金融機関口座に関する情報」以外は個人に関する情報であって,特定の個人が識別され,若しくは識別され得るものであることから,条例第8条第2号本文に該当する。
     なお,(2)のうち「支出先である法人の金融機関口座に関する情報」は,法人に関する情報であって,公開することにより,当該法人の権利,競争上の地位その他正当な利益が損なわれると認められることから,条例第8条第3号に該当するものである。
    (2) 条例第8条第2号ただし書きイ該当性について
     条例第8条第2号本文においては上記のとおり非開示情報を規定したものであるが,例外として,同号ただし書きイで,「法令の規定により又は慣行として公開され,又は公開することが予定されている情報」については,同号本文に該当する場合であっても,公文書を開示しなければならない旨を規定している。
     「法令の規定により公開され,又は公開することが予定されている情報」とは,法令の規定により何人でも閲覧することができると定められている個人に関する情報が公文書の一部に含まれているときは,その部分については何人でも容易に入手できる情報のことであるから,非開示情報には該当しないとされている。
     また,「慣行として公開され,又は公開することが予定されている情報」とは,一般に公開されている又は公開が予定されている情報のことであり,このような情報はすでに公開されているか,請求時点で公開されていなくても将来の公開が予定されているものであるから,これを公開しても,一般に個人のプライバシーを侵害するものではないし,仮に個人のプライバシーを侵害するおそれがあるとしても,受忍すべき範囲内にとどまると考えられる。
     そこで,本件公文書に係る非開示情報について,同号ただし書きイ該当性について検討する。
     まず,異議申立人は,県では,食糧費及び知事交際費について開示又は原則開示としているところ,県条例と条例では非開示情報を定めた第8条第2号の文言はほぼ同一であることから,県では食糧費及び知事交際費については,領収書に記載された個人情報は「慣行として公開され,又は公開することが予定されている情報」と解釈されていると主張するとともに,政務活動費等においても県と同様の解釈をするべきだと主張する。しかしながら,議会は県の執行機関から独立した組織で情報公開条例も別に定めているほか,食糧費や知事交際費と政務活動費等とではその性格が異なることから,直ちに同一の解釈を用いることはできないし,県が開示しているからといって,それが議会においても慣行になっているということもできない。
     次に,本件公文書に係る非開示情報は上記2(1)から(6)に記載のとおりであるが,異議申立人は,(1)各種領収書類のうち,仙台事務所の賃貸料に関し,「不動産の貸し主は通常当該不動産の所有者であり,不動産登記簿に所有者の住所,氏名の記載があるため極めてプライバシー性は低い」と主張する。しかし,不動産登記簿は所有者を公示するものであって賃貸借の貸主を公示するものではなく,また,賃貸人がすべて所有者に当たるということもできない。したがって,不動産の賃貸人にかかる個人情報は一般に公開されている又は公開が予定されている情報とはいえず,領収書添付票に記載の仙台事務所の賃貸料にかかる支払先の個人の住所,氏名及び私印の印影の情報が同号ただし書きイに該当するとは認められない。
     また,異議申立人は,(1)各種領収書類のうち,政務調査従事費賃金などとして個人に対して支払われた人件費等の領収書についても,具体的な活動内容が記載されていない場合は,たとえ個人名が公開され一般に知られるところとなったとしても,それが不名誉だとか,それによって何らかの不利益を被るなどということは想定しがたいし,仮に何らかの不利益を被るおそれがあるとしても,公金である政務活動費等を受領する以上はその程度の不利益は受忍限度の範囲内と考えるべきであると主張する。しかし,政務活動には多種多様なものがあり,それに従事する者が自己の氏名等の個人情報について公表されることを了承したり,公表されることを前提として従事しているわけではないし,特定の地方議員の政務活動に従事したという事実を明らかにされることは,一般に個人のプライバシーを侵害するものではないとか,受忍すべきものであるともいえないことから,同号ただし書きイに該当するとは認められない。
     上記2(1)から(6)に記載のその他の事項についても,法人や企業の担当者の氏名や印影,議員の政務活動以外の取引情報,金融機関口座情報,クレジットカード情報及び公表されていない携帯電話番号などであり,いずれも同号ただし書きイに該当するとは認められない。
    (3) 条例第10条該当性について
     条例第10条は「議長は,開示請求に係る公文書に非開示情報が記録されている場合であっても,公益上特に必要があると認めるときは,開示請求者に対し,当該公文書を開示することができる」と規定しており,条例第8条に該当し非開示とされる情報であっても,開示されることの利益が非開示とされる利益に優越すると認められる場合があり得ることから,高度な政治判断により裁量的開示を行うことができることを定めたものである。
     「公益上特に必要があると認めるとき」に該当するか否かを判断する場合には,非開示情報の規定によって保護される利益と公益上の必要性とを個別具体的に比較衡量することが必要であり,当該情報が個人情報であるときは,条例第3条第1項後段の趣旨に照らし,個人に関する情報が十分保護されるよう配慮することが必要である。
     これを本件について見ると,異議申立人は現職の県議会議長が政務活動費等を不正に支出した証拠が記載されている可能性があるとし,本件文書を公開し政務活動費等が適正に使用されたかをチェックし政務活動費等の使途の適正さを図るという公益を理由としているが,本件公文書には個人に関する情報が含まれており,不正の疑いがあるというのみでこれを公開して個人情報として保護されるべき権利利益を侵害してまでも優越すべき公益上の理由があるとは認められない。
  4. 結論
     以上から,処分庁が行った本件処分は妥当であると判断したものである。

     

第6 審査会の経過
 当審査会の処理経過は,別紙のとおりである。

別 紙

審査会の処理経過
年 月 日処 理 内 容
H28.2.18○ 諮問を受けた。
H28.4.12
(H28 年度第1回審査会)
○ 事案の審議を行った。
H28.4.28○ 処分庁から理由等説明書を受理した。
H28.5.31○ 異議申立人から意見書を受理した。
H28.6.9
(H28 年度第2回審査会)
○ 事案の審議を行った。
H28.7.11○ 異議申立人から意見書を受理した。
H28.7.29
(H28 年度第3回審査会)
○ 異議申立人による口頭意見陳述を行った。
○ 事案の審議を行った。
H28.10.4
(H28 年度第4回審査会)
○ 事案の審議を行った。

(参 考)

宮城県議会情報公開審査会委員名簿

(五十音順)
氏 名現 職備 考
飯 島  淳 子東北大学大学院法学研究科 教授 
井 上  義比古東北学院大学法学部 教授会 長
木 下   淑 恵東北学院大学法学部 教授 
今 野   敦 之宮城県中小企業団体中央会会長 
翠 川     洋弁護士会長職務代理者

(平成28年11月8日現在)

 

 

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