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【集落情報発信支援員コラム#4】はまぐり堂での浜の暮らし体験レポート(石巻市)

自然との繋がりを実感し、自分の中の“生きる力”と向き合える時間

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石巻市に属する牡鹿半島の付け根あたり、蛤浜で暮らす亀山貴一さん・理子さんご夫妻。「一般社団法人はまのね」として、月1オープンのカフェ「浜の暮らしのはまぐり堂」を営みながら、視察研修も含め、浜の暮らしを体験できるさまざまなプランを提供しています。
7月上旬、県のなりわい課職員の皆さんと共に、一泊一組限定の宿泊施設「高見―takami―」に滞在しながら浜の暮らし体験をしてきましたのでご紹介します!

はまぐり堂のこれまでと現在(いま)、トライ&エラーの数々

 

お昼過ぎにはまぐり堂に集合し、理子さんが用意してくださったおやつと手作りの梅ソーダをいただきながら、貴一さんによるはまぐり堂の誕生秘話や取り組みを紹介していただきました。お話を聞いていて敬服するのは、何でも飾らずに話すその素直さ。自分たちが挑戦して失敗してきたことも赤裸々に話してくれますが、成功していることのメソッドも教えてくれました。

 

その理由には、貴一さんの大事にする考え方の一つ「戦わない」というのがあるのでしょう。同じことをしていても、人や環境、その他掛け合わせるものが変われば、それは“オンリーワン”になる。だから、自分たちがやって良かったことをシェアして、別の人が別の場所でより良くなる実践に繋げてもらえるのならばと、自分たちの経験を惜しみなく話してくれます。まだこの体験プログラムは始まったばかりでしたが、1時間以上たっぷりお話を聞けて、これだけでも体験料を払えるのではないかと思ったくらいでした。同時に、そんな亀山ご夫妻と一緒に過ごすこの後の時間がより一層楽しみになりました。

 

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「はまぐり堂」にて貴一さんのお話を聞く

 

海に出て己を知り、命をいただく時間

 

次は海に出てこの時期獲れるアナゴをはじめとしたカゴ漁に挑戦。貴一さんのご指導の下で操縦の仕組みを知り、カゴの引き上げや獲れたアナゴの神経締めなども経験することができました。日常ではなかなかできないことを楽しむ一方、日常でしてくれている人たちがいるからこそいただける海の恵みだということも実感。初めて漁船に乗るメンバーも多くドキドキしましたが、海の怖さも楽しさも、命をいただく瞬間の感情も、船酔いを通して分かる自分の身体も含め(船酔いする人は酔い止めを飲んでおくことをおすすめします!)貴重な体験でした。

 

この日はシャコも獲れたので、宿泊施設に戻ってからは貴一さんに教わりながらシャコを茹で、殻を剝き、茹でたてのシャコを実食!エビのような触感で、カニのような風味、初めて食べた参加者もうなるような美味しさでした。待っていて出されるのではなく、自分で獲って食べるところまで体験できるからこその格別な味わいです。神経締めをしたアナゴも、貴一さんが捌き方を披露。こちらは夕飯までのお楽しみとなりました。

 

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貴一さんと共に、目の前に広がる海へ

 

「嫌だと言われても一緒です!」亀山夫妻との夕飯タイム

 

すでに体験できたことや感じたものが盛り沢山なところで、一旦1時間ほど自由時間。プチ散歩に出かけたり、お部屋を満喫したりと各々が思いのままに過ごしました。はまぐり堂のお隣にある宿泊施設「高見―takami―」は、亀山さんご夫妻や歴代のはまぐり堂スタッフ、そして震災をきっかけに訪れたボランティアやプロの方などさまざまな人たちの手が加わりながら創られています。古民家のようなぬくもりがありながら、素敵なアンティークとモダンなアートによって、洗練された癒しの空間(これは写真ではなくぜひ体験していただきたい)となっています。

 

しばらくすると、亀山ご夫妻が、理子さんが用意してくださったご馳走の数々と共にやってきました。新鮮なお刺身をはじめ、先程のアナゴも白焼きになり、その他地元の旬の食材を使ったおかずたちや可愛い塩むすびも食卓に並びました。理子さんが大事にしているのは「田舎のハイカラなおばあさんが作るような家庭料理」と聞いていましたが、お箸が止まらない程のごちそうをいただきながら、それが腹にストンと落ちました。「ここでの体験は、嫌だと言われても、我々と一緒に夕食を食べてもらいます(笑)!」というお二人。いやいやこの時間こそが、浜の暮らしをさらに深掘りできる、そしてお二人との会話を通じて自分自身も見つめることができる、もっとも“美味しい”時間かもしれません。

 

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美味しい手料理と楽しい会話に、箸もトークも止まりません

 

沢の再生から学ぶ、自然と人間の距離感

 

楽しい夜を過ごした後は、各部屋で就寝。眠りにつく時の、自然の中だからこそ感じられる静寂も、明け方自然と起こしてくれる鳥たちの囀りも体験の一つです。そして、朝食前に早朝から亀山ご夫妻と歩いてすぐの森の中へ。自然災害や人為的な工事によってバランスを崩し、土砂が詰まりやすくなって水の流れが悪くなってしまった沢の再生活動に参加しました。手作業でできることは限られていますが、石を動かしてあげるだけでも水が流れやすくなり、小一時間みんなで手を加えたことで、何メートルも先まで水を流すことができました。

 

かつて日本の里山は、人が手を加えることで、いわゆる昨今流行りの“ネイチャーポジティブ”を守ってきたのだという貴一さん。便利な世の中になり、効率の悪いことをやらずに取りこぼしていったことが、地域の課題にも結び付いていくようになっていると言います。今日流せた山からの水が、目の前の海に流れ出て豊かな海を守ることにも繋がります。こうして日常の中でもできることから少しずつ自然のお手伝いをすること、自然と人間とが良い距離感で支え合うこと、そうすることで私たち人間は自然から大いなる恵みをいただけていることを考えさせられました。

 

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手で石を動かすだけで、水が自ら流れの道を形成してくれる

 

振り返ることで自然と成長する、これからの日常

 

ひと汗かいたところで、バランスの良い朝食をいただき、しばらく地元のコーヒーを味わいながらまた自由時間を過ごしました。体験時間と自由時間が交互にあることで、自ずと自分の中でも体験の余韻に浸りつつ整理されていきます。10時にチェックアウトではまぐり堂へ移動、最後に一人一人感想を述べながら、亀山夫妻と振り返りの時間を過ごしました。各々が感想と共に述べたのが「見え方が変わった」「明日からこうしていきたい」ということばたち。最後にこうして表現することで、明日からより良い日常を過ごせるよう自然と背中を押されているようにも思いました。

 

亀山ご夫妻が日々大事にしている「想いを伝える」「手間暇かけて丁寧に人との繋がりや暮らし、文化を守る」「自然と共生しながらわくわくする」「生きる力、レジリエンスを育む」などのエッセンスは、体験を通して私たちの心身にもすうっと馴染むように入ってきて、一時的な幸福のためではなく、長期的な幸福のために生きよう、過ごそうと思わせてくれる滞在となりました。ぜひ、たくさんの方に体験していただきたい!浜の暮らし体験から自然や豊かさとは何かを見つめたい方、このお二人に会いに行きたいという方、ぜひはまぐり堂さんのHP(外部サイトへリンク)からお問い合わせください。

 

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振り返り時間も和やかな空気を醸し出す亀山ご夫妻

 

執筆者:宮城県農山漁村集落情報発信支援員-大場黎亜

 

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