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平成15年度包括外部監査結果及び意見の概要

印刷用ページを表示する 掲載日:2012年9月10日更新

「県立大学に係る財務に関する事務の執行及び事業の管理について」

第1 外部監査の概要

 1 外部監査の種類

 地方自治法第252条の32第1項の規定に基づく外部監査

 2 選定した特定の事件(監査テーマ)

 (1)外部監査の対象

 県立大学に係る財務に関する事務の執行及び事業の管理について
 監査対象部局は次のとおりである。

  • 総務部県立大学室
  • 宮城大学
  • 宮城県農業短期大学(以下、単に「農業短大」という。)

 (2)監査対象期間

 原則として平成14年度(平成14年4月1日から平成15年3月31日まで)。ただし、必要に応じて監査時点及び過年度についても監査対象とした。

 3 特定の事件(監査テーマ)を選定した理由

 宮城県は宮城大学農業短大、農業短大宮城大学の2つの県立大学(以下、総称して単に、「県立大学」という。)を有し、それぞれの分野における県民の要請に応えるため、その充実強化に努めている。
 しかし、少子化の時代を迎えて、国公立大学及び私立大学の大学間の競争は一層厳しくなると予想され、公立大学のあり方そのものが検討されようとしている。
 国立大学については、平成16年4月より国立大学法人へ移行することが決定しており、公立大学に おいても、各自治体の判断に基づき地方独立行政法人へ移行することが可能となり、公立大学の法人化に向けての動きも出始めている。
 県立大学を取り巻くこのような環境を考慮し、大学事業の財務事務の合規性を確かめるほか、管理運営事務が地方自治法第2条第14項及び第15項の趣旨を達成しているかについて監査を行うこ とは、県立大学の法人化の対応等を含めて、今後の大学事業の運営に有益であると判断した。

 4 外部監査の方法

 監査の要点  

 県立大学に係る財務に関する事務の執行及び事業の管理の法令等への合規性、経済性・効率性 及び有効性の観点から以下の項目について特に留意して監査を実施することとした。

  • 公有財産の管理は適切に行われているか
  • 物品の管理は適切に行われているか
  • 図書の管理は適切に行われているか
  • 支出に関する契約事務は法令等に準拠しているか
  • 補助金の交付手続は法令等に準拠しているか
  • 学費等の入金管理は適切に行われているか
  • 受託研究費の管理は適切に行われているか
  • 科学研究費補助金等の管理は適切に行われているか

 5 外部監査の実施期間

 平成15年7月11日から平成16年3月17日まで

第2 監査対象の概要

 平成14年度の一般財源負担は宮城大学約15億円、農業短大約6億円の合計約21億円である。この傾向は、最近3年間でも大きな変化はない。

第3 外部監査の結果

 1 宮城大学研究補助金

 (1)補助金額の算出方法について

 補助金交付決定額の傾向を考慮すると、補助金交付先である教員から申請される「宮城大学研究補助金交付申請書」自体が形骸化していると認められ、補助金交付決定額が「個々の教員の目指す学術研究に要する必要研究費に基づいて算出されている」とは考えられない。
 宮城大学研究補助金交付要綱(以下、「要綱」という。)第1によれば、「大学に所属する教員が行う学術研究(共同研究を含む。)に要する経費」について補助金交付の対象としており、教員の職種による定額割当に準じた補助金交付決定状況は要綱の趣旨に反しており、本旨に従った補助金交付を行うべきである。

 (2)補助金の執行について

 宮城大学研究補助金は各教員に一括交付されるものであり、その管理責任及び研究成果の報告等の義務は、各教員が負うものであるが、宮城大学は、是正措置命令(補助金等交付規則第14条第1項)や立入検査(同規則第22条第1項)の権限があり、補助金に係る予算の執行の適正性を確保する監督責任が求められている。
 平成14年度宮城大学研究補助金について、補助金の経理管理が適切に行われているかどうかを検討した。その結果、次のような問題が発見された。

 a 補助金の資金管理

 宮城大学研究補助金では、補助金に係る予算の執行に関する公私の区分を明確にするため、補助金専用口座(教員個人名義)を開設し、教員からの請求に基づき当該口座へ概算払いを行い、当該口座で資金管理が行われている。
 しかし、概算払い後まもなく補助金の全額が当該口座より引出され、結果として、教員が記録している収支簿(証拠書類に基づく記録簿)と補助金専用口座の出金記録が著しく乖離しているものがあった。このなかには、補助対象経費の支出が、教員の個人口座から行われているものが数件あった。
 このような不明朗な預金管理は公金の管理として不適切であり、研究費の支出(小口払い経費を除く)は補助金専用口座より直接、振込により支出することが適当である。

 b 年度末の備品購入

 宮城大学研究補助金の設備備品費の執行状況をみると、年度末の3月に備品購入しているものが多く見られた。当該補助金については、4月中に研究実績報告を提出しなければならず、「学術研究に要する経費」として3月に備品購入しているのは、翌年度にも同じ研究テーマが続くことがあるとしても、単年度予算の原則の観点からは妥当とはいえない。
 また、これらの備品のうち一部については、業者からの請求書、領収書の日付が空欄のものや、備品台帳への登録処理が遅れているものが発見されたが、財務規則に照らして不適当である。

 c 謝金に係る源泉徴収

 外部講師やデータ整理等の作業手伝いに係る謝金が支払われているが、所得税法の規定に基づく源泉徴収が行われていない支出が発見された。これらの支出に係る源泉徴収義務者は支出した教員となるので、宮城大学は各担当教員が適切に源泉徴収を行うよう指導する必要がある。

 d 謝金に係る出勤表の整備

 同一者に対し継続的に謝金を支出しているにもかかわらず、出勤表が整備されていないものが発見された。これらの支出については、出勤表がないため所定の基準により謝金を支出しているか客観的に確かめられず、補助金の執行手続として適当ではない。

 e 備品の寄附漏れ

 補助金により備品を購入したときは、直ちにそれを県に寄附しなければならない(要綱第8)が、需用費として処理された支出のなかに、備品(その耐用年数が1年以上の物品であり、1件2万円以上のもの)に該当するものが含まれていた。補助対象経費の区分誤りであるが、結果的に県(大学)に寄附が漏れていたことになる。

 f 変更申請を要する経費の支出

 平成14年度において、補助金交付申請書に記載されていない経費で、補助対象経費として処理されているものが発見された。
 しかし、当該支出は単純な経費の支出ではなく、教員の勤務時間の変更を伴う可能性があり、支出額が少額であることのみを理由に、計画変更の承認申請は不要と扱うのは妥当ではないと考えられる。もとより、当該教員は平成14年4月1日付で補助金交付申請しており、その時点で当該授業料を支出することを把握できたはずであり、当初の補助金交付申請書に予定を記載していないこと自体問題である。

 2 科学研究費補助金の管理体制

 平成14年度に宮城大学で受け入れた科学研究費について補助金の経理管理が適切に行われているかどうかを検討した。その結果、次のような問題があった。

 a 国内旅費の算定誤り

 宿泊料の算定に当たり、宿泊地が乙地であるにもかかわらず、甲地で計算されていたため、3,700円過大支給となっている。

 b 備品の寄附漏れ

 科学研究費により、設備備品等を購入した場合には、直ちに研究者は所属する研究機関に寄附しなければならないが、サンプルで検討した科学研究費で購入された備品(パソコンなど557,865円)は寄附が行われていなかった。なお、検討対象外の他の2件の備品についても同様とのことであり、平成14年度の科学研究費から購入した備品は全て大学に寄附が漏れていたことになる。
 また、収支簿では「消耗品費」で処理されているが、本来「設備備品費」で処理すべき備品(プリンタなど68,565円)も大学への寄附処理が行われていなかった。

 c 謝金に係る出勤表の不備

 一部の出勤表(特定の人の2ヶ月分60,000円)に従事者確認印がないにもかかわらず、研究代表者が確認し、支出している謝金があった。

 以上記載した問題は、宮城大学での科学研究費が、文部科学省の要請する原則である管理実務を大学事務局が行っていないことに起因すると考える。また、平成15年度の「科学研究費補助金の取扱いについて」(平成15年5月23日付け 15文科振第92号)によると研究費及び関係書類の管理を所属研究機関に例外なくすべて委任することに変更されているが、宮城大学では未だこの体制は取られておらず、研究者に対する年度中の管理指導の計画も平成15年12月現在行われていない。
 このように宮城大学の科学研究費の管理実務は、文部科学省が求めているような大学事務局に委任すべきである。

 3 受託研究

 受託研究に係る手続フローに従い関連書類を閲覧したところ、契約書原本が保管されていないもの、受託研究実施要綱により作成義務のある受託研究実施計画書が保管されていないものがそれぞれ1件(いずれも看護学部)あった。
 整備保管すべき書類が規則どおり保管されておらず、研究機関としての大学としては厳に規則等を遵守すべきである。

 4 借上宿舎に係る公費負担

 宮城大学では、教員宿舎の他、平成14年度まで民間の賃貸マンション等を借上げる借上宿舎があった。借上宿舎は、大学開学時における教員採用のため、政策判断のもとに制度化されたものであるが、平成14年度末までに全て廃止された。この借上宿舎について、賃借料14,158千円、共益費942千円の公費負担が行われていた。

 (1)賃借料の公費負担

 賃借料の公費負担が生じるのは、入居者より徴収する借上宿舎の貸付料を、借上宿舎の賃借料に連動させず、「県職員宿舎規則及び県職員宿舎規則の施行について(依命通達)」に定める貸付料(宮城大学借上宿舎の場合、単身入居者が多いため、通常289円/平方メートルで計算される)をもとに計算していることによるものである。
 しかし、同依命通達によれば、貸付料については、「宿舎の設置並びに維持及び管理に要する基本的費用を原則として回収する建前の下に」(同依命通達8.(1))算定するものと規定している。借上宿舎についても同規則に定める貸付料を適用しているが、県職員宿舎規則ではそもそも想定しない事例であることから、県立大学として借上宿舎に係る公費負担を現行の県の関連例規に求めるのは適当ではない。

 (2)共益費の公費負担

 宮城大学によれば、「共益費等の管理費は賃貸借契約において契約者が家賃と一緒に支払う費用であることから、契約の当事者である宮城県が負担すると解釈するのが自然である」とのことである。
 しかし、借上宿舎の共益費は入居者が負担すべきと考える。ここにおいても、県立大学として借上宿舎に係る公費負担を現行の県の関連例規に求めるのは適当ではない。

 5 兼務報酬の支給

 宮城大学と農業短大の間で、常勤教員が非常勤教員を兼職した場合のその非常勤教員としての勤務に係る報酬(兼務報酬)について、「県立大学の教員に対する内部謝金等の取扱いについて(通知)」(平成10年10月23日付け人事課長通知)により、外部の非常勤講師と同様の基準で支給している。
 教育公務員特例法の適用を受ける教員といえども常勤の職員であるため、兼務報酬の支給については、納税者の疑問が生じないよう配慮することが適当である。

 6 契約方法の見直し

 農業短大では、校舎等清掃業務が地方自治法施行令第167条第3号(一般競争入札に付することが不利と認められるとき)に該当するとして指名競争入札としている。しかし、当該業務に係る仕様書を見る限り、宮城大学と農業短大の業務内容に大きな相違はなく、農業短大における校舎等清掃業務について「一般競争入札に付することが不利」であるとは認め難い。したがって、農業短大において校舎等清掃業務を指名競争入札としているのは不適当であり、宮城大学と同様、一般競争入札によるべきである。

 7 委託料の積算の見直し

 農業短大では附属農場の管理及び学習実習指導補助業務について、社団法人宮城県農業公社(以下、「農業公社」という。)へ随意契約により業務委託している(平成14年度委託料 15,067,500円)。
 当該委託料に係る設計書によれば、当該業務の所要人員1.8名に1人当たり平均人件費を乗じて積算しているが、平均人件費は平成10年度に農業公社から徴収した見積書を基礎としている。当該業務委託契約は年度ごとの単年度契約であり、毎年度、合理的に委託料を積算する必要がある。

 8 公有財産の管理

 (1)土地地番等の整理

 公有財産規則に従い合筆又は地積訂正の手続を要する土地があった。同規則に従った処理をしないのは、変更登記費用を節約するためであるが、同規則に従い変更登記手続を行う、もしくは、必要性・経済性を勘案した規則の具体的適用について県全体として指針を定める必要がある。

 (2)公有財産台帳に記載する取得価格

 宮城大学教職員宿舎の建物・土地は、住宅供給公社から取得しており、取得代金は15年分割元利均等返済となっている。公有財産台帳価格は、元金1,716百万円と利息支払総額358百万円の合計額2,074百万円で記載されている。
 公有財産台帳へ記載する取得価格の定義について、公有財産規則第60条で「公有財産台帳に記載すべき価格は、買入れに係るものは買入価格」とある。利息額358百万円は宿舎取得資金の調達コストであるため、公有財産台帳取得価格に含めるべきではない。

 (3)設備更新工事の公有財産台帳記載

 宮城大学において平成13年度にネットワーク設備更新工事が行われ、旧設備が撤去されたが、撤去された財産の価格が公有財産台帳上減額されていない。開学当時に取得した建物建築見積書等から旧ネットワーク設備の公有財産台帳価格を算出し、公有財産台帳の建物価格を減額する必要がある。
 また、新設備の公有財産台帳は発注した工事金額で記載されているが、この工事には旧設備の撤去作業が含まれており、新設備の台帳記載価格には撤去工事代が含まれている。撤去費用は公有財産の価格ではないため、公有財産台帳価格から減額する必要がある。

 (4)行政財産と普通財産の区分

 農業短大の台帳上行政財産に分類されている土地の上に、行政財産に分類されている建物(学生寮)と普通財産に分類されている建物(職員宿舎)が存在している。
 職員宿舎の敷地は本来普通財産として公有財産台帳に記載するものを、取得時には職員宿舎の面積が不明であったため、行政財産と一元的に管理していたものであるが、普通財産として公有財産台帳に記載し管理する必要がある。

 9 物品管理

 (1)物品管理帳簿の整備、及び正確な照合確認の実施

 物品管理帳簿の整備及び現物との照合確認に不備な点があった。物品の保全、保有物品の現況の的確な把握・有効的利用のため、財務規則に従い、帳簿記録を整備し、帳簿と物品現物の照合可能性を確保し、毎年度末の照合確認実施を徹底する必要がある。

 (2)リース物品の管理

 リース物品の保全管理を徹底するため、物品の内容、数量、所在等を記載した管理台帳を作成し、管理台帳と現物を定期的に照合する必要がある。なお、現状ではリース物品の管理規程がないため、県全体としてリース物品の管理規程を整備する必要がある。

包括外部監査の結果報告書に添えて提出する意見の概要

教育研究機能の発揮と県民への説明責任

 1 公立大学を取り巻く環境

 公立大学を取り巻く環境は、少子化、大学制度の変化、地方分権の推進、地方財政の悪化と行財政改革、大学内部の改革の必要性などをキーワードとして大きく変化しており、県立大学はこのような環境の変化に対応していくことが求められている。

 2 県立大学に係る財政負担

 (1)県立大学と他大学との事業収支比較

 宮城大学は専任教員や職員が少ないことが原因で、国公立大学の平均値と乖離している傾向にある。専任教員や職員が少ないということは効率的な大学運営をしているという側面もあるが、この現状で大学の本来の目的である教育・研究機能を十分に果たすことができているのかを自問してみる必要がある。宮城大学の大学の完成及び大学院の完成が共に延伸され文部科学省の監督下に置かれた原因の一つが現在の専任教員が少ないことなどによる体制の不備とも考えられる。
 一方、農業短大は、規模が小さいにもかかわらず、独自で本部機能までもって運営していることが原因で、国公立短期大学の平均値と乖離している傾向にある。農業短大は平成17年4月より宮城大学食産業学部(仮称)として4年制大学に移行することが基本的に決まっている。設置場所が現在の農業短大内であるため宮城大学との統合で単純に重複する本部事務局機能がすべてなくなるとは思われないが、統合による効率化には十分努力する必要がある。

 (2)県立大学の業務実施コスト試算

 県立大学の業務実施コストは、宮城大学1,857百万円、農業短大604百万円、2大学で2,461百万円と試算された。
 業務実施コストに相当する学生1人当たり財政負担額は、宮城大学で私立大学(医科歯科を除く)に対し1,313千円、農業短大は私立短期大学に対し1,672千円多い結果となっている。また、県立大学と私立大学(除く医科歯科)の学生納付金の差異を考慮した財政負担額でみても学生1人当たり宮城大学で819千円、農業短大で993千円多く大学運営に対する相当な財政負担をしていることが分かる。
 このように多額の財政負担がある県立大学は、そのコスト(財政負担)に見合った教育・研究成果、地域貢献が求められるのは当然といえよう。

 3 県立大学の今後の課題

 (1)平成14年度に実施された宮城大学外部評価委員会による宮城大学の外部評価

 宮城大学外部評価委員会による「宮城大学外部評価報告書」(平成15年3月)」によれば、残念ながら宮城大学は多くの問題点を抱え深刻な状況にあるとの結論になっている。
 この外部評価の詳細は、当該「宮城大学外部評価報告書」を参照されたいが、総合評価点で「十分満足できる」とするAの評価点が一つもなく、宮城大学は全てにわたって改革改善が求められていると結論付けられている。 この外部評価に対し、宮城大学では、宮城大学がもっている可能性なり能力なり実績について、十分に認識してもらえなかったという思いが学内には残っているものの、外部評価の指摘は概ね妥当であり、また有益な指摘も多いので、これをできるだけ宮城大学の改善・改革に活かすべきであると前向きに認識し、新学長のリーダーシップのもと平成15年12月に「宮城大学の改革-外部評価報告への対応-」(宮城大学評価委員会)を取りまとめている。

 (2)教育研究機能を発揮するための検討課題

 a 教育・研究

 教育・研究機能は、大学の主要な機能として最も重要なものである。前述した外部評価報告書で はその教育についての評価が、あまりにも問題が多い(カリキュラム、専任教員の確保、教員の意欲など)と総括されている。また、研究活動についても「建学の理念がいくら『高度な実学』といっても、高度な専門性と実践能力を身につけさせることができる基盤は、しっかりとした研究成果に基づく必要があり、文部科学省の科学研究費など外部研究費導入に努力しているという形跡はあまりみられない」と結論している。
 実際、科学研究費の申請件数さえ教員6人に1人しか行っていない状況であり、このような現状を改革するためには、教員の業績評価に基づく適正な処遇が不可欠である。
 更に、実学重視の観点から民間等からの教員が多くなっているが、現在教員任期制はとられていない。しかし、実務から離れ3年も経過すると変化の激しい現代社会において最新の真の実学を教えることができるかは疑問である。真の実学を教えるためには最新の実務に携わっているものを定期的に教員として採用する必要があり、一方、これらの教員も実務界に戻り、教育・研究の経験を生かして社会貢献するという循環システムが望ましい。

 b 社会貢献

 社会貢献は大学特に公立大学の存在意義の重要な部分を占めると考えられる。地域・住民ニーズを把握し、明確な目標と計画のもと社会貢献の諸活動を実施し、更にその成果を的確に把握し、情報公開・提供によって社会に還元していくというシステム化が必要になってくる。具体的には、学生を教育し優秀な人材を社会に輩出していくことが一義的な社会貢献であるが、そのほか

  • 教員の兼業・兼職などによる社会貢献
  • 産学連携による知的財産権の創設
  • 学内施設の開放

 なども含めた積極的な社会貢献を実施していくべきである。

 c 管理・運営

 トップマネジメントを補佐し、大学の管理・運営の実務を行う事務職員は、宮城県の一般行政組織の定期的な人事異動に組み込まれ、その勤続年数はせいぜい3~4年程度である。したがって、大学事業の特殊性になじんだ頃には人事異動というのが実状であり、教授陣への管理・牽制機能が不十分になるだけでなく、大学事務の専門性を持った人材の輩出は期待しにくい。大学事務の専門家を養成する観点から、事務職員の採用及び配属期間に関し、制度的な見直しが必要である。

 d 財務事務

 現行の県立大学の会計は、現金収支のみを対象とする現金主義会計を採用し、単年度予算主義のもと予算執行の結果として歳入・歳出決算書を作成する官庁会計であり、しかも一般会計の中に組み込まれている。その結果、宮城県の財務規則等による単年度予算主義や受託研究を補正予算で対応せざるをえないなどの予算執行への制約もある。
 県立大学の役割を考えると、適切な計画が策定されるという前提で、予算単年度主義に伴う壁を乗り越えて、弾力的な予算執行により中長期的視野に立った教育研究機能の発揮、社会貢献が求められる。

 e 情報公開

 県民は、県立大学が建学の理念に即した教育研究機能の成果を十分に発揮しているのかはもちろんであるが、県が大学に負託した経済資源がその成果に見合って有効に活用されているのかにも強い関心をもっており、県立大学は県民に対しこの面でも説明責任を負っている。すなわち、県立大学は単に単年度の現金収支のみを報告するだけでなく、必要に応じて複式簿記的手法も考慮するなどし、大学の財政状態や運営状況を明らかにするとともに、大学業務の運営にあたり県民の真の財政負担(業務運営に関するコストの一元的集約情報)を適切に示す必要がある。

 (3)県民への説明責任

 「宮城大学外部評価報告書」(平成15年3月)では、宮城大学には多くの問題を抱え、全てにわたって改革改善が求められる現状を踏まえ、学生の期待に応え、県民の負託に責任を持つにはどうするか検討した結果、「地方独立行政法人化も視野に入れた大学事務事業の抜本的改革の早急な検討を行う。」ことを提言の一つとして掲げている。
 この提言に対して、宮城大学は、新学部の設置や外部評価で指摘された問題に対する諸改革を設置者(県)の協力を得て進める段階であり、自己責任による運営を目指す段階には至っていないと自己分析している。
 公立大学の法人化の議論は、大学自体がその本来機能である教育研究機能を充分に発揮することを真剣に検討すれば、学内より当然に要請されるものであり、宮城大学においても、早期にその段階に達するよう諸改革の具体的な工程表を作成し、その実施状況を県民に明確に説明していく必要がある。

県立大学に係る財務事務及び事業の管理の適正化

 1 補助金制度に生ずる利益相反

 宮城大学研究補助金の対象者は宮城大学に所属する教員個人であり、宮城大学自体への補助金交付ではないにもかかわらず、 当該補助金の対象者のみで構成される会議体(各学部予算委員会)にて一般研究費の配分審査が行われるのは、補助金制度として一種の利益相反の関係にある。
 補助金制度に生ずる利益相反とは、「教員の個人的利益」と「大学事業費の予算配分における責任」の衝突を意味する。宮城県には様々な補助金制度が整備されているが、補助金の配分審査の場に補助金の対象者が加わることは異例であり、メンバーに第三者(事務局職員等)を加えるなど、配分審査のあり方についての検討が必要である。

 2 科学研究費における旅費の取扱いの統一化

 宮城大学と農業短大で旅費の支給に関する取扱いが異なっているが、両校は共に県の地方機関であるので、旅費の取扱いに関する運用を統一化する必要があるのではないかと考える。

 3 宮城大学教員宿舎の取得費用と有効利用

 宮城大学教員宿舎は、平成9年3月に宮城県が宮城県住宅供給公社より総額2,074,244千円(うち建物分994,401千円)で取得したものである。宮城大学教員宿舎の設置戸数は30戸であるため、1戸当たり事業費は69,141千円(うち建物分33,146千円)となる。
 宿舎の取得費用のうち、建物に係る償却額を月額一戸当たりで計算すると、
   建物取得費(利息分を控除)823,657千円
      ÷50年(耐用年数)÷12ヶ月÷設置戸数30戸=45,759円
となり、貸付料(月額約27,200円~34,000円)により建設費の償却額すら回収できない高額な取得費用であり、経済的合理性に乏しいといえる。
 その一方、宮城大学教員宿舎の入居率は県全体と比較しても低くなっており、設置目的を充分達成するためにも教員宿舎の入居率を向上させる必要がある。

 4 債務負担行為の設定

 宮城大学教員宿舎は、宮城県住宅供給公社が土地及び施設を先行取得し、平成9年3月に県が同公社より取得したものであるが、これに関連し、県は平成7年度に「県立大学教員宿舎建設等資金償還」として2,922,500千円を限度額とする債務負担行為を設定している。同公社との契約書によれば、建設代金総額2,074,244千円は元利均等で15年分割支払となっており、平成14年度においても支払条件どおり136,678千円(うち利息相当額29,905千円)を「公有財産購入費」として支出している。
 県立大学室によれば、「宮城大学教員宿舎建設に係る工事代金支払条件については、一般の職員宿舎建設に係る起債が認められないことから、県は分割支払による同公社からの買い戻し事業としたものである。当該事業を進めるに当たっては、総務省等関係機関と協議のうえ債務負担行為を設定し、総務省自治財政局所管の地方公共団体財政状況調査(決算統計)にも「公債費に準ずる債務負担行為」としてその詳細は報告されている」とのことである。
 旧自治省財政局長から各都道府県知事宛てに示された「債務負担行為の運用について」(昭和47年9月30日付け 自治導第139号)の趣旨に鑑みれば、今後の債務負担行為の設定についても、県財政運営の健全性確保の見地から慎重な取扱いに留意されたい。

 5 競争入札の活性化

 宮城大学の施設管理業務に係る業務委託契約のうち、平成12年度から平成14年度までの3年間、受託業者が同一でかつ落札率が95%以上の契約があった。これらの業務委託契約について、指名競争入札が行われているものの、競争不十分であったと考えられるので、入札方法について再考願いたい。

 6 備品の購入時期

 平成14年度の宮城大学における備品購入費について、年度執行額に対するの3月執行の比率(3月執行比率)が農業短大と比較して高くなっている。効率的な予算執行の観点から、宮城大学においては、備品購入の時期について見直しを検討することが望まれる。

 7 公有財産の管理

 (1)建物附属設備の建物との分離、及び価格改定の実施の必要性

 公有財産台帳が公有財産の現在価値を表すためには、「建物附属設備」について、その公有財産台帳の価格を建物本体価格から分離し、適切な耐用年数を設定し、価格改定を実施することが必要であり、県全体として検討願いたい。

 (2)教員・職員宿舎における附属建物等の貸付料徴収

 宿舎の貸付料の対象となる貸与家屋の延べ面積には、物置等の面積は含まれておらず、貸付料は徴収されていない。物置等についても、県有財産を各入居者が借り受けていると捉えるのが妥当であり、これについても貸付料の計算対象面積に含めることを、県全体として再考願いたい。

 8 物品管理

 (1)物品所在場所の管理

 物品の現況把握、及び正確かつ効率的な照合確認のためには、物品所在場所の移動状況の把握が重要であり、物品管理システムや「供用場所」間の移動管理の改善が必要である。

 (2)照合確認実施体制の整備

 膨大な件数を正確かつ効率的に照合するためには、照合確認実施のためのマニュアルを作成し、実施スケジュールを計画し、大学全学で取り組むべき事業として位置づけ組織的に照合確認を実施する必要がある。また、実在性をより客観的に検証するためには、照合確認は物品の使用者以外が実施する、もしくは物品使用者と物品使用者以外の者2名で実施することが必要である。

 (3)物品として要求される管理の対象・範囲

 取得価格が2万円以上の備品の件数は膨大であり、財務規則が要求する管理を全うするには多大な労力が必要である。より実効性・実現可能性の高い物品管理を行うためには、備品として管理すべきものの金額基準や循環棚卸の導入について県全体として検討願いたい。

 9 入学者選抜手数料の徴収事務

 県外からの出願者に係る入学者選抜手数料は、宮城県の発行する収入証紙ではなく、例外的に郵便小為替により納入されるが、事務局で複雑で手間のかかる処理となっている。
 このような場合の入学者選抜手数料は郵便振替等とし、入金確認のため願書に振込票を貼付けて出願してもらい、入学者選抜手数料徴収事務を効率化・簡略化することが望まれ、関係課と協議し、この徴収方法の導入を検討願いたい。

 10 学生寮に係る経費負担の処理

 農業短大学生寮に係る経費(寮費、水道光熱費、食材費、賄費)の負担者、事務処理の方法が異なる。県の歳入として処理されていないものがあり、総計予算主義の原則(地方自治法第210条)の観点から疑問が残る。
 経費の一部を県が負担する場合、総計予算主義の原則からすれば、一度県の歳入に計上し、寮自治会運営に対して一部助成するというやり方もあるのではなかろうか。