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平成13年度包括外部監査結果及び意見の概要

印刷用ページを表示する 掲載日:2012年9月10日更新

「企業局が実施する水道用水供給事業について」

1.事件を選定した理由

 宮城県企業局が実施する4つの事業のうち、水道用水供給事業は「借入資本金」いわゆる借金が平成13年3月31日現在1,899億円と、他3つの事業会計に比べて圧倒的に大きい。また、県は水道事業に対して、地方公営企業法第17条の3に基づく補助金や、同法第18条に基づく出資金等を通じて年間約37億円もの県費を投じており、県財政上の係わりは非常に大きなものがある。 この水道事業の決算書の分析を行って財政状態・経営成績を把握し、現在の会計上、制度上の問題点を明らかにし、もって将来の在り方を考えてみることが、水道事業の経営安定化と県の歳出合理化に資するものと考えて選定した。

2.県水道用水供給事業をめぐる諸問題

 1 建設仮勘定について

 平成12年度の公表貸借対照表において、総資産(3,032億円)の約3分の1を占める1,014億円もの巨額の建設仮勘定が計上されている。これは、「稼働率」の考え方を適用し、建設費のうち稼働率を乗じた金額(=稼動資産)の残額を未稼動資産と捉えて建設仮勘定に計上し、未稼動資産に対応する支払利息部分についても建設仮勘定に追加計上する、という会計処理を行ってきた結果であり、本来ならば、本勘定へ振り替えた後に減価償却の実施が必要であった建設費部分と、未稼動資産に対応するものとして追加計上してきた支払利息部分とが、建設仮勘定の中に含まれていることが原因である。
 稼働率を適用せず、本来あるべき会計処理を行った場合を調査した結果、平成12年度末までに費用処理されているべき金額が716億円あることが判明した。すなわち、建設仮勘定を含む固定資産全体の中に、716億円もの巨額の不良資産が隠れているという実態を指摘することができる。
 また、本来あるべき減価償却費から年度別の減価償却不足額を集計するとともに、工事完了後に資産に追加計上してきた支払利息を把握し、これらを加味して、本来あるべき実態の損益計算書における当年度純損益を計算したところ、仙南・仙塩広域水道事業において実態は公表値と大きくかけ離れており、平成7年度以降、実質的には30億円前後から50億円前後の大幅な赤字経営であったと推測される結果になった。

 2 稼働率について

  「料金算定に係る基本的考え方」(内部文書)において、稼働率=給水能力/計画給水量と定義付けられている。しかしながら、本来の稼働率とは、現実に有している供給能力に対して、実際に使用されている能力の割合のことである。これに対し企業局では、未着工または今後着工の見込みの立っていない計画給水量を、稼働率算出時の分母に算入している。これは現有の供給能力ではないので、算式自体が合理性を欠くものと言わざるを得ない。
 このことに加え、実際の稼働率の算出過程においては、前回料金改定時の稼働率を政策的にそのまま使用している部分もあり、適用している稼働率は本来のものからかけ離れたものとなっている。

 3 水道料金算定方法について

 「料金算定に係る基本的考え方」には(1)統一料金制,(2)責任水量制,(3)二部料金制(基本料金+使用料金)という3点が掲げられている。
 また「料金の算出方法について」(内部文書)によれば、基本料金=固定的経費/料金算定期間内最終水量、使用料金=変動的経費/料金算定期間内給水量とされている。固定的経費と変動的経費は「料金で回収する経費」を一定の基準で分けたものであり、この「料金で回収する経費」とは、総費用(減価償却費,稼動資産に係る支払利息を含む)から一般会計繰出金と減価償却費を控除して、稼動資産に係る企業債元金償還金と資金不足が生じないための留保すべき資金を加算したものと規定されている。
 減価償却費を控除するのは、損益ベースで算定するとかなりの高料金になるので、資金不足が生じない範囲で料金を引き下げることのできる「資金ベースによる算定」の考え方が採られているためである。したがって、稼働率を引き上げることにより、減価償却費が増加したとしても料金算定への影響はないことになる。むしろ、稼働率を引き上げた結果、稼動分に係る元金償還金が増加し、料金算定上資金ベースによる加算が行われること、及び稼動分に係る利息償還金が総費用に算入されてしまうことの方が重大である。
 このとき、料金の高騰を抑える意識が強く働くことが、稼働率を政策的に決定し、未稼動分を大きくする会計処理に繋がっているのである。

 4 繰出金について

 県の一般会計から公営企業会計へ繰り出される金額は、平成元年度以前の起債に係る企業債元利償還金のうち、稼動分元金及び未稼動分の元金・利子に係る部分は出資金(平成12年度21億円)として支出され、稼動分の利子に係る部分は補助金(同15億円)として支出される(合計36億円)。
 新たに水源開発や広域化対策の事業を進める場合における国庫補助金,起債,県の出資という三者間の資金負担割合をみると、平成元年度以前は平成2年度以降に比べて、県の出資割合が小さく、起債の割合が大きかった(国庫補助金は同じ)。これが現在の多額の企業債元利償還金支出を招来していることから、当時の割合を現行基準に引き直して、県の出資分を遡及的に負担しているのが、この繰出基準の考え方であると解釈することができる。
 このように繰出金は、今後も支出されることになるが、個々の企業債が償還される都度、平成元年度以前の起債に係る元利償還金が減少していくため、繰出金も徐々に減少していくものと考えられる。しかしながら、公営企業が独立採算を基本としていることからも、36億円に上る繰出金の引き下げを検討することが重要である。方法として、借換債による金利の引き下げと、繰上償還によって高金利債を圧縮することが考えられる。

 5 起債について

 起債(平成12年度34億円)は、未稼動資産に係る企業債元利償還金を対象にして行われるため、全ての施設が建設完了している場合には、起債が認められないことになる。宮城県においては、料金算定上の配慮から稼働率を適用しているのであるが、より切実な問題としては、未稼動部分がなければ起債(企業債収入)が不可能になる、という現実を指摘することができる。
 仮に、稼働率を適用せず本来の処理をした場合には、起債に代わる新たな資金調達源を見い出すことが必要になる。繰出金は、国の定めた繰出基準によって限度が決められており、民間銀行からの借入について銀行の融資条件をクリアしたとしても、同じく国の定めた起債の許可方針に制約されている。
 したがって、特別に基準外繰出しを県の一般会計に求めるか、または営業収益すなわち水道料金にその資金源を求めるしかない、という事態になる。県、受水団体のいずれも、財政難の中で年間34億円もの資金負担に応えることは困難であり、ここに、水道用水供給事業の抱える最大の問題がある。

 6 支払利息について

 平成12年度における企業債残高は1,884億円であり、支払利息の総額は102億円である。この支払利息総額の実に77%を占める78億円が繰出金の計算対象になる平成元年度までの起債に係る支払利息であり、この利息部分に対する繰出金を計算すると17.4億円となり、元金償還に係る繰出金17.3億円を上回るほどの大きさであることが判明した。
 これは、平成元年度までの起債に係る金利が約5%から8%台と、現在の水準からみると、異常なほど高い金利であったということに起因している。
 したがって、借換もしくは繰上償還によって、この金利水準の引き下げが可能であるとすれば、一般会計からの繰出金削減に大きな効果があり、県の財政負担を軽減させることができる。それ以前に、水道事業自体の損益と資金繰りの面で、大きな改善がなされることは明らかである。

 7 借換債について

 公営企業における企業債の借換は、国の定めた通知に従って行われている。
 平成12年度末における企業債残高のうち、年利5.0%以上のものが仮に2.0%に借換された場合の年間支払利息軽減額を試算してみると、合計で約50億円となった。これは、平成12年度支払利息総額のほぼ半分に相当する金額であり、この節減効果は極めて大きいものであると言える。
 このように、借換による利益は非常に多額であり、水道事業の財務体質改善に大きく寄与することは明らかである。しかしながら、政府債には借換の制度自体がなく、公庫債については全国の借換枠が一定額に決まっており、各県への枠配分額は借換対象に該当する企業債に対してかなり少ないことから、借換による利益の享受は極めて制限されているのが現状である。

 8 繰上償還について

 借換は支払利息の軽減のみに関係するものであるが、繰上償還は企業債元本自体を減少させて、財務構造の改善と支払利息の軽減を図るものである。
 繰上償還は借換に伴う少額なものを除いて、従来認められていなかったが、平成13年度から公庫債に限り繰上償還の道が開かれることになった。しかしながら、その対象となる企業債は平成13年4月以降の起債分に限られており、しかも、繰上償還によって公営企業金融公庫が失うこととなる将来の受取利息について一定の割引率で現在価値に置き直した金額を、繰上償還に伴う補償金として支払わなければならないこととされている。
 したがって、現状では、仮にこれを実行しても補償金支払があるために、水道事業の支払利息軽減効果は極めて小さなものでしかないと言える。

 9 借入償還ピークについて

 企業局は、企業債元利金の償還ピーク(大崎=平成16年度,仙南・仙塩=平成18年度)と相前後して、平成17年度に料金改定と稼働率の引き上げを行う予定であり、新規の起債をしなくとも資金不足に陥らなくて済むと見込んでいる。しかしながら、現状において稼働率を100%まで引き上げて、新規の起債が不可能になったと仮定した場合、大崎地区では資金不足には陥らないが、仙南・仙塩地区においては、平成16年度にも資金不足に陥ってしまうことが予測されている。
 したがって、仙南・仙塩広域水道事業において資金不足に陥らないためには、従前と同様に、稼働率を適用して未稼動資産を残しておくことにより、毎年30億円程度の新規起債による借入を継続する必要性があるのである。

 10 仙南・仙塩広域水道事業について

 「年度別需給水量に関する覚書」(平成11年3月変更)によると、需給水量(=契約水量)は、平成21年度で293,800立方メートルとされていることから、当初の計画給水量553,300立方メートルは、現在の経済環境下からすると全く達成不可能な水準であると言わざるを得ない。
 一方、七ヶ宿ダムの建設費については、水没地区に当たる地権者との補償交渉が難航して補償費が増加したこと等の理由により、建設に要する費用の概算額が、当初基本計画の535億円に対して2.36倍の約1,260億円にまで膨れ上がってしまった。
 このように仙南・仙塩広域水道事業については、ダムの建設に多額のコストが発生し、そのために膨大な企業債を借りなければならず、需要見通しの甘さから、企業債元利償還に見合うだけの営業収益が得られていないという事業自体の財務構造、採算性の低さを指摘することができる。
 平成13年度以降も需要の大幅な伸びは期待できないことから、営業収益の増加は、料金単価の値上げにしか見い出せない。しかしながら、料金単価の値上げは末端の水道料金の高騰に繋がり、仙南・仙塩地域に暮らす県民に多大な負担を強いることになる。よって、県民への良質なサービス提供という行政の使命からしても、大幅な料金単価の値上げは行いにくいのが現状である。
 このような状況では、営業収益の大幅な増加は見込めず、実質赤字を解消することは極めて困難であると言える。これまで、損益面では稼働率の適用により巨額の実質赤字を隠してきており、資金面では未稼動資産に係る新規起債という方法で、企業債元利償還財源を確保して資金繰りをどうにか回してきた、というのが仙南・仙塩広域水道事業の実態である。

 3.監査の結果

 1 契約事務

 水道事業における工事契約事務について検討した結果、適正に執行されており、契約価格も不合理なものではないと認めることができた。

 2 真実な会計報告

 財務諸表は、企業のありのままの姿を表すものでなければならないことは大原則であり、公営企業においても例外ではあり得ない。公営企業法施行令にも真実性の原則が謳われているものの、「宮城県水道用水供給事業会計決算書」は真実な姿を表しているとは言い難く、こうした実態からかけ離れた会計決算書が作成され公表されてきたという現実を鑑みると、アカウンタビリティ(会計説明責任)が欠如していたと言わざるを得ない。
 いかなる理由があるにせよ、実態とかけ離れた財務諸表は作成してはならない。このような会計決算書の作成は、それを読む関係者をミスリードし、ひいては県民に対して知らず知らずのうちに、原因不明の経済的負担を強いる結果に導く行為であると認識すべきである。

 4.監査の結果に添えて提出する意見

 1 実態開示の重要性

 稼働率を適用する会計処理は、水道事業における財政状態、経営成績の実態を表しているとは言い難いが、これには以下の2つの要因が挙げられる。
 1つ目は、未稼動分に係る企業債元利償還金が水道料金算定要素に入らないため料金を低めに設定できる、という料金算定上の問題である。稼動分に係る企業債元利償還金が水道料金算定基礎の1項目ならば、それは正しく算出すべきであり、その上で現実的な料金決定の段階を踏めば良いと考える。
 2つ目の理由は、資金繰り上の問題である。これは、未稼動資産を残すことで起債を可能にし、当面の運営を継続させ、起債がなくても資金が回る状態になるのを待つ、という消極的な経営姿勢を導く原因になっている。万一、未稼動資産の存在を前提とした新規の起債が、何らかの理由でストップするような事態にでもなれば、危機はすぐに表面化することになるであろう。
 このように稼働率を適用した会計処理を行うことは、本来あるべき減価償却費や期間費用として計上すべき支払利息を将来に繰り延べていることを意味し、こうして繰り延べられた減価償却費や支払利息について、過去及び現在の県民ではなく将来の県民が負担することとなり、ここに水道事業のコスト負担に係る世代間不公平の問題が内包されているとみることができる。
 危機が現実になって初めて行動を起こすのではなく、その前に体質を変えようとする努力が必要である。そのためには、会計処理の在り方を正常な状態に戻して現状を明らかにするとともに、経営健全化に向けて改革の道筋を見つけることが重要である。

 2 硬直的な財務活動からの脱却

 借換債に関しては、その財務内容改善効果は非常に大きいのに対して、実際には限られた範囲でしか実施できなかった。また、繰上償還についても借換債と同様に、改善効果の高い方法ではあるが、制度上は不十分な感がある。
 公営企業が借換や繰上償還を積極的に行えるよう、国の条件整備がなされることが、公営企業の経営改善、ひいては地方財政の健全化を図る意味でも、最も求められることであり、県としても積極的に提言していくべきである。
 行政、経済の変革が迫られている中で、公営企業もその例外であるはずがない。自らの事業の採算性を分析し、合理化を図れるものから実行すべきであり、その中でも支払利息の改善は真っ先に着手すべき問題である。
 公営企業が独立採算を唱え、自己責任原則に裏打ちされた企業体であるならば、制度の壁を行動範囲の限界と捉えることなく、企業の論理を前面に押し出していくべきものと考える。

 3 仙南・仙塩広域水道事業の将来

 宮城県は、財政再建団体への転落を避けるため、年間200億円強の歳出削減に取り組んでいるところであり、もし水道事業の新規起債がストップすれば、早晩資金不足に陥ることが想定され、県の財政自体に深刻な影響を与えることになるのは明らかである。そうした最悪のケースを考慮に入れながら、仙南・仙塩広域水道事業の今後の在り方を描くとすればどうなるであろうか。
 まず、事業主体の問題(事業の一括譲渡,分割譲渡,廃止)を考えてみる。水道用水供給事業は事業規模が非常に大きく、資産の使途は水道事業に限定され他事業への転用は不可能であるため、一括譲渡は不可能と言える。また、各受水団体に譲渡資金を負担する財政的余力はなく、分割譲渡も実質的には不可能と考えられる。広域水道事業は公益事業としての性格を持つことから、水道用水の供給を継続させることは水道事業者にとっての義務であり、将来にわたって水道事業自体を廃止することはあり得ないものとされている。
 次に、事業内容の見直し(効率性向上により赤字体質からの脱却を図る)を考えてみる。例えば、平成14年4月から水道事業の民間委託を拡大する内容の改正水道法が施行される予定なので、可能な限りの業務委託を実施して経費削減を図ることを検討すべきである。また、従来のPFI(民間資金を活用した社会資本整備)とは少し異なる運営型PFIでも同様に、民間の感覚を取り入れた形の運営が可能となり、効率化に役立つものと考えられる。
 最後に、国,県,各受水団体の間における負担の分担について考えてみる。金利削減策である企業債の借換・繰上償還は、国にとって将来の受取利息消失となる。また、会計処理を正常に戻すことで起債が不可能になり、資金不足に陥った場合には、県の負担が大きくなってくる。さらに、水道料金の値上げを実施したり、あるいは巨額債務に対する県の負担軽減のため特別分担金を徴収するとなれば、各受水団体に大きな負荷がかかってくる。最後に、現状のまま変わらずに推移するとすれば、そのツケは将来の県民あるいは給水利用者に回ることとなる。
 このように事業の将来を考えると多難ではあるが、少しでも早く、事業の実態と将来の負担内容・方法やその限界を明瞭に公開し、水道用水供給事業における関係者(国,県,各受水団体)が、これまでの経過と現状への正しい認識を共有して、正常化へ向かって踏み出すことが重要であると考える。