宮城県のスギ花粉症対策がさらに一歩前進します(林業技術総合センター)
| 記者発表資料 |
平成31年2月15日 林業技術総合センター環境資源部 担当:今野 電話:022-345-2816 |
宮城県のスギ花粉症対策がさらに一歩前進します(林業技術総合センター)
当センターでは,本県の花粉症対策を進めるため,「少花粉スギ」※1の研究開発に取り組み,現在は,県内の種苗生産者向けに苗木や種子を生産供給しています。
今般の研究で,本県由来のスギ品種「栗原4号」が花粉を全く発生させない「無花粉スギ」※2の遺伝子を有していることを新たにつきとめました。
本成果により,本県の気候風土に適した「無花粉スギ」品種の開発が加速され,花粉症対策に寄与することが期待されます。
1 これまでの取組み
- (1)当センターでは,「少花粉スギ」5品種を開発し,挿し木苗で年間8万本,種子で約1kg,安定的に生産供給してきました。
これは,スギの造林面積に換算した場合,約70ha分に相当します。
- (2)「無花粉スギ」の研究は,平成23年度から開始し,選抜した12系統49個体を対象として,人工交配作業と雄花着花量の調査を進めてきたところです。
2 今回の研究成果
- (1)「少花粉スギ」よりさらに進んだ,花粉を全く発生させない「無花粉スギ」の生産に道筋がつきました。
- (2)無花粉遺伝子を有する品種を見出したことで,本来必要とした人工交配の回数が減らせ,品種開発に要する期間を3~5年程度短縮することにつながりました。
雄花の見た目の違い
上左:一般的なスギの雄花 上右:無花粉スギの雄花(爽春)


下左:一般的なスギの雄花には花粉が確認できる。
下右:無花粉スギの雄花には花粉が形成されない。
[画像:国林木育種センター]
無花粉スギ品種の作出

国選抜品種「爽春」と県精英樹「栗原4号」との人工交配作業。他の花粉と受粉しないよう,袋の中で交配。

「栗原4号」の遺伝子を有する苗
3 「無花粉スギ」生産の見通し
今後,当センター内に「採穂園」※3を造成し,挿し木苗での供給に向けた環境を整えます。
- ※1 少花粉スギ
雄花着花量が一般のスギの1%以下のもので,花粉症対策に用いられています。
- ※2 無花粉スギ
雄花の中の花粉が形成されないものです。但し,外見上は正常な雄花を形成しているため,一般のスギとの区別は困難です。自然界では数千本に1本の割合でしか存在しないとされます。
- ※3 採穂園
「栗原4号」の遺伝子を有する苗を大きく育て,挿し木に使う穂木(芽のついた小枝)を採取するほ場を指します。
※本発表の内容についてはページ上のボックス内の担当課までお問い合わせください。