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掲載日:2014年10月2日

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トピックス(H26)/飼料米の種類及びそれぞれの特徴について

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(畜産試験場)

(1)飼料用米の形態と加工方法

県内で飼料として流通している飼料用米は,もみ米又は玄米が主で,乾燥したものを粉砕や蒸気圧ペン処理しています。生米をサイレージ化したものはソフトグレインサイレージ(SGS)と呼ばれ,ライスセンターにある籾殻膨軟処理装置(プレスパンダー)で破砕処理後サイレージ化した膨軟化もみ米もその1種です。その他,玄米を蒸気で炊いた後サイレージ化した製品(商品名:ふっくらライス等)も流通しています。

(2)加工方法による違いと肉牛による利用性

加工方法の違いで一般成分(CP,TDN等)に大きな差はありません。しかし,ルーメン内の分解(発酵)スピードと利用性,消化率は加工方法により大きく異なります。
まずタンパク質について見てみます(表1)。CPのうち,溶解性タンパク質(SP)はルーメン内で急速にアンモニアまで分解されるタンパク質で,高水分のサイレージほど高い傾向となることが知られています。分析の結果,膨軟化もみ米で突出して高くなっています。利用性の高いタンパク質ですが,飼料中から十分にエネルギー(TDN)が得られないとルーメン内のバランスが悪くなる場合がありますので注意が必要です。

表1 加工方法の違いにおけるタンパク質画分
加工方法の違いにおけるタンパク質の分析結果
値はカンパーランドバレー分析研究所にて分析した

酸性デタージェント不溶タンパク質(ADICP)は結合タンパクとも呼ばれ,ルーメン内で牛が利用できないタンパク質です。熱ダメージ等で多くなり,加工過程における加熱の程度の差が反映されると考えられます。例えばCP中のADICPが最も高い圧ぺんもみ米ではCPの10.7%あり,この分が利用できないことを考慮しなければいけません。飼料用米と他の穀類を代替利用する際は,CP含量とともに利用性の低いタンパク質の割合も考慮し,不足分を充足する必要があります。

次にデンプンについて見てみます。(表2)。既報によれば,無加工ではルーメン内でほとんど分解されず,30%程度が糞中に排出されるのに対し,破砕や圧ぺん化により利用率が上昇し,糞中への排泄が見られなくなるとされています。今回,ルーメン内7時間後の消化率を分析したところ,加工方法の違いで29%から81%と大きく幅がありました。このことからデンプンの消化スピードは膨軟化もみ米>圧ぺんもみ米>ふっくらライス>粉砕米>玄米の順で早いと考えられます。膨軟化もみ米は乾燥していない未熟の生米で調整されているため,子実のデンプン自体がもともと細粒化しており,微生物がアタックしやすい状況にあったことも考えられます。

表2 加工方法の違いにおけるデンプン画分とα化度加工方法の違いにおけるデンプンの分析結果

 

α化(糊化)は水中での加熱によりデンプンが“酵素による”消化を受けやすくなった状態であり,α化度はこの割合を示しています。炊飯した米のα化度はほぼ100%ですが,飼料用米では25.3から86.8%まで差が見られました。値が高いほどより「炊飯した米」に近く,酵素がかかわる下部消化管での消化も受けやすいと考えられます。おそらく粒度が細かい又はα化度が高いほど最終的なデンプンの消化率は高く,ルーメンの通過速度が速い又はルーメン内で利用されない場合には,バイパスして下部消化管で利用される機会が増え,この際の消化率にα化度が関係すると考えられます。

(3)飼料用米の選択

飼料用米は配合飼料,トウモロコシ,大麦のいずれの代替も可能です。ただし成分の差があるため,育成期間であったり,給与期間が長い場合は確実にCPの補充を行ってください。サイレージ化した製品は概して嗜好性高いので,食わせ込みたい時期の給与に向いています。コスト面から考えるとSGSは最も生産コストを低くできる可能性があります。粉砕米は単味としてだけでなく配合飼料への事前混合が可能であり,大規模流通に適しています。これらは保存性がやや低いのが難点ですが,適切に調製・保存することで対応が可能です。圧ぺん米は単味飼料としてしか流通がありませんが,保存性が非常に高い製品です。給与したい量によっても加工方法を選択すべきであり,多給代替はサイレージよりも破砕や圧ペン米が向いていると考えています。それぞれの特性に合った肥育牛での利用方法の検討を進めています。より具体的な給与方法については宮城県普及に移す技術(普及に移す技術)にまとめてありますので直接HPをご覧頂くか,当チームまでお問い合わせください。

(酪農肉牛部肉牛チーム 齊藤 陽介)

お問い合わせ先

農業・園芸総合研究所企画調整部

名取市高舘川上字東金剛寺1(代表)

電話番号:022-383-8118

ファックス番号:022-383-9907

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