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花粉の少ないスギ品種の選抜

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年3月25日更新

花粉症対策のためのスギの育種~花粉の少ないスギ品種の選抜・生産~

概要

社会的な問題となっている花粉症への対策として,スギ少花粉品種(花粉の少ないスギ)に注目が集まっています。
これまでに,林木育種事業で選抜されてきたスギ精英樹(注1)から,全国で146品種の少花粉品種(平成30年度末)が選抜されています。
東北地方(東北育種基本区)では23品種選抜されており,そのうち宮城県の精英樹からは「刈田1号」,「宮城3号」,「玉造8号」,「加美1号」,「遠田2号」の計5品種が(国研)森林総合研究所林木育種センターで少花粉品種として認証されています。
当センターでは,スギ少花粉品種のさし木苗をミストハウスにて生産しています。

花粉の少ないイメージの写真です

スギ少花粉品種の選抜

少花粉品種は,通常のスギ精英樹と比較して,約1%以下しか花粉を生産しない特性を持つものとして選抜されます。
そのため少花粉品種として認定されるには,継続的な調査において,花粉の量と関係のある雄花着生量が一定の基準を満たしている必要があります(詳しくは林木育種センター※外部リンク)。

当センター(当時宮城県林業試験場)では,県内2つのさし木次代検定林(注2)において,スギ精英樹の雄花着生量の調査を5カ年間行いました。
また,採種園(注3)においても,植物ホルモン処理することによって,スギ精英樹を強制的に着花させた雄花着生量を調査しています。
その結果,基準を満たした「刈田1号(写真1)」,「宮城3号」,「玉造8号」,「加美1号」及び「遠田2号」がスギ少花粉品種として登録されました。
もちろん,選抜の際には,花粉の量のみではなく,成長量など林業用品種として重要となる形質についても考慮されています。

刈田1号の写真です

スギ少花粉品種の生産

センターでは,選抜された少花粉品種をさし木で増殖し,林業用種苗のもととなるさし木苗を生産しております。
さし木苗のもととなるさし穂は,センター内に5つある少花粉品種で構成された採穂園(写真2)から採取されます。
さし木苗は,採穂木と全く同じ遺伝型を持っていますので,花粉が少ない採穂木と同じ形質のクローン苗が生産できます。
さし木苗の生産は,センター内に3棟あるミストハウスで行っております(写真3)。
平成16年から少花粉及び低花粉(花粉の生産量が通常スギの約20%以下)品種のさし木苗の生産が始まり,現在は年間約8万本の少花粉スギのさし木苗を生産しています(図1)。

採穂園の写真ですさし木苗生産中の画像ですスギ花粉症対策品種の生産量の推移を表したグラフです

その他の取組み

ミニチュア採種園の造成

センター内には,さし木苗生産のほかに,少花粉品種の実生苗を生産するための採種木が植栽されているミニチュア採種園が造成されています。
ミニチュア採種園は,従来の採種園よりも採種木を小さく仕立てることにより,管理が容易となる上,植物ホルモン処理することで造成後数年で種子生産ができます(写真4)。
スギの花粉量は遺伝することが知られているので,ミニチュア採種園からは花粉が少ない形質を受け継いでいる種子を採種することができます。

ミニチュア採種園の写真です。

 

 

 

 

 

 

 

 

無花粉品種の開発

無花粉(雄性不稔)スギは,平成元年(1992年)に富山県で初めて発見されました。これまでの調査で,雄性不稔性は,単一の劣勢遺伝子によって生じることが明らかになっているので,雄性不稔の劣勢遺伝子を持つ精英樹と雄性不稔個体との人工交配によって,無花粉スギを作出できる可能性が指摘されています。当センターでは,成長と材質に優れ,かつ宮城県の環境に適した無花粉スギを作出するために,県内選抜の精英樹と(国研)森林総合研究所林木育種センターが開発した無花粉スギ品種「爽春」との人工交配試験に取り組んでいます。

用語の解説

精英樹(注1)

精英樹(第1世代精英樹)とは,林木育種事業において選抜された,望ましい形質を持つ木(個体)のことを言います。
ここで,望ましい形質とは,成長量,樹形及び病害抵抗性などであり,林業における収量や人工林の健全性に関連しています。
精英樹から種苗を生産することで,上記の望ましい形質を受け継ぐ次世代の人工林を造成することができます。

検定林(注2)

選抜された精英樹は,その優良な形質が実際に遺伝的なものかどうかを評価される必要があります。
その評価を行う人工林が検定林であり,“実生次代検定林”と“さし木次代検定林”の2種類に分けることができます。
実生次代検定林は,精英樹で構成される採種園(後述)において生産された,精英樹の種子(子世代)を用いて造成します。
さし木次代検定林は,精英樹のクローンによって構成されています。
いずれの検定林においても,測定した形質に及ぼす親木あるいはクローンの遺伝的な影響を,統計的手法によって評価することができます。
検定林を調査することは,不良な形質を持つ系統や,花粉生産量,材質などが優れた系統の発見に繋がります。
優れた系統を活用することにより,採種園・採穂園は,より望ましい形質を持つ種苗を生産できるようになります。
さらに,優良な精英樹間の交配による検定林を調査することで,次世代の精英樹(第2世代精英樹)を選抜することもできます。

採種園(注3)

さし木やつぎ木により増殖した精英樹などの優秀なクローン木を集団で植栽し、林業用苗木の生産に適した種子を採取するために造成した樹園のことです。

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