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新春知事対談2019 東北の未来を拓く 次世代放射光施設 東北大学 総長 大野 英男 さん(みやぎ県政だより平成31年1月・2月号)

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年1月4日更新

世界最高性能を誇る次世代の放射光施設。東日本大震災からの復興を果たし、日本が今後も科学技術立国として世界を先導していくために、産学官が一体となって、東北地方への設置実現に取り組んできました。

東北大学 総長 大野 英男さん(左)、村井 嘉浩知事(中央)、KHB東日本放送「スーパーJチャンネルみやぎ」キャスター 野口 ちひろさん(右)の写真

東北大学 総長
大野 英男(おおの ひでお)

宮城県知事
村井 嘉浩(むらい よしひろ)

進行 KHB東日本放送「スーパーJチャンネルみやぎ」キャスター
野口(のぐち) ちひろ


—— 新年を迎えました。まず昨年を振り返って、どんな一年でしたか。

知事 総じて穏やかな一年でした。人気アイドルグループ「Hey! Say! JUMP(ヘイ! セイ! ジャンプ)」との共同観光キャンペーンやオルレ(韓国発祥のトレッキング)コースの開設により、観光客がだんだん増えてきました。そして、今日話題とする次世代放射光施設の設置が決まりました。

村井 嘉浩知事の写真


—— 大野総長は昨年4月に総長に就任されました。どんな9カ月でしたか。

総長 日本を代表する研究大学、総合大学である東北大学を、次の高みにいかにして持っていくかを検討し、昨年、運営の指針となる「東北大学ビジョン2030」を策定し、取り組みを始めたところです。

東北大学 総長 大野 英男さんの写真


—— 県と東北大学とは、地域経済や産業の発展に向けて、大学の研究成果を活用した産学官連携の取り組みを進めてきました。昨年7月、次世代放射光施設が、東北大学青葉山新キャンパス内に設置されることが決まりました。
放射光施設は何ができる施設でしょうか。

知事 素人の視点から説明をします。放射光施設は、「巨大な顕微鏡」と例えられ、微細な原子レベルでの物質の構造や状態を分析・解析できます。ただし、対象を大きくして見るわけではなく、対象から出た情報を検出器で捉えて、そのデータを基に画像が得られるというものです。
 国内には、スプリング8(兵庫県佐用町)など全部で9施設あります。しかし、諸外国で整備が進む、軟エックス線領域に強みを持つ高輝度の放射光施設はありません。輝度が高いと、物質の表面の変化がより短時間で、より詳しく調べられます。 
 東北大学や東北経済連合会など産学官の熱意で設置が実現しました。


—— 大野総長の御専門の研究にも活用できるのですよね。

総長 磁石に関するスピントロニクスという分野を研究しています。磁石のN極S極の動きというのは外からは見ることができず想像しかできませんでした。今後は、素子の中でのナノ(10億分の1)レベルの動きが、世界最高水準の放射光施設で見られるようになります。
 不揮発性(電源を供給しなくても記憶を保持する)メモリや、超省電力型のハードディスク、AI(人工知能)やIoT(インターネットオブシングス。モノのインターネット)に使える半導体の開発などに活用が考えられます。

知事 次世代放射光施設は、物質表面の変化を、スプリング8よりもごく短時間で分析できるそうです。活用すれば、海外としのぎを削る開発競争で優位に立てます。


—— 4年後の運転開始を目指しています。どのように取り組んでいきますか。

総長 新施設は、大きな設備としては新しいアプローチを取っています。国の予算だけでなく、県、市、そして民間が費用の半分を拠出しています。多くの出資者の要望をまとめて、効率的に使う仕組みづくりはこれからです。官民地域パートナーシップを機能させて、効率のよい利用の仕方を決めていくことになります。

知事 まず、建設に関して財政的な支援を行っていきます。昨年の議会で、30億円の助成を認められました。
 次に、地元企業の利用促進です。県が、地元企業と施設との技術的な橋渡しを行えるよう準備を進めます。

東北大学 総長 大野 英男さん(左)と村井 嘉浩知事(右)の写真


—— 東北初ですから、当然、地元企業にはなじみが薄い施設ですね。利用促進をどう進めていきますか。

総長 大学は敷居が高いと思われがちです。研究成果をこんなことにも使えますと提案し、大企業から小企業までが互いの技術について議論し、相乗効果でイノベーションを駆動していく仕組みを作ります。
 例えば、ティ・ディ・シー(利府町)は研磨加工に優れていて、小惑星探査機「はやぶさ2」の部品などを作った企業です。スプリング8を利用して、自社製品の品質を計測することができました。
 食品への活用も重要です。海外の事例ですが、アイスクリームの中に氷の粒ができる過程の温度履歴を調べ、輸送時などの温度管理に活用しています。
 身近な例を企業の皆さんに知ってもらい、ぜひ活用していただきたいと思います。

知事 産学官をつなぐ存在として、光科学イノベーションセンターが設立されています。
 また、県産業技術総合センターが企業の技術相談の窓口となって、施設へのつなぎ役となれるよう取り組みます。
 スプリング8は、薬やタイヤ、電池、半導体、シャンプーなどの新製品開発に貢献してきました。
 ブラジルではワインのブランド化に活用し、品質の良さを分析して数値で証明し、付加価値を上げることに成功した例もあるそうです。
 他の工業製品でも、特長をデータで示すことにより、付加価値を上げられます。「勘」や「経験」といった感覚的なものをデータにできるのです。


—— 放射光施設に期待することは何ですか

総長 まずは世界最先端の施設ですので、これを使って学術のフロンティア(最先端の業績)をいかに築いていくか。
 次に産学連携をいかに進めるか。積み重ねてきた知見や研究成果を社会にどう活用していただくか。今から大きく発展していくのが楽しみです。

知事 国際的な交流人口の拡大が見込めます。地域イメージも変わり、世界に宮城県をアピールできるでしょう。
 企業の研究施設が集積し、東北大学をはじめとする理系人材の就職先にもなります。

総長 新技術を生かしたベンチャー企業も増えると思います。「一旗揚げよう」という人が多く出てくるのではないでしょうか。
 放射光施設で得られた調査データの解析にはスーパーコンピューターやAIなどの知識も必要です。関連分野のすそ野は広く、東北大学の理工生命系や文系の学部の知見も含めた、全学的な取り組みになりそうで楽しみです。


—— 宮城だけではなく、東北全体の底上げにつながっていくのでしょうね。では、課題はなんでしょうか。

総長 放射光は「未来も照らす光」ですから、学術研究にとどまらず、広く社会で産業利用などに活用してもらうことです。

知事 PRが課題です。宮城をはじめ、東北6県、北海道でも使ってもらいたい。商品のブランド化に有効だとPRしていきます。


—— 県と大学、今後に向けて双方が互いに期待することは何ですか。

知事 東北大学には優秀な人材の輩出を期待します。放射光施設の立地により、理工系の人材が県内に数多く集まることが想定されます。その中核を、東北大学に担っていただきたいと思います。
 次に、地元企業の育成へのご協力。
 そして、大学発ベンチャーを次々と創出され、世界に羽ばたく企業になることを期待しています。これは私の大きな夢です。エールと捉えてください。

総長 同じことを言おうと思っていました。
 産学官連携のため、県には小企業から大企業までが参加できる環境を作ってもらい、エレクトロニクス分野においては既に大きな成功事例があります。今後は、未来型医療、材料科学などの分野においても取り組んでまいります。
 次世代放射光施設で、さらに連携を前に進め、新たな産業を作っていきたいと思います。

次世代放射光施設イメージ図
次世代放射光施設イメージ図
((一財)光科学イノベーションセンター提供)


—— さて、お二人ともご多忙な中、リフレッシュはどうされていますか?

知事 ランニングマシンでなるべく毎朝30分歩いています。最後は時速10キロ位まで上げていきます。汗をかいて気持ちがいいですよ。

総長 週末に妻と1時間位かけて近所を散歩しています。加えて、月に2回ほどジムに通っています。鍛えるというよりは、リハビリかも…。可動域を確認しながら関節を広げる運動等をしています。


—— 最後に、県民の皆さんへのメッセージをお願いします。

知事 3月で東日本大震災から8年が経過しようとしています。10年間の「宮城県震災復興計画」も残り2年です。皆さんの笑顔をエネルギーに、宮城県は本当によくなったと思ってもらえるようにしていきたいです。

総長 東北大学では、オープンキャンパスやサイエンスカフェ、リベラルアーツサロン、復興シンポジウムなどさまざまなイベントや取り組みを行っています。
 皆さんにぜひ参加していただき、東北大学とともに明るい未来を作っていただければと思います。

東北大学 総長 大野 英男さん(左)、村井 嘉浩知事(中央)、KHB東日本放送「スーパーJチャンネルみやぎ」キャスター 野口 ちひろさん(右)の写真


村井 嘉浩 むらい よしひろ
 大阪府豊中市出身。防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊東北方面航空隊にヘリコプターパイロットとして配属される。1992(平成4)年松下政経塾入塾、1995(平成7)年から宮城県議会議員を務め、2005(平成17)年11月から宮城県知事に就任。現在4期目。


大野 英男 おおの ひでお
 東京都出身。東京大学工学部、東京大学大学院工学系研究科修了後、北海道大学講師、助教授を経て、1994(平成6)年東北大学工学部教授。2018(平成30)年4月から東北大学総長に就任。専門は、半導体物理・半導体工学、スピントロニクス。


インタビューを終えて

KHB東日本放送「スーパーJチャンネルみやぎ」木・金キャスター
野口 ちひろさん

 宮城を代表する方々に直接お話を伺う機会を頂き、光栄です。お二人の「宮城をもっと元気にしたい」という思いを強く感じました。2019年が復興の総仕上げに向けた1年になること、また放射光施設の設置が東北の復興のさらなる力になることを大いに期待します。
 ニュースを担当して今年で2年になります。伝えることの難しさを痛感する毎日ですが、取材を通してたくさんの人と出会えることが本当に嬉しいです。大好きな宮城にもっと笑顔が増えるよう、今年も精一杯頑張ります!


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