掲載日:2013年9月20日

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トピックス(H25)/農作業における熱中症予防について

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(農園研 バイオテクノロジー開発部)

近年、猛暑となる年が続いており、平成22年度以降、夏期(7~9月)における熱中症による救急搬送車の数は増加しています。また、農作業中の熱中症による死亡事故は平成22年度以降、毎年20件以上発生しています。

仙台における真夏日の出現日数は、平成22年に48日を記録し、平成6年に記録したこれまでの最高日数40日/年を上回りました。それ以降、平成23年は36日/年、平成24年は46日/年と、仙台でも暑い夏が続いています。

高温下での作業やスポーツ時に、暑さや熱による障害を防ぐために、WBGT(湿球黒球温度)といわれる暑さ指標が使われています。この指標は気温だけでなく、人体の熱収支に影響の大きい湿度や放射熱を取り入れた指標となっており、労働環境においては、身体作業強度等に応じたWBGT基準値が定められています。

農園研では、昨年から高温期の園芸施設内における暑熱対策の研究を開始しました。

昨年行ったキュウリ栽培農家の園芸施設内でのWBGT調査では、9月の収穫期において、午前8時にはWBGTで厳重警戒温度の28℃を超え、午後3時半まで超過していた日も見られました。

また、県内の施設園芸中心の4法人・84名のパート職員を対象に、「高温期における園芸施設内農作業の実態把握のためのアンケート調査」を実施したところ、下記のような結果を得ました。

表1に7月~9月を振り返って回答頂いた高温期における熱中症等の自覚症状を示しました。作業中の自覚症状として、多量の発汗と喉の渇きを訴える人が多くみられますが、めまいや立ちくらみのほか、頭がおもい・頭痛がある及び、横になりたい気分等の重症度が比較的高い症状が「ときどきある」と回答した人が40%程度と多く見られました。また、作業中にもっとも暑さを感じる部位として、頭(46%)と背中(34%)を強く訴えていました(表2)。

さらに、暑さにより、もっとも疲労を感じる作業としては、片付け・作付準備等であり、より作業負担の大きい作業であることが確認されました(表3)。

高温期の農作業では熱中症の危険があることから、涼しい時間帯に作業する働き方の工夫や、こまめに休憩を取ったり、塩分・水分補給に努めたり、作業場所を遮光する等の対応も取られています。

しかし、アンケート調査結果のとおり、熱中症等の自覚症状を多くの人が訴えているように、過酷な条件下での作業であることには変わりはなく、より一層の負担軽減対策が重要になってきます。

高温期の農作業はWBGT基準値(表4)を順守し、作業することが前提です。これまで提案してきたファン付作業着(普及に移す技術第83号:参考資料「高齢者の農作業の軽労化・快適化に向けたファン付作業着(商品名:空調服)の利用」)等の暑熱対策商品の活用や身体作業強度等に応じた作業体系を組む等、高温期の作業内容の見直しを行うとともに、熱中症予防対策関連情報の収集に努め、日頃から農作業中の熱中症予防に努めましょう!

(平成25年9月20日掲載)

表1 作業中の自覚症状

表1 作業中の自覚症状表
項目 1まったくない 2ほとんどない 3ときどきある 4かなりある 5非常によくある
1 めまいや立ちくらみがする 29% 33% 36% 2% 0%
2 筋肉のこむら返り(硬直)がある 46% 24% 24% 5% 1%
3 だらだらと大量の汗が出る 4% 8% 21% 31% 36%
4 頭がおもい・頭痛がある 20% 28% 46% 5% 1%
5 気分が悪い・不快である 23% 40% 35% 2% 0%
6 のどがひどく渇く 10% 19% 35% 24% 12%
7 吐き気がする・吐く 47% 40% 13% 0% 0%
8 横になりたい気分になる 25% 26% 40% 5% 4%
9 非常にねむくなる 22% 41% 28% 8% 1%
10 全身がだるい・力が入らない 18% 44% 32% 6% 0%
11暑くて作業がつらい 12% 18% 46% 15% 8%

表2 もっとも暑さを感じる部位

表2 もっとも暑さを感じる部位表
背中 うで
46% 11% 34% 0% 1% 2% 6%

表3 暑さによりもっとも疲労やつらさを感じた作業

表3 暑さによりもっとも疲労やつらさを感じた作業表
片付け・作付準備 低値 栽培管理(誘引・芽かき等) 収穫 選別・出荷等
35% 11% 22% 26% 6%

表4 身体作業強度等に応じたWBGT基準値

WBGT基準値

※本表は、JIS Z 8504(人間工学-WBGT(湿球黒球温度)

指数に基づく作業者の熱ストレス評価-暑熱環境)付属書A「WBGT熱ストレス指数の基準値表」を基に、同表に示す代謝率レベルを具体的な例に置き換えて作成したものです。

※熱に順化していない人とは、「作業する前の週に毎日熱にばく露されていなかった人」のことをいいます。

出展)熱中症の予防対策におけるWBGTの活用について

(H17:厚生労働省)

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写真1 ファン付き作業着

熱中症関連サイト

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農業・園芸総合研究所企画調整部

名取市高舘川上字東金剛寺1(代表)

電話番号:022-383-8118

ファックス番号:022-383-9907

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