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掲載日:2018年6月1日

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普及に移す技術第93号/普及技術9

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普及技術9(平成29年度)

分類名〔病害虫〕

大麦リビングマルチを利用した春まきタマネギのIPM体系

大麦リビングマルチを利用した春まきタマネギのIPM体系(PDF:347KB)

宮城県農業・園芸総合研究所

1 取り上げた理由

加工・業務用のタマネギは用途が広く,周年で需要があり,県内で1月以降に播種する春まきタマネギの栽培体系については,普及に移す技術第91号で普及技術としている。本作型では,ネギアザミウマが発生し問題となる。本虫に対しては各種殺虫剤の効力低下も顕在化していることから,有効な防除手段を組み合わせたIPM(Integrated Pest Management:総合的有害生物管理)への取り組みが重要となる。普及に移す技術第92号では,ほ場の通路部分にリビングマルチとして大麦を播種することにより,本虫の寄生密度を抑制できることを参考資料として示した。しかし,生産圃場によっては収穫物がやや小玉化する場合がみられること,殺虫剤の散布時期が判然としない等の問題点が指摘された。そこで,その改善策を含めて防除法を検討し,体系化したので普及技術とする。

2 普及技術

  • 1)IPM体系
    大麦によるリビングマルチを利用したIPM体系を図1に示す。リビングマルチは大麦「てまいらず」を通路部分10aに対し10kgの割合で播種し,生育させることによりネギアザミウマの寄生が抑制される(普及に移す技術第92号参考資料)。大麦を刈り込んだ場合にも抑制効果は示される(図2)。
    IPM体系
  • 2)大麦の刈込み時期の目安
    大麦の草高がタマネギの草高の半分程度に達した時点で,畝の高さまで刈り込むことによってタマネギの小玉化は回避することができる(図3,4,表1)。
  • 3)大麦利用体系での殺虫剤散布時期
    大麦利用体系ではネギアザミウマの発生初期(5月下旬頃)のプロチオホス乳剤(商品名:トクチオン乳剤)散布が高い効果を示す(図2,5)。その後は,発生状況により本虫に高い効果を示す殺虫剤を散布する。殺虫剤の選定には,「アザミウマ類に対する各種薬剤の感受性」(普及に移す技術第93号参考資料)も参考にする。

3 利活用の留意点

  • 1)ネギアザミウマの初発生時期は年次,地域によって大きく異なる。本虫の初発生時期を把握するためには,青色粘着版を用いたモニタリングが有効である。また,発生量も年次変動が大きい。
  • 2)大麦は播種した後,管理機等により覆土,鎮圧すること。
  • 3)通路部分への大麦の播種量は5kg/10aの場合でも十分なネギアザミウマ抑制効果を示すが,雑草抑制効果がやや劣るため10kg/10aが望ましい。
  • 4)ポリマルチを使用しない場合には,大麦に影響の少ない除草剤を選択して散布する必要があるため,イネ科雑草優占圃場での無ポリマルチ栽培での適用は難しい。
  • 5)本作型では,梅雨入り以降に黒斑病,べと病等の病害が発生しやすい。病害対策として,無機銅剤を主体に殺菌剤散布を行い,降雨状況や病害の発生状況に応じて化学合成殺菌剤を併用することで,大幅な農薬削減が可能となる(表2)。
  • 6)圃場条件によっては,大麦の草高がタマネギの草高の半分程度に達さない場合も想定される。
  • その場合には,大麦の刈込を行う必要はない。
  • 7)大麦「てまいらず」は7月中旬頃から倒伏してくるので,倒伏状況に注意しつつ刈込みの要否を判断する。地域や気象条件によっては倒伏が遅れる場合もある。また,リビングマルチ用大麦では「百万石」が「てまいらず」より早く枯れあがる。
  • 8)大麦を刈り込んだ場合でも,雑草抑制効果は大麦を刈り込まない場合と同程度に示される。
  • 9)大麦「てまいらず」は,約750円/kgである。大麦は通路部分10a当たり10kgの播種が必要なため,概ね1/3が通路部分の10a圃場では,使用する大麦は3kgとなり,費用は2,250円である。

(問い合わせ先:宮城県農業・園芸総合研究所園芸環境部 電話 022-383-8246)

4 背景となった主要な試験研究

  • 1)研究課題名及び研究期間
    食料生産地域再生のための先端技術展開事業(平成26~29年度)
    農生態系内の生物多様性向上による総合的病害虫管理技術の開発(平成26~29年度)
  • 2)参考データ
    大麦の刈込みがネギアザミウマ寄生数に与える影響
    大麦草高
    タマネギ草高
    タマネギの1球重量と球径
    大麦利用体系におけるネギアザミウマ初期防除の効果
    大麦をリビングマルチとして導入した場合の農薬節減効果
  • 3)発表論文等
    • a 関連する普及に移す技術
      • a)リビングマルチと黒ポリマルチを併用した春まきタマネギのネギアザミウマ抑制効果(第92号参考資料)
      • b)タマネギの春まき7月どり栽培技術体系(第91号普及技術)
    • b その他
      • a)関根崇行,猪苗代翔太,鈴木香深,増田俊雄(2018) タマネギおよびキャベツ栽培におけるリビングマルチを活用したIPM体系の検討,第62回日本応用動物昆虫学会大会発表予定
      • b)関根崇行(2017) キャベツおよびタマネギ栽培におけるリビングマルチを活用した害虫抑制効果と土着天敵利用の今後の課題,第27回天敵利用研究会発表
      • c)関根崇行,猪苗代翔太,鈴木香深,増田俊雄(2017) リビングマルチ及び各種資材による春まきタマネギのネギアザミウマ抑制効果,第61回日本応用動物昆虫学会大会発表
  • 4)共同研究機関 なし

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お問い合わせ先

農業・園芸総合研究所企画調整部

名取市高舘川上字東金剛寺1(代表)

電話番号:022-383-8118

ファックス番号:022-383-9907

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