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掲載日:2016年4月8日

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普及に移す技術第91号/第91号参考資料24

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参考資料

分類名〔家畜〕

枯草菌給与による乳房炎発症予防

枯草菌給与による乳房炎発症予防(PDF:130KB)

宮城県畜産試験場

1 取り上げた理由

わが国の乳用牛病傷事故原因における最大の課題である乳房炎は,乳質ならびに泌乳量の低下を招く疾病である。乳房炎によって酪農家は,出荷制限期間の生乳廃棄等の損失を被り,経済的な損失は年間1000億円と推定されている。現在,乳房炎治療の多くが抗生剤を用いた治療を中心に行われており,その削減は今日の獣医畜産領域において重大な課題である。治療に用いられる抗生剤の削減は酪農家における治療費の軽減になることに加え,乳製品という観点からは消費者に与える畜産物の安全性と安心感は計り知れない。
乳房炎の発症予防あるいは早期治癒へ誘導するには,乳腺粘膜免疫の賦活化が不可欠であると考え,「プロバイオティック飼料」を給与して腸管粘膜免疫を刺激し,乳腺粘膜免疫の活性化が誘導できないかを研究を行ってきた。そこで,「プロバイオティック飼料」としてアサヒカルピスウェルネス(株)が販売する枯草菌含有飼料添加物 「カルスポリン」 (Bacillus subtilis C-3102株)を選定して乳房炎発症に及ぼす影響を解析し,「カルスポリン」給与が乳房炎を出産直後に毎年繰り返し発症する牛の乳房炎発症を予防することを見出したので参考資料とする。

2 参考資料

  1. 乳房炎発症履歴のある牛へのカルスポリンの給与は,乳房炎発症を有意に減少させることが確認され,カルスポリン(図1)は乳房炎予防効果を有する(表1,表2)。
  2. 乳房炎を出産直後に毎年繰り返し発症する牛の末梢血中免疫担当細胞の発現割合解析を行い,非給与区の乳房炎発症した牛では出産直後から血中樹状細胞の割合が低値となり,カルスポリン給与区の発症予防が確認された牛では血中樹状細胞の発現が高い(図:論文投稿中のため未掲載)。

3 利活用の留意点

  1. この試験は過去に乳房炎発症履歴のあるホルスタイン種経産牛25頭を供試した結果であり,給与区では分娩予定日1ヶ月前からカルスポリンを6×109個/頭/日給与したものである。
  2. 飼料添加物として給与されたカルスポリンは,胃で消化されること無く腸管に到達して増殖し,有用な乳酸菌を腸管で増殖させる腸管フローラの調整能力を有することが確認されている。
  3. 枯草菌飼料添加物「カルスポリン」Bacillus subtilis C-3102株は好気性菌であり効果を得るには連続して給与すること。
  4. 抗生剤を併用した場合,効果は低下する。
  5. 乳房炎の発症を全くなくす方法ではない。低減させる方法である。

(問い合わせ先:宮城県畜産試験場酪農肉牛部電話0229-72-3101)

4 背景となった主要な試験研究

  • 1)研究課題名及び研究期間
    地域飼料資源および新しい繁殖技術の酪農への応用(生涯生産性向上技術確立)(平成24年度-平成28年度)

  • 2)参考データ
    対照区における前乳期,今乳期の乳房炎発症比較表
    表1 対照区における前乳期,今乳期(今回の試験の乳期)乳房炎発症比較
    給与区における前乳期,今乳期の乳房炎発症比較表
    表2 給与区における前乳期,今乳期乳房炎発症比較
    カルスポリンの写真
    図1 カルスポリン

  • 3)発表論文等

    • bその他

      • a)佐藤秀俊・浦川めぐみ・佐藤勝祥・板谷奈波・芦田延久・今林寛和・渡邊康一・野地智法・麻生久(2013),枯草菌給与による乳牛の乳房炎予防,第18回日本乳房炎研究会プロシーデング,p67-70

      • b)麻生久・佐藤秀俊・浦川めぐみ・佐藤勝祥・板谷奈波・高梨暁・梅村紗緒里・芦田延久・今林寛和・渡邊康一・野地智法(2015),枯草菌給与による乳房炎発症予防効果とその作用機構,ルーメン研究会報,26(1),p17-22

  • 4)共同研究機関
    東北大学大学院農学研究科,アサヒカルピスウェルネス株式会社

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お問い合わせ先

農業・園芸総合研究所企画調整部

名取市高舘川上字東金剛寺1(代表)

電話番号:022-383-8118

ファックス番号:022-383-9907

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