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掲載日:2016年3月18日

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普及に移す技術第90号/普及技術2

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参考資料(平成26年度)

分類名〔畑・特用作物〕

大豆作における難防除雑草アレチウリの対策

大豆作における難防除雑草アレチウリの対策(PDF:488KB)

宮城県古川農業試験場

1 取り上げた理由

近年県内において,難防除雑草であるアレチウリの耕地周辺部及び大豆ほ場への侵入が拡大しており,対策が急務となっている。現在,大豆ほ場においてアレチウリが発生した場合は,手取り除草以外の有効な防除法がない。アレチウリはつる性で大豆に複雑に絡みつくこと,果実には鋭い刺が密生することなどから,多発した場合には手取り除草も困難となり,収穫不能となる事例もある。

そこで,大豆ほ場や耕地周辺におけるアレチウリの出芽消長と種子が成熟する出芽晩限等を明らかにし,併せて,除草剤と耕種的管理法を組み合わせた総合的防除体系を検討したところ,実用可能な技術が得られたので普及技術とする。

2 普及技術

  • 1)大豆作におけるアレチウリの防除対策
    • a 大豆作におけるアレチウリは,効果の高い土壌処理型除草剤,適期のベンタゾン液剤処理,中耕培土,大豆生育前期(大豆本葉2~5葉期頃)の手取り除草,茎葉処理型除草剤の畦間・株間処理を組み合わせた総合的防除体系により,残草量を大幅に低減できる(図1,2)。
      図1アレチウリの総合的防除体系
      アレチウリの総合的防除体系の図
    • b アレチウリへの防除効果が比較的高い土壌処理型除草剤は,フルミオキサジン水和剤,DCMU水和剤であり,処理約1か月後のアレチウリ残草量を無処理対比で数%~40%程度に抑制する。ただし,処理時に土壌表面の砕土率が低い場合や過乾燥状態の場合には効果が低下することがある(図4)。なお,フルミオキサジン水和剤の処理に当たっては,土壌表面の砕土率が高く,かつ,適度に土壌が湿った条件において防除効果が高く安定する。また,処理直後に5mm程度の降雨があった場合も高い防除効果が確保される(図5)。
    • c ベンタゾン液剤の防除効果は,アレチウリ本葉3~4葉期の処理で高い。効果は気象条件で変動し,効果が発現しやすい多照条件の処理では枯殺または生育抑制が可能であるが,少照条件では効果が著しく低下する(図6)。
    • d 茎葉処理型除草剤の畦間または畦間・株間処理により,アレチウリ残草量は無処理対比で40~70%に抑制されるが,効果の変動が大きい(図7)。防除効果が不十分となる主な要因は,畦間・株間処理の時点で大型化した(薬液の散布位置より草高が高い)アレチウリが残草することであり,これらは処理前に手取り除草する必要がある。

3 利活用の留意点

  • 1)大豆作におけるアレチウリの防除対策では,以下の点に留意する。
    • a アレチウリは大豆茎葉による遮光で出芽や初期生育が抑制されることから,大豆自体の生育を良好にするとより効果的である。
    • b 本防除体系では,要防除期間短縮の観点から晩播を推奨する。ただし,大豆茎葉による遮光効果を確保するため,極端な晩播は避けること。
    • c ベンタゾン液剤は,大豆の茎葉が繁茂してくるとアレチウリに薬液が付着しづらくなるため,大豆本葉2~3葉期頃に処理する。
    • d 中耕培土はM字型とならないよう大豆の株元までしっかり土を寄せ,アレチウリやその他の雑草を埋没させるように行うこと。
    • e フルミオキサジン水和剤(商品名:フルミオWDG)の使用に当たって,散布器のタンクやホース,ノズルに残った薬液は,微量でも他作物に影響を与える可能性があるため,散布後は専用の洗浄剤(「フルミオWDG洗浄剤」)を用いて機器の洗浄を行うこと。
  • 2)本技術の一部は,アレチウリの大豆ほ場における防除の他,耕作地への侵入経路となる河川敷や河川堤防,用排水路法面,農道,畦畔等におけるアレチウリ管理の参考となる。
  • 3)河川敷や河川堤防,用排水路法面等の管理に当たっては,管理者や所管する行政組織等との必要な調整を行うこと。特に除草剤については,使用の可否について十分に確認すること。また,農耕地以外での除草剤の使用に当たっては,登録内容に留意するとともに,河川等の水系に農薬が流入しないよう十分に注意して使用すること。
    )アレチウリの出芽期間や成熟種子を生産する出芽晩限は県北部における結果である。
  • 4)本技術で紹介するアレチウリの総合的防除体系は引き続き検討中であり,今後新たな知見が得られ次第順次改善していく予定である。

(問い合わせ先:宮城県古川農業試験場水田利用部電話0229-26-5106)

4 背景となった主要な試験研究

  • 1)研究課題名及び研究期間
    • a輪換田における大豆栽培の生育阻害要因克服技術の開発(平成21~23年度)
    • b大規模水田農業地帯における総合的雑草管理システムの構築(平成24~26年度)
  • 2)参考データ
    図2総合的防除体系によるアレチウリへの防除効果(H26年,古試場内)
    図2総合的防除体系によるアレチウリへの防除効果
    図3大豆ほ場に発生したアレチウリ(左)とその果序(右)
    大豆ほ場に発生したアレチウリの写真
    図4アレチウリに対する土壌処理型除草剤の効果
    (H24,H25,H26年,古試場内,現地)
    図4アレチウリに対する土壌処理型除草剤の効果
    図5土壌処理型除草剤の散布時水量・土壌表面状態とアレチウリへの防除効果
    (試験I及び試験III:H26年,試験II:H25年)
    図5土壌処理型除草剤の散布時水量・土壌表面状態とアレチウリへの防除効果
    図6ベンタゾン液剤によるアレチウリへの防除効果
    (H24年,古試場内)
    図6ベンタゾン液剤によるアレチウリへの防除効果
    図7茎葉処理型除草剤の畦間または畦間・株間処理によるアレチウリへの防除効果(H25年,現地)
    図7茎葉処理型除草剤の畦間または畦間・株間処理
    図8大豆ほ場におけるアレチウリ出芽個体の種子位置の分布(H24年,古試場内)
    図8大豆ほ場におけるアレチウリ出芽個体の種子位置の分布
    図9大豆播種後のアレチウリの累積出芽数と大豆草高(H23年,現地)
    図9大豆播種後のアレチウリの累積出芽数と大豆草高
    図10大豆播種後のアレチウリの累積出芽数と大豆草高(H24年,古試場内)
    図10大豆播種後のアレチウリの累積出芽数と大豆草高
    図11 裸地条件におけるアレチウリの出芽確認日と種子生産数(H24年,古試場内・現地)
    図11裸地条件におけるアレチウリの出芽確認日と種子生産数
    図12 アレチウリが蔓延する河川堤防の法面上部における刈払い・除草剤散布時期と果序数(H26年,現地)
    図12アレチウリが蔓延する河川堤防の法面上部における刈払い・除草剤散布時期と果序数
  • 3)発表論文等
    • a 関連する普及に移す技術
      • a)難防除雑草アレチウリの水田地帯における分布実態(第89号参考資料)
      • b)ベンタゾン液剤(商品名:大豆バサグラン液剤)の散布適期(第88号参考資料)
    • b その他
      • a)安藤慎一朗・辻本淳一・大川茂範(2012),宮城県の水田地帯におけるアレチウリの発生状況と大豆作圃場での発生生態,雑草研究,第57巻別号,p38
      • b)安藤慎一朗・三上綾子・石橋まゆ・内海翔太・大川茂範・辻本淳一(2013),ダイズ作圃場におけるアレチウリの出芽,種子生産と各種除草剤への反応,雑草研究,第58巻別号,p58
  • 4)共同研究機関なし

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名取市高舘川上字東金剛寺1(代表)

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