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掲載日:2018年2月15日

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第三百六十三回宮城県議会知事説明要旨

平成30年2月15日

本日ここに第三百六十三回宮城県議会が開会され、平成三十年度一般会計当初予算案をはじめとする提出議案を御審議いただくに当たり、平成三十年度の県政運営の考え方と議案の概要を御説明申し上げます。

説明に先立ち、今月、台湾東部で発生した大地震では、高層建築物が損壊するなど大きな被害が生じました。不幸にして亡くなられた方々の御冥福を心からお祈りするとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。台湾の皆様からは東日本大震災に際して多大な御支援をいただき、その後も交流が続いているところであり、県としてできる限りの支援をしてまいりたいと考えております。

東日本大震災の発生から間もなく七年が経過しようとしております。

改めまして、震災で犠牲となられた方々の御霊に哀悼のまことを捧げますとともに、筆舌に尽くしがたい歳月を送ってこられた被災者の方々の心中をお察し申し上げる次第であります。

震災前後の環境の激変を受け入れつつも、その深い断層に今なお苦悩する方々は多く、生業の場を全て失い、立て直しに試行錯誤する方々の未来への希望とやり場のない思い、ただただ宮城・東北というだけでハンデを負ってしまう風評との闘いに憤りながら、根気強く取り組む方々、復興が進み新たな街の姿に期待を寄せる一方で、自宅の跡が分からなくなったと哀しそうに微笑む方など、私が県内各地で目の当たりにした県民のお姿は胸に深く刻み込まれております。

震災の爪痕は、表面的には薄れてきましたが、心の痛手は簡単に癒されるものではありません。このことを十分に踏まえながら、私たちは前を向き、心を奮い立たせながら、復興へ、そして更なる発展を目指して震災前よりも暮らしやすいふるさと宮城を築き上げるべく、歩みを進めなければなりません。県民一人ひとりが明日は今日よりもっとよくなるという希望が持てる社会を目指し、全身全霊を尽くしてまいりますので、県民の皆様及び議員各位の更なる御理解、御支援をお願い申し上げる次第であります。

平成三十年度は、宮城県震災復興計画に定める発展期の三年間がスタートし、復旧から復興へと県民の皆様とともに取り組んできた流れをより強く確かなものとし、復興の総仕上げに向けて踏み出す極めて大切な年となります。平成三十二年度までに復興を果たすとの意気込みで、復旧・復興事業の更なる推進を図ることとしており、災害公営住宅の整備は来年度中に全て完了する見通しであるほか、公共土木施設等の復旧・復興事業の進捗は概ね計画どおりとなっております。複数の事業間での工程調整や計画の見直しが必要となったり、用地取得や地元合意に時間を要したりするなど、進捗に課題を抱える事業もありますが、全国各地から派遣いただいている応援職員の力も得ながら、丁寧かつ粘り強く対応してまいります。

ソフト対策では、心のケアセンターの運営や被災地域の自治会活動への助成などをはじめ、被災者の心のケア、災害公営住宅等に入居されている方々の心身の健康状況の把握や、地域コミュニティの形成に関するきめ細かな支援は、来年度も的確に実施してまいります。さらに、これらは息の長い取組が必要であることから、中長期的な視点に立って今後の対応を検討したいと考えております。

地域振興、経済振興策は、復興需要の収束もにらんだ施策展開が必要となってまいります。少子化や人口減少社会への対応にも留意しながら、産業の活性化、観光振興、雇用創出や人材育成、若年層の県内定着などに取り組むとともに、競争力と魅力ある農林水産業の創出に知恵を絞り、地域経済の持続的な発展、交流人口の拡大と定住者の増加に向けて取り組んでまいりたいと思います。

少子高齢化や人口減少は、国を挙げて乗り越えなければならない極めて大きな社会的課題でありますが、我が国の技術力は高く、潜在的労働力も活用の余地は十分にあり、ロボットの導入や外国人労働者の受入れなど、持続可能な社会の実現に向けて検討されるべき方策はまだまだあります。本県が進める、介護分野でのIT・ロボット技術を活用した機器の導入支援や外国人人材の活用、また、留学生の県内定着を目指した施策などはこうした課題への対応と軌を一にするものであり、鋭意推進するとともに、子どもを生み育てやすい環境づくり、さらには、高齢者や女性の社会参加を促進し多くの方が生きがいを持って暮らせる社会の形成に向けて、力を注いでまいります。

上工下水の三事業を一体として官民連携により運営するみやぎ型管理運営方式につきましては、水道法改正の動向など外的要因に左右される部分もありますが、平成三十二年度の導入を目指して全力を傾けてまいります。そのため、来年度は、専門的な知見を十分に加えながら、実施方針の策定や事業者の募集・選定に向け準備を進める予定としております。また、市町村や県民の皆様にも事業の導入効果などについて丁寧に説明を行い、御理解を得られるよう努めながら民の力を最大限活用するモデル事例となるよう、取り組んでまいりたいと考えております。

世界に目を転じますと、多極化、無極化が進展する中で、大きな時代の転換期の只中にあることをひしひしと実感いたします。大国間のパワーバランスには変化が生じ、我が国周辺における緊張の高まりには引き続き注意が必要です。また、ヨーロッパでは欧州連合の行方や独立運動の波紋が注目され、中東情勢は様々な不安要素をはらんでおります。寛容と多文化共生の精神の重要性が増す中で、オリンピックとパラリンピックの平和の祭典としての意義はたいへん大きいものがあります。平昌での本県ゆかりの選手をはじめとする日本選手団の活躍を切に願う次第です。東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けましても、サッカー競技が実施される本県としまして、円滑な開催はもとより、「復興五輪」の位置付けの下、復興の姿や復興支援への感謝に加え、本県の魅力を国内外に発信できるよう、着実に準備を進めてまいります。

国際政治に波風が立つ中で、世界経済は不確実性を抱えつつもおおむね堅調に推移してまいりました。しかし、金融市場の動向や新興国経済の下振れリスクなど先行きには不透明感も漂っています。我が国の経済については、先月公表された政府の経済見通しによりますと、雇用・所得環境の改善が続く中で緩やかに回復しており、今年度の実質経済成長率は一・九パーセントのプラス成長が見込まれております。来年度においても、海外経済の回復基調を前提としながら、国の「新しい経済政策パッケージ」の政策効果などにより、雇用・所得環境の改善が続き、消費や設備投資など民需中心の景気回復が見込まれるものとされております。

本県においては、復興需要が収束に向かうという固有の状況を抱えており、この課題に対処し国内の景気浮揚の流れを地域経済や中小企業・小規模事業者に確実に呼び込み、一人でも多くの県民が景気回復の実感を得られるようにすることが肝要です。県土の均衡ある発展にも意を用いながら、富県宮城の取組を引き続き推進し、保健・医療・福祉や環境、教育施策の充実に繋げる好循環を、いっそう確固たるものにしたいと意を強くしております。

(当初予算の編成方針)

次に、当初予算の編成に当たっての基本的な考え方を御説明申し上げます。

国の平成三十年度予算案は、税制改正や経済対策と合わせて、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算として編成されております。その中には、保育の受け皿拡大、保育士・介護士の処遇改善等の「人づくり革命」や、地域企業による設備・人材への投資促進等の「生産性革命」のほか、地方創生の推進などに要する経費が重点的に盛り込まれ、一般会計の総額は九十七兆七千億円と過去最大の規模となりました。また、東日本大震災復興特別会計には、震災復興特別交付税をはじめ災害復旧事業費や復興交付金など、復興の推進に必要な財源が計上されており、来年度も引き続き復興事業に専心できるものと評価しております。

地方財政対策では、社会保障関係費や地方創生、公共施設等の適正管理に要する経費が重点的に計上された結果、地方一般財源はほぼ前年度並みの水準が確保されました。地方税収は全体で若干の増加を見込む中、地方交付税原資の確保に地方公共団体金融機構の金利変動準備金の活用を図り、赤字地方債である臨時財政対策債は今年度並みとするなど、所要財源の確保と財政健全化の両立に苦心が窺える内容となっております。

平成三十年度当初予算案は、昨年十月に策定した「平成三十年度政策財政運営の基本方針」に基づき、引き続き被災した方々への支援をはじめとする震災からの迅速な復興に最優先で取り組むとともに、「政策展開の方向性」に沿った施策など、課題解決のための施策に予算を重点配分することとして編成したものです。

このうち震災対応分は、国の復興予算を最大限活用するとともに、復興基金など県独自の財源も活用し、震災復興計画の着実な実施に向けて、被災した方々への支援や地域活性化に繋がる施策を積極的に予算化したものであります。

通常分の歳入では、税収の大きな伸びは期待できないほか、地方交付税は抑制基調とされており、収支均衡予算の編成には、退職手当債など特例的な県債の活用や基金の大幅な取崩しに依存せざるを得ない状況です。このため、既存事業はシーリングの設定などにより抑制を図った上で、新たな施策を厳選して重点化しております。この結果、平成三十年度当初予算案は、一般会計の総額では今年度を下回りましたが、依然として一兆円を超える規模に達しております。

震災に係る国の手厚い支援制度は、復興・創生期間の終期である平成三十二年度までは継続される見通しですが、その後も取組が必要な施策は種々ございます。現時点におきましては、平成三十三年度以降の財政面をはじめとする国の支援策は明確となっておりませんが、今後も他の被災自治体と連携しながら情報収集に努め、国に対して被災地の実情を明確に示し、支援の働きかけを行ってまいりたいと考えておりますので、議員各位の御理解と御協力をお願い申し上げる次第であります。

このような先行きの不透明感や、厳しさが一段と増した財政状況を踏まえ、持続可能な財政の堅持に向けて財政運営の指針となる新たな戦略を策定いたしました。来年度はこれに基づく対策を着実に実施するとともに、事務事業の見直しに向けた取組を継続しながら、予算の効果的・効率的な執行を徹底し、災害や多少の景気変動では揺るがない足腰の強い財政基盤を築いてまいりたいと考えております。

平成三十年度当初予算案における主な施策について、「政策財政運営の基本方針」に掲げた四つの「政策推進の基本方向」に沿って御説明申し上げます。

(震災復興の総仕上げ~力強くきめ細かな復興の推進~)

初めに、震災復興の総仕上げについて御説明申し上げます。

まず、被災された方々の生活再建と生活環境の確保ですが、今なおプレハブ仮設住宅等で不自由な暮らしを余儀なくされている方々が、一日も早く恒久的な住まいを確保できるよう、相談や戸別訪問など転居に関する支援を進めます。また、新たな住まいで安らぎと潤いのある生活を送るためには、地域との関わりが極めて重要です。このため、コミュニティの形成について、交流拠点の整備やイベント活動への支援を継続的に行います。被災者の心の復興では、地域で活躍するNPO等の役割も非常に大きいことから、活動経費の助成などを行い、行政と民間が連携してきめ細かなサポートに努めてまいります。

放射性物質汚染廃棄物が保管されている地域の方々にとりましては、廃棄物の処理が終わらない限り真の復興はありません。各圏域で農林地還元や試験焼却に関する取組が進められておりますが、県といたしましても、一刻も早い一時保管の解消を目指し、各圏域での処理の促進が図られるよう、市町村と緊密に連携しながら対応してまいります。

地域における保健・医療・福祉提供体制の回復では、引き続き心のケアセンターの運営を支援し、被災された方が心身の問題や不安から解放され、暮らしに笑顔が戻るよう着実な取組を進めてまいります。震災当時の中学一年生が今年成人式を迎えるなど、この七年間で子どもたちはそれぞれ大きく成長いたしました。しかし、幼少期や多感な時期に否応なく惨状を目にし、家族や友人を一瞬にして失うという壮絶な体験をした方の中には、今なお潜在的な心の傷を抱えているケースも多いと指摘されています。来年度は新たに石巻圏域において子ども・若者総合相談センター設置モデル事業を実施し、関係機関のネットワークによる様々な困難事例への相談対応を行うとともに、地域の実情に応じた支援の在り方を検討いたします。また、各学校には引き続きスクールカウンセラーを配置するほか、こども育英基金を活用し、心のケア支援員による一人ひとりに寄り添ったきめ細かな対応を図るなど、支援が行き届くよう努めてまいります。

次に、「富県宮城の実現」に向けた経済基盤の再構築についてでありますが、引き続きグループ補助金や県単独補助金などにより被災事業者の本設復旧などを支援いたします。また、経営の安定化や海外も視野に入れた販路の回復・開拓や、新たな創業意欲をお持ちの方への支援を行います。

観光面では、これまでの取組で得られた手応えを踏まえ、来年度は通年型のキャンペーンを実施いたします。先月公表しましたとおり、幅広い年代から支持を受ける国民的男性アイドルグループの強力な御支援が得られることとなっております。特に若年層や親子向けに大きな訴求力が期待できますことから、我が県の四季折々の魅力を存分に発信し、交流人口の拡大と県全域での底上げを図ってまいります。また、観光入込客数が伸び悩む沿岸部においては、教育旅行の誘致に向けた交通費助成制度を創設いたします。さらに、気仙沼市や東松島市などでは、来年度中のオープンに向け韓国版トレッキングであるオルレのコース整備が進んでおり、県としてもより一層のPRやコースの充実に努めます。

民営化二年目を迎えた仙台空港は、国内線、国際線ともに新規就航により路線が拡充され、昨年の利用者は速報値で三百三十七万人と過去最高を記録するなど、好調に推移しております。四月からは東北と山陰とを結ぶ初めての直行便となる出雲線が開設される予定であり、航空会社等との連携による更なる路線拡充とともに、航空需要の拡大や二次交通の利用促進に取り組みます。

農林水産業の早期復興については、被災農地や漁港施設等の復旧を推進するほか、沿岸地域のニーズを踏まえ、震災による小規模な山林崩壊箇所の復旧を促進いたします。また、企業版ふるさと納税の活用による六次産業化の取組を進めるなど、創意工夫しながら農業の更なる所得向上と雇用創出を図ります。水産業関係では、県産水産物の販路拡大に向け「みやぎ水産の日」の取組を継続するほか、販売会や商談会への出展費用を助成します。また、海外販路の拡大に対応できるよう、食品衛生管理の基準であるHACCPの認証取得について引き続き事業者への支援を行います。

震災記憶の風化が進む一方、風評被害はいまだ根強いことから、首都圏等での県産品の魅力体験イベントの開催や各種広報媒体を活用した情報発信などに丁寧に取り組むほか、特用林産物の放射性物質検査について、新たに検査機器を導入し県内産の安全な原木の供給再開を後押ししてまいります。

公共土木施設の早期復旧については、沿岸部の河川、海岸、港湾などの防潮堤工事が最盛期を迎えており、引き続き他自治体からの応援など可能な限り人員を配置するとともに、積算や工事監督支援業務などの外部委託を最大限活用しながら、平成三十二年度の完了を目標に進捗を図ってまいります。また、復興事業として整備が進む三陸縦貫自動車道、県北高速幹線道路や県道大島浪板線など交通インフラの整備につきましても、一日も早い完成に向け重点的に整備を推進いたします。

次に、安心して学べる教育環境の確保についてでありますが、復旧を進めていた農業高等学校につきましては四月から、気仙沼向洋高等学校は八月から、それぞれ待望の新校舎での授業が開始されます。待ちに待った生徒や学校関係者の感慨もひとしおと思います。地域産業に貢献する人材の育成という県民の期待に今後とも十分に応えられるよう、充実した環境でより一層、勉学に励んでいただくことを期待しております。

防災機能と治安体制の回復につきましては、自主防災組織の育成・活性化モデル事業の実施箇所数を増やし、地域防災力の総合的な強化に力を入れます。また、震災の記憶・教訓を広く国内外、次世代に伝え続けていくことができるよう、今年度実施している伝承の在り方検討を踏まえ、震災遺構や伝承施設、アーカイブ等のネットワーク化に官民連携で取り組む仕組みの具体化を図ってまいります。

被災庁舎の復旧では、石巻合同庁舎は今月末、防災ヘリコプター管理事務所は四月から供用開始の運びとなり、南三陸警察署は来年度に用地取得を行う予定です。被災した交番、駐在所のうち、未だ復旧に着手していない箇所につきましては、今後、市町の復興まちづくりの進展も勘案しながら、復旧の可否を慎重に検討してまいります。

(地域経済の更なる成長)

次に、地域経済の更なる成長についてであります。

私は先日、フランスへ赴き、パリ郊外の放射光施設を視察してまいりました。現地では、施設周辺への企業、研究所の集積状況や地域の変化について説明を受け、波及効果の大きさを実感いたしました。関係機関と緊密に連携しながら我が県への整備実現を目指すとともに、セミナーや地域企業の参入に向けた勉強会の開催など、産業利用を見据えた取組も進めてまいりたいと考えております。

企業誘致には引き続き注力し、県内への投資促進を図るとともに、地元企業の技術力向上や取引拡大を進め、雇用の場の創出と県内ものづくり産業の底上げに繋げてまいります。次世代素材として脚光を浴びるセルロースナノファイバーにつきましては、産学官のプロジェクトによる情報収集、技術開発と応用拡大を図り、製品開発に向けた研究・普及啓発に努めます。

地域の中小企業・小規模事業者の振興につきましては、震災後の環境変化、人口減少や多様化する消費者ニーズに対応するため、新たな販売手法に取り組む商業者等を支援し、地域の買い物機能の補完強化と商業の持続的発展を図ります。また、みやぎ産業振興機構の中小企業の支援ノウハウを基盤として伴走型支援体制を拡充し、ものづくり産業の生産現場における生産性改善の取組を強化するほか、新商品や新サービスの研究、開発など新事業の創出を支援いたします。

人手不足の解消と人材育成につきましては、首都圏の大学生を対象とした県内企業へのインターンシップを実施するほか、UIJターンを希望する学生の就職支援拠点を仙台市内及び東京都内に設置し、県内企業の人材確保を支援いたします。さらに、民間就職サイトに特集コンテンツを開設し、学生に対して本県の魅力を発信するほか、県内中小企業・小規模事業者の求人情報の掲載経費を助成します。

また、外国人留学生は本県においても増加傾向にありますが、卒業後に日本での就労を希望する学生と、ものづくり産業やIT産業等の県内中小企業とのマッチングを支援し、有為な人材の宮城への定着と人手不足の解消に努め、県内企業へのダイバーシティ経営の浸透にも繋げてまいります。

昨年末、水田農業地帯の「大崎地域」が世界農業遺産に認定されました。中世から続く大崎耕土の水管理などで冷害や洪水、渇水を克服しながら良質米を生産し、地域の生物多様性を維持してきた水田農業システムが評価されたものであり、伝統や文化を守ってこられた地域の皆様の御尽力に敬意を表するとともに、関係各位に改めてお喜びを申し上げます。県といたしましても、大崎地域の恵まれた資源の磨き上げと発信に力を入れ、多くの方々に訪れていただけるよう取組を進めてまいります。

農林水産業の振興につきましては、来年度に本格デビューする「だて正夢」の生産体制の整備とブランド構築を着実に推進するほか、宮城米全体の評価向上にも取り組みます。地域農業の担い手が減少する中にあっては、特に農業法人の役割が重要ですが、経営のノウハウや労務管理などの面で課題を抱えている法人も多いことから、経営安定化のための支援を行います。このほか、先進的な園芸法人の育成のため経営サポートや施設整備へ助成を行うとともに、アグリビジネス経営体の育成や農産物直売所の支援にも取り組み、雇用の創出と地域農業の活性化を図ります。農産物の生産工程を管理する手法でありますGAPにつきましては、リスク管理体制の整備によって農産物の安全性が確保され、経営改善や販路拡大にも繋がるものであることから、農・畜・林産の各分野において認証取得を後押しします。昨年九月に開催された全国和牛能力共進会では、県代表牛が区分のトップを獲得し、都道府県別の団体表彰では過去最高の四位となるなど、関係各位の努力が実り躍進を果たしました。来年度も引き続き、優良な雌子牛の導入経費への助成など生産基盤の強化を図り、県産牛の生産拡大に努めてまいります。県産材の利用拡大については、中高層建築にも利用可能な建材として注目されるCLTの活用を促進するため、モデル施設の建設を支援いたします。

平成三十二年度には、本県で「第四十回全国豊かな海づくり大会」が開催されます。復興した我が県水産業の姿と宮城の魅力を全国の皆様に示す絶好の機会であり、来年度は実行委員会の運営や事務的な準備について、関係各方面と連携し、成功に向けて着実に推進してまいりたいと考えております。

(安心していきいきと暮らせる宮城の実現)

次に、安心していきいきと暮らせる宮城の実現についてであります。

今年度は乳幼児医療費助成の拡充をはじめ、入学準備支援制度や子育て世帯への貸付金の創設など、子育て分野の充実に大きく踏み込みました。来年度は、これらの取組に加え、保育補助者の雇用経費に対する助成制度の創設や、保育士キャリアアップ研修の実施といった保育人材確保の取組を強化するなど、更に前進させます。

また、次代を担う子どもや若者が希望に包まれて成長でき、地域社会に活力がみなぎるよう、結婚、出産、子育てまで切れ目のない支援体制の整備や貧困対策の拡充に取り組みます。さらに、一人ひとりが多様な場で活躍できる社会づくりを目指し、男女共同参画社会の実現に向けた動きをより一層促進するため、魅力ある「働き方」と「女性の活躍」を全国に発信するフォーラム「WIT二〇一八宮城」を開催し、県内企業・団体等と連携して、社会全体の気運醸成を図ります。

福祉分野では、外見からは分かりにくい困難を抱えた方々への配慮を促す「ヘルプマーク」を導入し、必要な方へ配布するとともに、マークの普及啓発に取り組みます。また、商業施設等の御協力も得ながら、障害のある方などが施設の駐車区画の一部を優先的に利用できるよう、「パーキングパーミット」制度を実施いたします。さらに、がん治療による脱毛に悩む方々に対する医療用ウィッグの購入助成や、骨髄提供者が入通院をする際の経費を助成します。日常の様々な場面で手助けを必要とする方々について、可能な限りきめ細かな支援に努めてまいりたいと考えております。

医療分野では、精神科救急の二十四時間対応について、仙台市とも連携しながら体制を整え、県立精神医療センターにおいて来年度中に実施することとしております。また、救急搬送時間の短縮に向けて、仙台医療圏において救急医療情報システムの機能強化を行います。従来の医療機関側で入力する情報に加え、現場の救急隊員がリアルタイムで入力する搬送情報等が新たに共有されることにより、搬送の効率化が図られるものと期待しております。さらに、障害のある方が身近な場で適切な歯科治療が受けられるよう、県歯科医師会が行う在宅歯科に係る人材育成や機器整備を支援いたします。介護現場の環境改善や介護士の処遇改善の支援、また、外国人人材の活用につきましては、今年度に引き続き、着実に取り組みます。

国民健康保険につきましては、来年度から県も運営に加わり、財政運営の責任主体として安定的な財政運営や効率的な事業運営の確保など中心的な役割を果たしてまいります。このため、新たに国民健康保険特別会計を設置し、来年度の予算規模は一千九百四十三億八千九百余万円となっております。策定した運営方針に基づき、市町村と十分に連携しながら円滑な制度移行に努めてまいりたいと考えております。

教育の面では、英語力を向上させ、国際的視野を広めるとともに、海外の大学での学びを目指す挑戦を後押しするため、仙台二華高等学校において国際的に認められる大学入学資格が得られる「国際バカロレア」の認定取得を進め、グローバル人材の育成に取り組みます。

県立の高等学校及び特別支援学校におきましては、今後四年間で主な教室にプロジェクタやタブレットパソコン等のICT機器を整備いたします。授業の効率化が図られ、児童生徒の考える時間の増加や教員の負担軽減にも繋がるものであり、ICTを活用した学習指導力の向上を図り、情報化社会において主体的に学び、考え行動する人材の育成を目指してまいります。また、私立学校に対しては、引き続き運営費補助や授業料軽減補助などにより、経営の健全化と保護者負担の軽減を支援してまいります。

いじめ・不登校対策につきましては、不登校が増加するいわゆる中一ギャップの解消に向け、小中学校の連携を強化するなど、新たな不登校を生まない調査研究モデル事業に着手いたします。このほか、子どもの心のケアハウスは来年度、新たに七市町が設置する予定であり、児童生徒の学校復帰支援体制の構築を支援いたします。

四月には宮城県体育協会と宮城県スポーツ振興財団とが合併し、「宮城県スポーツ協会」が新たに誕生いたします。合併の相乗効果を発揮し、競技力向上と県民がスポーツに親しむ機会の創出による健康増進、スポーツの力による地域活性化など、本県のスポーツ振興の大きな推進力になるものと認識しております。県といたしましても、来年度はスポーツ選手強化のための予算を拡充するとともに、特にジュニア世代からのアスリートの発掘、育成強化を推進します。

警察関係では、築館警察署と若柳警察署を統合する(仮称)栗原警察署につきまして、用地取得費を計上し、建設工事の準備に着手いたします。近年は、犯罪事案にインターネットが何らかの関わりを持つケースが非常に多くなっております。既にサイバー空間は不可欠な社会インフラであり、IoTの普及によって重要性は不可逆的に増大することから、サイバー犯罪対策を増強いたします。また、依然として後を絶たない特殊詐欺事案やDV防止への対応について、引き続き着実に取り組んでまいります。

(美しく安全なまちづくり)

次に、美しく安全なまちづくりについてであります。

近年頻発する豪雨や台風による被害低減に向け、緊急的に取り組んでいる災害に強い川づくりは、吉田川、大江川や七北田川などにおいて、床上浸水対策特別緊急事業や河川局部改良事業を進め、流域住民の一層の安全・安心を早期に確保できるよう、引き続き適切に対応してまいります。大規模災害への備えとしましては、七つの圏域で整備を進めている防災拠点に大型テントや投光機など運営資機材等の配備を順次進める計画であり、円滑な初動体制の構築に向けて万全を期します。

なお、火口周辺での火山活動の高まりが懸念されております蔵王山につきましては、関係機関との情報共有など連携を強化しながら対応に万全を期すとともに、風評被害が生じないよう、正しい情報の発信等にも留意してまいります。

震災により失われた海岸防災林につきましては、平成三十二年度までに再生工事を完了させますが、植栽した樹木が活着し生長するまでの期間は、特に管理が重要となってまいります。このため、県民参加型の防災林管理活動を促進することとし、活動団体への支援のほか、育林体験ツアーやシンポジウムの開催など地域とのパートナーシップを重視した取組に着手いたします。

公共施設の長寿命化につきましては、土木施設をはじめ、公営住宅、学校や文化・スポーツ施設などの修繕を行うこととしております。施設が多岐にわたり箇所数も多いことから、優先度を適切に見極めつつ、県庁舎等整備基金も十分活用しながら計画的に進めてまいりたいと考えております。なお、この取組には県庁舎等整備基金の残高維持が肝要でありますので、その点にも留意してまいります。

持続可能な社会の実現につきましては、地球温暖化が喫緊の課題であり、県も率先して対策に取り組んでおりますが、太陽光や地中熱などの新エネルギーを県有施設へ導入することは、温室効果ガスの排出量削減に加え、中長期的な管理コストの低減や災害時の電力確保が期待できます。このため、来年度は主要な施設について導入可能性調査を実施し、費用対効果など検討に必要な基礎的データの収集を行います。また、市町村が行う下水処理と一般廃棄物処理を連携し、汚泥と食品廃棄物を混合して処理する高効率のメタン発酵技術の開発を進め、食品廃棄物等のリサイクルの推進に向けた研究を行います。

中山間地域を中心に大きな課題となっている鳥獣被害の防止につきましては、対策予算を増額するほか、地方振興事務所に配置する鳥獣被害対策専門指導員も更に二名増員することといたしました。市町村と密接に協力しながら、被害の低減に鋭意努力いたします。

以上、施策の主な内容について御説明申し上げましたが、平成三十年度の当初予算規模は、一般会計で一兆一千二百六億一千余万円、総計で一兆六千百十五億九千五百余万円となります。財源の主なものとしては、県税二千九百十六億円、地方交付税二千十四億円、国庫支出金二千七百六十一億五千三百余万円、繰入金二千二百四十六億百余万円を計上し、また、臨時財政対策債及び借換債を含め県債二千四十一億八千八百余万円を発行することにしております。

次に、予算外議案については、条例議案四十件、条例外議案五十五件を提案しておりますが、そのうち主なものについて概要を御説明申し上げます。

まず、条例議案でありますが、議第十七号議案は、介護医療院の施設に関する基準について必要な事項を定めようとするもの、議第二十二号議案は、知事及び副知事の退職手当の支給割合を引き下げようとするもの、議第二十三号議案は、一般職の職員の退職手当支給率の見直しを行おうとするものであります。また、議第二十五号議案、議第二十八号議案、議第四十九号議案ないし議第五十三号議案及び議第五十五号議案は、手数料の新設、改定や廃止などを行おうとするものであります。議第三十三号議案ないし議第四十六号議案は、国が定める基準の改正を受け、福祉施設の人員、設備や運営に関する基準を改正しようとするもの、議第四十七号議案は、国民健康保険財政安定化基金による交付事業の要件等を追加しようとするもの、議第五十四号議案は、美術館及び歴史博物館において、障害のある方に対する観覧料の減免割合を引き上げようとするものであります。

次に、条例外議案でありますが、議第五十八号議案は、公平委員会の事務の受託について、議第六十号議案は、新みやぎ森林・林業の将来ビジョンの策定について、議第六十一号議案は、包括外部監査契約の締結について、議第六十四号議案は、地方独立行政法人宮城県立こども病院が作成した業務運営に関する目標を達成するための計画を認可することについて、議第六十五号議案ないし議第八十七号議案は、工事の委託及び請負契約の締結について、議第八十八号議案ないし議第百十号議案は、工事請負変更契約の締結について、議第百十一号議案は、市町村受益負担金について、それぞれ議会の議決を受けようとするものであります。

以上をもちまして、提出議案に係る概要の説明を終わりますが、何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。

(追加説明)

提出議案の概要を御説明申し上げます。

議第五十七号議案は、公の施設の指定管理者を指定することについて、議会の議決を受けようとするものであります。

何とぞ、慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。

お問い合わせ先

広報課企画報道班

宮城県仙台市青葉区本町3丁目8番1号

電話番号:022-211-2281

ファックス番号:022-263-3780

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