「伝統的漁具漁法\」よりホヤについて
| T ホヤの利用と養殖 | ||||||
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| U ホヤ養殖技術 | ||||||
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| V ホヤの流通・加工について | ||||||
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1 ホヤの利用状況
海のパイナップルと称され、夏の味覚としてなくてはならないマボヤであるが、わが国では東北・北海道を除き、案外利用されていない。マボヤの分布範囲は広く、北海道から九州、さらに朝鮮・山東半島方面までに及んでいるが、太平洋側では、牡鹿半島、日本海側では男鹿半島以北に多く、特に、岩手県宮古市付近から宮城県金華山に至る三陸沿岸が主産地となっている。ホヤの仲間にはマボヤのほか、日本だけでも百数十種もあるが、専ら食用としているのはマボヤの他に北海道で食されるアカボヤくらいである。
マボヤの独特の風味は食べ慣れた人には堪らない魅力であるが、初めての人には少しきつすぎるかもしれない。この風味は揮発性の微量成分でホヤ特有の不飽和アルコールCynthiaolによるものである。ホヤを食べた後に水を飲むと口中に甘く爽やかな味わいが広がるが、これはグリシンやアラニン等のアミノ酸と塩基としてグリシン・ベタインの作用によるものとされている。
マボヤは消化されやすく、吸収の速い動物性炭水化物の供給源として貴重であり、カキと並ぶ優れた海産栄養品ということができる。ホヤの旬は夏で、冬のホヤに比べグリコーゲン含有量が約8倍になり、甘みと旨味が増す。ホヤの産卵期は冬であり、3〜4月頃より回復し始め肉重量も増加する。6〜7月には最大となることから、古くから「ホヤは藤の花が咲く頃が旬」とか「ホヤはキュウリと食え」と言われているが、よく的を得ている。
食用以外の利用方法としては、三陸沿岸ではアイナメやカレイ釣りの餌としても利用されたことがある。また、近年、あるオーディオメーカーがマボヤの外皮から抽出したセルロースをコーン型スピーカーの振動板に漉き込んで従来の紙だけのものより深みのある自然な再生を可能にした。
わが国の歴史上でホヤ記載が見られるのは、かなり古く、平安朝初期の延喜式、さらに下って、徳川時代より松前、津軽の海洋に産すると知られ、老海鼠・保夜・石勃卒などの字で記されてアワビ、ナマコと併せて食用に供されてきた。
ホヤ類を利用する国は、わが国をはじめ韓国、中国(香港)さらにフランスでも食用としているらしい。また、南米のチリでは、群体ホヤをピウラと呼んで生食やスープの身として珍重している。こうしてみると、地球上でホヤ類を利用しているのは、極東アジアの東洋人とラテン系の民族だけのようである。
現在は安定した養殖生産が続いているが、養殖がまだ普及していなかった戦後の食料事情が悪い時期には天然ホヤが乱獲され、絶滅に近い状態に陥った地方もあるという。
ホヤ養殖の創始については、明治38年(1905年)頃、本県唐桑村地先で畠山豊八という人が船の錨綱に使用した山ブドウの蔓に沢山のマボヤの仔が付着していたことにヒントを得て、山ブドウの蔓を採苗器として養殖を試みたと言われている。その後、養殖方法に工夫を加え、養殖業として始まったのは昭和初期とされているが、生産統計に養殖ホヤの生産量が記載されはじめたのは昭和41年の47トンからである。
マボヤの採苗器は前記のように当初、山ブドウの蔓を彼岸頃から秋にかけて伐採(春〜夏の蔓は表皮が剥がれやすい)し、両端をシュロ縄で縛って長さ3mにして用いていた。この採取器は海水中でも4〜5年間は使用できたという。しかし、その後、入手が困難となり、昭和35年からはパームコード6本の三つ編みや北洋鮭鱒用の古網を撚ったもの、カキ殻が主流となっていた。付着器はホヤの幼生ができるだけ付着しやすいような構造にすることが重要で、太いロープを1本使うより、細いロープを数本編んだ方が付着面積が多くなるばかりではなく、付着器の表面に凸凹ができ、付着を促進させる。さらに、付着器の形状は円柱状より帯状になる方が良い。
当時、採苗器の投入は11月初旬を目安としていたが、これは蔓からのアク抜き期間を見込んでいるためで、実際の幼生の付着ピークは12月中旬〜1月下旬である。採苗水域は外洋水の影響を受けやすい、水深6〜10mの岩礁や砂礫の場所で行われるが、天然ホヤの付着状況を見て判断する。
採苗された種苗は山ブドウの蔓に付けたものは、分散を行わず、そのまま本養殖に移行するが、パームコード等に付けたものは1.5〜2cmに成長した時点でマグロ延縄の廃品ロープ4本を撚ったものに巻き付けて本養殖に移行させる。分散・移植に当たっては高温や乾燥に十分注意しなければならない。岩手県山田湾では昭和40年代まで採苗器から外した種苗をクレモナ糸3〜4号に根を挟み込み、さらにそれを径8〜9cm、長さ1.8mのナラやサクラの丸太に巻き付け、沈子で垂下する独特の方式も行われていた。垂下方式は筏方式と延縄方式があり、宮城・岩手県では両方式が採用されている。延縄方式は昭和36〜37年頃から宮城県で始まり、現在ではこの方式が主流となっている。
本養成後の管理としては、付着物の除去と間引きが重要である。垂下深度が浅い場合にはムラサキガイや他のホヤ類等の付着動物が付きやすく、成長を阻害するので掃除をする必要がある。また、間引きはホヤがまだ、小さいうちに成長の遅れた個体を針で刺すか、ナイフで傷つけて殺す。ホヤが大きくなってからこれを行うと、刺し殺したホヤが腐り、健全なものにまで悪影響を及ぼす。
なお、隣の岩手県では昭和5〜6年頃より山田湾、越喜来湾等で嗜好品として細々と養殖されていたというが、本格的な養殖が始まったのは、昭和15年に本県唐桑から種苗を購入されるようになってからとされている。また、広田湾米崎地区では昭和46年に本県から種苗を導入し養殖を開始、天然採苗にも取り組み、48年には大量採苗を実施し、ホヤ養殖が企業ベースに乗った。
本県では昭和40年代後半よりカキ養殖から労力の比較的少なくて済むホヤ養殖へ転業する漁家が急増し、生産量も一挙に6,000トンを超えたが、この頃は需要が東北地方に限られており、その後、3,000トン台にまで落ち込んだが、交通網の整備、観光ブーム、さらには三陸地方の人々の都市への進出にともなって、大都市における需要が増えたこともあり、現在は5,000トン前後の生産量で推移している(図1)。宮城県でホヤ養殖が盛んに行われている水域は、鮫ノ浦湾、女川湾、雄勝湾、志津川湾及び気仙沼湾で市町別で見ると牡鹿町、女川町、歌津町、雄勝町の順で生産量が多い(図2)。この他、岩手県の大船渡湾や山田湾、青森県の陸奥湾等でも行われているが、全国生産量の64〜94%は宮城県で生産されている。
1 マボヤについて
(1)分類と分布
マボヤは、原索動物門、尾索綱、ホヤ目、壁性亜目に属する。
そのほか壁性亜目には、アカボヤ、エボヤ、シロボヤ、イタボヤなどが属している。このうち食用としては、マボヤのほかにアカボヤ、シロボヤ、エボヤ等が利用されている。
マボヤは、北海道から九州、四国方面まで広く分布しているが、特に東北地方から北海道に多い。
(2)形態
イ 体形
体型は10〜15cmほどの卵形であり、その頂上部に入水孔と出水孔があり、入水孔からは海水と餌料を取り入れ、出水孔からは海水、排泄物、卵や精子を排出する。入水孔は閉じると十文字になり、出水孔は一文字となる。
ロ 被のう及び軟体部
マボヤの体は、被のうと呼ばれるセルロース類似のツニシンを含む硬い皮のうで包まれている。
被のうは、表皮から分泌形成されたもので、結締組織に似ており、朱色または褐色で硬く、多くの円錐状の被のう突起でおおわれている。被のう下には、筋肉層があり、その下に内臓がある。雌雄同体で、生殖腺は中央に卵巣があり、その周縁に精巣がある。
(3)生理
イ 呼吸及び摂餌
入水孔から入った海水は、体内の腔所の中の鰓のうに運ばれる。そこには無数の鰓孔が規則的に並び、分泌された粘液で膜状に覆われている。海水と共に入った餌料は、この膜に絡め取られて胃に送り込まれる。また、鰓のうには多くの血管が張りめぐらされ、海水が通過する際に水中の酸素を吸収する。
ロ 産卵期
三陸沿岸域における産卵期は11月下旬から3月上旬頃までで、その盛期は12月下旬から1月下旬頃である。
ハ 産卵
マボヤの産卵は、最初に出水孔が一文字になり、その一端より精子が糸を引くように流出し、次いで両方の水孔が閉じられるとともに、体腔の急激な収縮による圧力で出水孔より卵・精子が約50〜60cmも噴出されて受精する。この後、体腔は緩やかに復元し約2〜4分間で反復放卵・放精される。この産卵行動は一時間に6〜10回位行われる。
受精卵の大きさは平均330μm、淡黄色の顆粒を含んだ透明な卵膜におおわれる。室内実験によると、全期間を通じて積算された1個体当たりの産卵量は約32万粒で、産卵行動一回の産卵量は約4万8千粒であったという。
ニ 発生
マボヤは受精約24時間後に初期尾胚期、48時間後にはふ化を開始し、尾虫形幼生として半日〜3日間ほど浮遊生活の後、頭部にある付着突起で適当な基盤に付着する。
マボヤ受精卵の分布は、概ね全層に均一に認められる。ふ化前の卵の時期には、遊泳できないので、潮流に乗って浮遊しているだけと考えられる。その後、尾虫形幼生になって遊泳力がつき、中層域に能動的に分布してから、基盤に付着する。マボヤを採苗するときはその場所における中層水深に採苗期を設置すればよいが、沖側の水深が20m以上になると、幼生の付着層は常に水深10m前後に形成されるとみられる。
(1)採苗器(付着器)
ホヤの種苗はロープや貝殻などの固い基質に付くが、養殖して販売できるようになるまで3年もの長期間を要し、腐って落ちるおそれがあるので、採苗用の付着器は腐り難い、耐久性のものであることが必要である。
従来、付着器として山ブドウのつるを5〜10本位を束ねて三つ編みにし、両端をシュロ縄などで縛り、長さ2〜3m、幅7〜10cm位にしたものが用いられてきた。
昭和36年頃から、山ブドウのつるが入手し難くなったことから、種苗の付きが良いパーム・コードが使用されるようになった。パーム・コードは、径0.7〜1cmのもの6本を三つ編みにし2〜3.5m位の長さにして用いられた。
このほかにも、化学繊維のロープ(径5〜8mm位)やマグロ延縄の廃品ロープなどロープ類も使用されてきた。長期間養殖する場合は、耐用年数の短かいパームコードと、耐久力の強い反面高価な化繊ロープをより合わせるなどして使用された。マグロ延縄の廃品ロープでについては安価で耐用年数も長いが、種苗の付きが悪かったので、やはりパーム・コードとより合わせて使用された。
しかしながら近年では、化繊ロープにカキ殻を1連当たり70枚程度挟み込んで、付着面積を大幅に増した付着器が、一般的に用いられるようになっている。
なお、付着器の選定のあたっては、マボヤの幼生が白色系の基質を避けて付着する傾向にあるので、注意が必要である。
(2)採苗適期
マボヤは浮遊期間が短い生物で、年により水温条件が異なると産卵時期も変わりやすいことから、採苗適期を見逃してしまう危険性も高くなる。
幼生が大量に出現する前に植物プランクトンが急増する現象が多いことから、マボヤは餌となる植物プランクトンの増加を産卵の合図として感知していると推測されている。
冬至から正月にかけて(水温10〜11℃)植物プランクトンの増殖が小規模に始まり、それ応じてマボヤの一斉産卵が大規模に起こり、その後さらにプランクトンの増殖に対応した産卵が小規模に続いていくと考えられている。
水温の降下が遅い年には、ユウレイボヤが採苗器を被覆しマボヤの成育を妨げるので、採苗時期の的確な把握が特に重要となる。
(3)採苗
採苗は、外洋水の影響を強く受ける、主に水深6〜10m位の岩盤や砂礫の場所で11月下旬頃から行われている。
イ 採苗施設
採苗施設は、延縄式で、構造はカキの養殖施設と殆ど同様であるが、カキよりも水中重量が軽いので浮樽の数は少なくする。
ロ 付着器の垂下
付着器は吊糸の状態で、採苗施設の桁綱から垂下する。垂下深度は普通4〜6m位で1本の吊糸から少ない人で2本、普通5〜6本、多い人で10本の付着器を垂下するが、垂下本数が多いと内側の部分の種苗の付きが薄くなるので、この場合は特に金具を付着器の間に挟み、間隔を拡げるようにする。
吊糸と吊糸の間隔は30〜80cmで人によって異なる。長さ90m程度の施設の場合で、垂下する付着器の本数は約1,200〜2,400本である。
ハ 種苗の付着密度
採苗だけに用い、本養殖の際に分散することを前提にした付着器の場合は、種苗は多少厚く付けた方が良いが、付着器をそのままの形で養殖しようとする場合は、長さ3mの付着器で500〜600個の密度が適当である。厚付きになると生育不良や品質低下(形・肉の厚み)を招くため、後で間引きなどの手数が掛かることになる。適当な付着密度を図るために、採苗時期や付着器の垂下深度を調節する必要がある。
(4)採苗後の種苗管理
付着器を垂下して翌年の4月頃になると、肉眼で白い点のようにホヤの付着が確認できるが、赤い色がつき形態的にもホヤであることがはっきり分かるのは5〜6月頃である。この間いろいろな付着性動物が付着するので、余りひどい場合はこれらを除去する。また、5月下旬頃からは特にムラサキイガイが多く付着するので、事前に水深7m以下に深下げしイガイの付着を軽減する。
宮城県のマボヤ養殖は先にも述べたように、牡鹿半島以北の鮫浦湾から気仙沼湾にかけて行われ、特に牡鹿町の寄磯並びに前網地区が生産の中心となっている。
その養殖は大きく分けて天然採苗、養成(垂下養殖)の工程からなり、採苗の殆どは地先で採苗したものを、あるいは県内で採苗した種苗を使用し、出荷までの期間は分散後2〜4年を要している。
(1)養成(養殖)
イ 分散・移動
昭和46年頃の採苗は、主に付着器にパームコード(6本を三つ編みにしたもの)を 用い、その分散方法は、採苗した翌年の9月下旬〜10月中旬にかけて、マボヤが付着したパームコードを1m程度に切断し、1本ごとにほぐしたものや中古のマグロ延縄用ロープ(4本を二子撚りを長さ3mに撚り合わせたもの)を養殖用ロープとして用いロープに1連当たりの採苗数が500〜600個を目安に、種苗付着密度をみながら間隔を調整して巻き込み、その両端を養殖用ロープの撚りの間に差し込んでずれを防ぐ方法で養成を行っていた。
現在の採苗は、パームコードは使用しておらず、カキ殻を1連当たり70枚程度連結したものを付着器に用いているのが一般的である。また、分散方法は従来同様、9月下旬〜10月中旬にかけて、化繊の養殖用ロープに種苗の付着密度をみながら間隔を調節し、60〜70枚をロープにはさみ込み養成を行っている。
分散の適期は、気温、水温、マボヤの生理状態あるいは作業能率等からみると前述した時期が適当である。
ロ 養殖施設
養成は、カキ養殖と同様な延縄式で行われており、その規模は地域によってそれぞれ異なり、桁網の長さは83〜100mのダブルが主で1部では100mシングルで養殖している地域もある。
マボヤの養殖の場合は、カキよりは重さが軽いので、施設の浮力はカキ養殖よりも少なくてすむが、外洋性の漁場が適地であるので、係留用資材は吟味しなければならない。また、成長による重量増加等を考慮し、浮玉を追加する等の作業をしなければならない。
ハ 垂下深度
養成は、一般的には6〜9mの水深で行われているが、垂下する水深が浅いとムラサキイガイや他のホヤ類等の付着生物が付着するので、イガイ発生時期には深下げして対応しなければならない。
(2)養殖管理
従来の養成期間中の管理としては、分散時にムラサキイガイ等の付着生物の除去作業や厚付きの場合の間引き等を行っていた。
間引きは、密殖するとマボヤの形が鶏の卵型またはラッキョウの様な形になり、肉がうすく、むき身の歩留まりが悪くなるのを防ぐための作業である。その方法はマボヤが小さいうちに成長の遅れているものを1個づつ引き抜く方法、針や包丁で傷を付ける方法等があり、引き抜いて間引きする方法は、移植できる利点はあるが、反面残したマボヤの根をゆるめることになり余り好ましい方法ではなく、最適な方法としては、作業効率の良い包丁で傷を付ける方法が取られていた。
しかしながら、付着器にカキ殻を用いた場合、間引きすると付着器が壊れ、その後の養成ができなくなるので現在は出荷まで間引きは行わず、分散時の状態で養殖している。また、ムラサキイガイ等の付着物除去は桁網、錨網、浮玉等に付着したもののみ掃除しており、マボヤは垂下水深の調整によって付着を防いでいる。
(3)生産技術の現状
前述したように、現在の養殖方法は、付着器、養殖資材、管理方法等が技術の改良や資材の進歩によって変わってきており、その現状を県内では主要生産地の一つである牡鹿町寄磯地区の事例を参考として紹介する。なお、寄磯地区では平成7年は、28経営体(他にホタテ・ワカメ養殖の複合経営)が、100mダブルの延縄式施設で113台を行使し、1経営体当たり3〜5台を行使している。
イ 種 苗
寄磯地区でも以前は、杉の葉等を用いて自家採苗していたが、現在は、同じ町内の隣接する前網あるいは谷川地区から9月中旬〜11月中旬にかけて、5mm〜1cm前後に 成長したマボヤ種苗の付着したカキ殻原盤(70枚/連)を購入して養成している。なお、前網、谷川地区の採苗時期は生産者によって違いがあり、早い人は10月中旬から行い、遅い人は翌年の1月中旬頃まで行っているが、12月の冬至時期が盛期になっている。
ロ 分 散
購入した種苗は、原盤の付着密度及び成長後波浪等によって垂下した連と連とが触れあわない程度の間隔を考慮しながら、養殖用ロープとして綱二子撚りした10mmのポリプロピレンロープ(長さ10〜12m)に20〜25cm間隔で、1連当たり40〜50枚程度をはさみ込んでいる。また、剥き身出荷の場合は原盤1枚当たり50個前後を、また、殻出荷の場合は70個前後付着した原盤を使用している。
ハ 養 成
養成は養殖用ロープ180本をダブル(360本)とし、当初は種苗も小さいことからその間隔を50cm程度空けて垂下しているが、施設に余裕のある生産者は、岸側(水深8〜15m)の比較的静穏な海域で1年程度養成後、沖側(水深25〜40m)の施設(出荷して空いた施設)に移し、その際は桁網1本に1m間隔で90本垂下して1年間養成している。施設に余裕のない場合は、出荷まで垂下した場所で養成している。なお、出荷時のマボヤの養殖形態は、剥き身出荷は玉状に、殻出荷は筒状になるように育成している。
ニ 養殖施設
養殖施設は前に述べた100mダブルの延縄式施設を使用している。この施設は、桁網、錨網に26mmの化繊ロープを使用し、錨網は鉄性の錨で固定している。浮玉(直径 36cm)は岸側での養成当初は、養殖養ロープ8本当たり(4m)1個を目安に設置するが、4〜6ヶ月経過すると付着物で重くなるので、その間に1個を追加している。
ホ 養殖管理
養成中の管理としては、浮玉が海面から沈下しているようなら、桁網や錨網、浮玉等に付着したムラサキイガイ等の除去を行い、養殖用ロープへのムラサキイガイ等の付着防止は、水深の調査によってのみ行ってる。
ヘ 出 荷
マボヤは、採苗してから2年ぐらいは余り大きくならず、以降の半年で大きくなり出荷できるようになる。つまり、採苗を開始してから2年半、即ち3年目の5月頃から出荷し、これを3年コと呼んでおり、更にもう1年置いて出荷するものを4年コと呼んでいる。
牡鹿町寄磯地区では、剥き身出荷(3年コ)は5月中旬頃から8月中旬にかけて、生産者が加工場で剥き身処理したものを出荷し、殻付き出荷(4年コ)は1月中旬から7月にかけて殻のまま出荷しており、剥き身・殻付きとも水揚げ後、岸壁で小型のものを除く選別作業(殻付きは更に大中の選別)を行っている。
1 流通と加工方法
●流通
ほやの養殖は宮城県で開発され、牡鹿半島以北の県北中部海域の主要な養殖産業と
して重要な地位を占めており、隣県である岩手県等にも養殖技術が伝搬している。
ほやの生産量は、本県が全国の約7割を占めており、ほやの養殖に関しては、圧倒
的な地位を占めている。(表−1,2)
その生産量の推移をみると、多少の変動はみられるものの比較的安定しており、大
きく減少することや増加することはない。これはほやは海の「パイナップル」とも呼
ばれる東北地方の珍味であるものの、その独特の風味から嗜好が特定の地域に限定さ
れている傾向があり、全国的な消費となってはいないことにも起因している。
また、ほやの流通には生鮮品(殻付き,剥ほや等)及び加工製品(塩辛,調味漬物
等)の形態があるが、その大部分は生鮮品でしかも殻付きが主であり、そのことからも流通先が限定されることとなっている。
●加工形態
ほやは生鮮出荷が主体であるが、主に水産珍味加工業者により、ボイル製品(蒸し
ホヤ、いちご煮等)、びん詰(塩辛等)、調味加工品(塩辛、粕漬、ほやキムチ等)
ホヤ薫製などに加工されている。
加工製品は、多くは地場消費にまわされるが、一部は関東、中部方面にも出荷され
ている。
県では、水産加工の振興を図るため、昭和49年度から宮城県水産加工品品評会を
開催しており、ほやについても多くの加工品が出品されている。(表−3,4)
表−1 宮城県におけるホヤ養殖の推移
|
施設面積 |
収穫量 |
|||||
|
|
年 次 |
経営体数 |
いかだ式 |
はえ縄式 |
(暦年) |
||
|
|
昭和55年 56年 57年 58年 59年 60年 61年 62年 63年 平成元年 2年 3年 4年 5年 |
1,059 996 984 964 961 960 941 950 866 801 774 733 737 723 |
千
m2
2
0 − − − − − − − − − − − − |
千
m2
286
297 339 389 419 419 359 343 307 287 294 276 300 311 |
t 3,714 3,602 4,541 4,717 5,256 3,871 4,892 5,136 6,585 7,587 4,921 4,571 5,328 5,610 |
|
|
資料:農林水産統計
表−2 全国でのホヤ養殖の推移
|
|
|
収 穫 量(暦年) |
|
|||||
|
|
年 次 |
全 国 |
宮 城 県 |
岩 手 県 |
青 森 県 |
北 海 道 |
|
|
|
|
63年 平成元年 2年 3年 4年 5年 |
t 7,360 9,629 10,406 7,244 6,656 7,834 8,225 |
t 5,136 6,585 7,587 4,921 4,571 5,328 5,610 |
t 1,931 2,729 1,949 1,655 1,688 1,871 2,121 |
t 293 315 870 668 394 594 466 |
t 0 0 0 0 3 16 28 |
|
|
資料:農林水産統計
表−3 宮城県水産加工品品評会受賞品(ホヤ関係)
| 種 別 |
受 賞 年 度 |
商 品 名 |
加工業者名 |
|
|
平成3年度 (第18回) |
ホヤ母ちゃんの 味のハーモニー |
(株)八幸水産 [石巻] |
|
昭和 61年度(第13回) |
めかぶほや |
(株)八幸水産 [石巻] | |
|
宮城県議会議長賞 |
昭和 61年度(第13回) |
ほやの串さし |
(株)八幸水産 [石巻] |
|
宮城県水産林業部長賞 |
|
ホヤ調味漬 |
は志賀商店 [女川] |
|
|
昭和 49年度(第1回)
|
ホヤ塩辛 |
木村剛商店 [女川] |
|
連合会長賞 |
昭和 54年度(第6回) |
ほやの塩辛 |
(株)八葉水産[気仙沼] |
|
昭和 59年度(第11回) |
ほやそぼろ |
(有)鈴興商店[気仙沼] | |
|
団体連合会長賞 |
昭和 60年度(第12回) |
ほやチップ |
(有)鈴興商店[気仙沼] |
表−4 宮城県水産加工品品評会に出品されたホヤの加工品(平成4〜6年度の事例)
第19回宮城県水産加工品品評会(H5.2.19開催)
○地区推薦審査品
| 部門 |
番号 |
品 名 |
規 格 |
地 区 |
出品者名 |
|
2 |
31 |
ほやのこのわた漬 |
80gビン入 |
塩 釜 |
(株)十字屋 |
|
2 |
32 |
かきとほやと帆立ひもと |
28g袋入 |
塩 釜 |
(株)十字屋 |
|
2 |
35 |
ほや酔明 |
20g箱入 |
石 巻 |
水月堂物産 (株) |
|
2 |
36 |
海のパイン |
|
石 巻 |
(有)八幸水産 |
|
2 |
37 |
めかぶホヤ母ちゃん |
|
石 巻 |
(有)八幸水産 |
|
3 |
58 |
ほやの塩辛 |
180g |
気仙沼 |
(株)横田屋本店 |
○一般審査品
| 部門 |
番号 |
品 名 |
規 格 |
地 区 |
出品者名 |
|
3 |
182 |
ほや燻製 |
50g |
気仙沼 |
(株)横田屋本店 |
|
3 |
200 |
ほやキムチ |
180g |
気仙沼 |
(株)横田屋本店 |
注:部門 2 乾燥品・薫製・珍味, 3 鱈子・塩辛・漬物
第20回宮城県水産加工品品評会(H6.2.24開催)
○地区推薦審査品
| 部門 |
番号 |
品 名 |
規 格 |
地 区 |
出品者名 |
|
3 |
100 |
ほやキムチ |
180g |
気仙沼 |
(株)横田屋本店 |
○一般審査品
| 部門 |
番号 |
品 名 |
規 格 |
地 区 |
出品者名 |
|
4 |
381 |
ほ や そ ぼ ろ |
110g |
気仙沼 |
鈴興商店 |
|
5 |
408 |
保夜物語 |
|
気仙沼 |
水産加工研究会 |
注:部門 3 鱈子・塩辛・漬物,4 冷食・煮物・その他,5 未販売開発品
第21回宮城県水産加工品品評会(H7.3.15開催)
○地区推薦審査品
| 部門 |
番号 |
品 名 |
規 格 |
地 区 |
出品者名 |
|
2 |
34 |
保夜物語 |
85g |
気仙沼 |
食品 (株) |
|
4 |
51 |
蒸しホヤ |
400g |
女 川 |
(有)片倉商店 |
○一般審査品
| 部門 |
番号 |
品 名 |
規 格 |
地 区 |
出品者名 |
|
2 |
155 |
ホヤ塩辛 |
180g |
女 川 |
(有)片倉商店 |
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3 |
171 |
ほや塩干 |
400g |
気仙沼 |
(株)横田屋本店 |
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〃 |
187 |
しそ巻ホヤ |
180g |
女 川 |
(有)片倉商店 |
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〃 |
188 |
ホヤキムチ |
180g |
女 川 |
(有)片倉商店 |
|
〃 |
194 |
ホヤ塩辛 |
120g |
女 川 |
(有)阿部 |
|
〃 |
195 |
ホヤキムチ |
120g |
女 川 |
(有)阿部 |
|
4 |
244 |
ほ や そぼろ |
110g |
気仙沼 |
鈴興商店 |
|
5 |
251 |
からし入酢みそホヤ |
350g |
石 巻 |
(有)八幸水産 |
注:部門 2 乾燥品・薫製・珍味,3 鱈子・塩辛・漬物、4 冷食・煮物・その他,5 未販売開発品