| ■みやぎ海外夢大使の活動報告 |
■森 博之さんの報告(最終更新 08/02/25)
平成17年度シニアボランティア ブータン派遣
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ブータン報告書 |
平成17年度シニアボランティア ブータン派遣
森 博之さん |
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(掲載2007/12/27)
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ブータン王国での気象業務事情
はじめに
私は、独立行政法人国際協力機構JICAのシニア海外ボランティアとして、ここブータンの気象事業を2006年3月から2年間の予定でお手伝いしています。ところで、派遣される前に、インターネット等によりブータンの気象事業の現状について情報収集を試みましたが、観測データも含めて、ほとんど入手することができませんでした。すでに、ブータンに1年以上滞在し、さまざまな事情が理解できるようになりつつあります。そこで、ブータンにおける気象業務に関係することをご紹介いたします。
「ブータン王国とは」
ブータン王国は北緯27度、東経90度付近で、2大国の中国とインドに挟まれたチベットにあり、ネパールの東方に位置しています。国土は東西300km、南北150kmほどで、ほぼ九州ほどの面積があります。昨年、チベット側の約10%の国土が中国に渡され、一団と小さくなったばかりです。また、昨年には4代国王から5代国王に代替わりがあり、2008年には新国王の戴冠式をはじめ、選挙制度を導入しての初めての国政選挙が実施され、国会議員の大幅な入れ替えや前大臣の交代などが予定されています。このような状況の中で、自然災害に対する防災の認識が広がり始め、リスク管理としての気象予報についても関心が示されるようになってきました。
「ブータンでの気象業務の概要」
気象の主要な業務として考えられる内容は、測器・観測、通信・システム、予報、開発・教育があって、場合によっては、海洋、航空、気候などもあげられると思います。さて、ここブータンでは、気象観測と測器のメンテナンスを実施する部署、天気予報を提供する部署、国際空港での気象情報を提供する部署がそれぞれにあって、これらが3つの省に分かれています。その他、気象観測データを利用した研究機関がいくつかの省等に分散しています。 |
「観測業務」
気象観測は約20年前に始まりました。現在は、基本的観測所が64か所、詳細項目の観測所が12か所、峠での特別観測所が8か所あります。日常的な維持管理は貿易産業省の職員が実施し、日々の観測は各地方で委任された人たちで行われています。一部の観測所には自動観測機器が加わり、観測データはメモリに保存され、定期的に職員により回収されます。また、大部分の観測所は一日に1回、9時の定時観測のみ行われ、その結果は、1ヶ月間にまとめられ、各観測所の担当者から貿易産業省の担当部署あてに郵送されています。オンラインによる接続は近い将来に3か所実現予定ですが、今のところはまだ接続されてはいません。 |

プナカ県の気象観測所 |
「天気予報提供業務」
天気予報情報を国営のマスコミに提供しています。これは、農業省が担当しています。業務内容は正確には、天気予報を行っているわけではありません。国外の天気予報企業から天気予報を入手し、その配列を調整した者を放送局と新聞社にメールで送信しています。担当者はすべての観測所データを見ることが可能ですが、そのデータは早くとも観測後3か月以上経過しています。ここには、外国援助で導入したNOAA画像受信機器がありますが、これを予報に利用するのにはかなり無理がありそうです。事実、3年前に導入した後、まだ一度も利用していないようです。また、ここの部門は、農業試験場と共同研究を行い、各地域においての気候条件に適している作物選定等の事業を推進しています。 |

農業省農業気象室の事務室 |
「航空気象業務」
ブータンに唯一ある空港が、パロ国際空港です。便数は時期により変動しますが、大まかには週に10往復の離発着があります。まわりが山にかこまれた谷沿いにある空港ですので、離発着の時刻は天気が比較的に安定する朝に集中しています。この時刻に合わせ、適切な気象情報を航空関係者に提供するのが空港内にある航空機勝負門の業務です。主要な業務は、空港内に設置、運用されている気象観測装置の維持、管理、データの定期的な発信があります。さらに、もっとも重要な業務は機長等に最新の気象情報を提供することです。この資料はタイ航空気象局からデータ、予想天気図等を取得しています。ところで、実際にここの飛行機に乗ると、パイロットの操縦技術に驚きます。離陸時は、急上昇しながらすぐに旋回しますし、着陸時には谷沿いに旋回しながら高度を下げ、その直後に滑走路に着陸します。おそらく、関係者は連日、相当な緊張を続けているかもしれません。
「3省体制とその関係性」
3つの省に分かれているので、基本的にはそれぞれの組織で業務を実施しています。この中で、協力関係があるのは、農業省の気象部門と貿易産業省の気象部門の間には存在しています。ひとつは、農業分野の一環で設置した気象観測所のデータ収集は、農業省の代わりに貿易産業省の気象部門が実施し、設備のメンテナンスも合わせて実施しています。ただ、これらの観測データはオンラインでの提供ではなく、数か月ごとにファイル送付なので、農業省での天気予報には活用されていません。このように、農業省と貿易産業省の間では業務の関係性があるのですが、航空気象業務を実施している情報通信省の気象部門は他の気象部門との関係はありません。
「今後の業務の方向」
3省に分散している気象部門は将来的には1つの組織に統合することを目指しているとのことですが、各部門ともに日々の日常業務を実施することにのみ集中しているようです。さらに、日ごろ人員不足を言いながら、業務の中心的職員が国外に留学しています。2007年は貿易産業省と農業省の各1名が2年間から4年間、業務の場から離れています。 |
「ボランティアとしての関わり」
当初の半年間は支援要請があった農業省と貿易産業省との気象部門に対して、ヒアリングや討論などにより、私の支援方法としての最良の枠組み合意形成に集中しました。結局は双方で同一の要請内容であったことから、天気予報技術についての合同訓練を実施すること、さらに気象業務全般の改善方法に関しての支援を実施することで合意を得られました。その後の半年間では、天気予報作業を実施するための準備期間として、気象の基礎知識の習得についての支援を実施してきました。残りの1年間では、より具体的な天気予報技術の練習についての支援を行う予定です。 |
| さて、当初から疑問に感じていたことがありました。気象の技術支援等を含む国際機関として、世界気象機関WMOがあるはずです。あるいは、隣国インドとの技術協力関係の枠組みも可能性がありそうです。これらは、十分に機能しているのだろうかという疑問が現在でも消えていません。しかし、最近では次のような思いもあります。それは、もし、ブータンに統合化された気象部門がありしっかりとした政策計画も存在すれば、国外からの技術支援は比較的に容易に受ける可能性がありえるけれども、現在のような状況であれば、ボランティアのような関わり方も支援のひとつの方法と言えるかもしれない。このように考えています。 |

現在の主な支援先 |
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(掲載2007/12/27)
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「はじめに」
前回「ブータン王国での気象業務事情」の続報として、おもに気象業務の変化状況をご紹介します。私は、独立行政法人国際協力機構JICAのボランティアとして、ブータンの気象事業を約2年間お手伝いしてきました。この2年間のおおまかな業務の変化、あるいは今後のおおよその発展予想もご案内します。 |
「気象業務の背景」
ブータンは2大国の中国、インドに挟まれたチベットの国です。特に、インドとの関係は政治、軍事、経済、文化等のすべてについて強い影響を受けています。その中、慎重な国家政策のもと社会インフラを発展させてきました。禁煙、インドの全面的協力による大規模な水力発電所が建設され、本格的に稼働し、貴重な外貨収入源となっています。これら水力発電に関連し、河川管理の観点から気象観測等も推進されてきました。一方、多くの住民は、時速自給的な農業で生計を営んできます。この農業分野の発展を目指して、海外からの援助をもとに、農業基盤整備を目的とした気象観測も展開されてきました。これらの観測施設は年毎に整備され、現在は総数約90ヶ所に及びます。また、数年前の農業部門への気象災害を契機に、天気予報業務が開始されました。このような経緯のもと、3省による気象業務が展開されてきました。ところが、最近ではそれぞれの利用者からの不満が目立つようになり、観測データの品質、天気予報の精度等に対して、多くの疑問が表面化してきました。図1はブータン国営航空の飛行機がパロ国際空港へ着陸する直前の景色ですが、パイロットの高い技術の有視界飛行により、深い谷の中を旋回しています。ここでは、気象のデータは極めて貴重な存在ですが、その業務には問題が山積しています。 |

図1:パロ国際空港への着陸直前の景色(有視界飛行で深い谷の中を進む飛行機) |
「気象業務の変化」
2007年10月にそれまでと異なる方法で天気予報がスタートしました。それ以前には、農業省農業気象室が担当し、天気予報を国営の放送局と新聞社にほぼ毎日提供してきました。ここでの問題点は大きくは次の3点です。1)天気予報の作成は外国の企業がすべて実施していること。2)担当部署では入手した天気予報の評価を判断できないこと。3)情報提供の対象が限定的であり定常的ではないこと。このような状況の中、多くの利用者から天気予報の精度等への不満が生まれ、ほとんどの人々が天気予報を利用していない状況が続いていました。
そこで、関係者と協議した結果、次のような合意が得られました。農業省と経済省、当時の貿易産業省との間で将来の担当部署を調整すること、天気予報を実施できる環境を構築すること、将来の予報官に対して技術教育訓練を行うこと。さらに、この実現のための条件は、人員増がないこと、このための予算がないこと、加えて期限は私の任期内に実施すること、というものでした。この合意の直後に、これらを実現するためのプロジェクトが形成されました。図2は天気予報の技術訓練の内、野外実習風景のものです。このようなくんれんにより、実際の天気の詳細な記録、天気図類の資料の解析、各自が作成する天気予報、これらそれぞれを毎回比較、検討してきました。 |

図2:天気予報の技術訓練の内、野外実習風景(上に浮かぶ積雲の高度は4km) |
| このプロジェクトの成果として、10月には新天気予報が開始されました。この業務の大きな特徴は、実施部署が経済省エネルギー局気象部門に移管され、5人の天気予報官が毎日交代で天気予報を作成することです。具体的には、国内5予報区域に対する観測データの確認、インターネットを活用した各種天気図、衛星画像、ガイダンス類の収集とその解析を実施し、訓練中に作成した予報システムを利用して、全20県の翌日の天気予報を作成します。予報項目は、天気、最高・最低気温、および週に2回は新聞用に4日予報を行います。この新しい天気予報については、これまで新聞で2回記事として報道され広く知られるようになり、利用者・関係者からも好評を得ているようです。新天気予報が開始され一定期間が経過しましたので、予報実施部署では予報結果の評価を検証中です。この予報検証のねらいには、いくつかあり、直接的には、予報精度の向上が主目的ですが、その他にも、観測データの品質向上、予報ガイダンス作成能力の向上、予報作成方法の効率化などが考えられています。特に期待されていることは、観測データの品質管理です。現在の予報システムでは、天気予報の内容は最新の観測データに大きく依存する仕組みになっていますので、観測データの品質向上は天気予報の精度向上にも直結しています。このため、観測データの品質についての関心が一段と高まっています。 |

図3:ブータン中央部ブンタンの気象観測所(新旧セットの観測装置が並ぶ) |
観測データの品質向上へのこれまでの取り組みは限定的でした。データ収集のために、一部の観測所を定期的に巡回することと、各県に駐在する観測指導員への技術研修を年に1回開催すること、この程度の内容が実施されてきました。ところが、新天気予報の開始後には、観測データの品質向上のための検討会が何回か実施され、具体的な準備作業に取り掛かっています。
さらに、天気予報の運用に合わせ、主要3地点については、観測データの自動収集システムの導入が試みられました。構想から丸一年、設置・設定は終了しましたが、現在は運用のための調整を行っています。これは、将来的な全観測所の自動化に向け、発注者側の実践的な技術研修も兼ねていると考えています。図3と図4とブータン中央部ブンタン県のもっとも重要な観測施設です。この敷地には、新旧2セットの測器が設置され、2007年の空きにはオンライン収集装置も設置されました。この観測所のすぐ隣の敷地には観測指導員が常駐し、臨時観測、友人観測などにも対応しています。 |

図4:図3の観測所に隣接する事務所兼職員住宅(観測員が近傍に常駐するのは異例のタイプ) |
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「2008年以降の大きな動き」
2008年の春には、選挙制度を導入しての初めての国政選挙が実施され、国会議員の大幅な入れ替えや前大臣の交代などが予定されています。その時期を目指して、組織の大幅な変更も予定されています。気象部門は、現在の3省体制から、経済省エネルギー局に新部が組織され、その部に統合される見込みです。この統合により、これまでに比べ、ブータン政府の情報共有が推進され、国際気象機関WMO等との連携が強化され、外国からの国際協力が効果的に実施されると期待されています。
また、春から夏にかけては、新国王の戴冠式、王政100周年式典等の国家事業が続き、7月の新会計年度には、第十次5カ年計画がスタートします。行政・立法機関のほぼすべてが新しくなる新年度には、業務の基本計画が更新され、新しい職員により、いっそう充実した社会基盤の構築が期待されています。
現在2名の職員がWMOの奨学金を利用して留学しています。ひとりはロシアで、もうひとりはフィリピンで終始の取得を目指しています。彼らは2010年に復帰予定ですので、復帰後はブータン独自の数値予報システムが容易に実現できると思います。それまでの2年間は、おもに観測データの品質向上と天気予報の精度向上が推進される見込みです。
「国際協力のひとつの方法」
気象学の社会実践の場として気象業務があり、利用者の利便性向上が図られて社会への貢献が実現できると考えています。私はこれまでは日本国内だけしか考えてきませんでしたが、国外でも同じ事が言えたと感じています。特に、開発途上国と言われる国のひとつブータンでは、気象を業務化することに苦心してきたようです。
国際協力の手法としては、必要な物品の供与、相手先対象者の受入研修等、多くの協力がなされてきています。気象の分野では、WMOを中心とする数多くの国際的な協力関係の枠組みがあり、データの交換等に活用されてきました。しかし、気象業務がまだ本格的に実施されていないブータンなどの国にとっては、担当部署の職員と、共に考え、共に行動する人も必要とされているのかもしれません。
当初、驚いたことは、JICAへ支援要請を出した彼らには、具体的な要望・希望はありませんでした。彼らは今よりももっと良くしたい、という漠然とした願望だけを持っていました。しかし、良く考えてみると、この状況は当然だったと思います。これまで、新しい業務をほとんど開始したことがなく、国外の稼働後の姿を見ただけでは、そのプロセスは見えてこなかったと思います。彼らには適切な経験が必要だったと感じました。今回、彼らにも私にも試行錯誤の連続だったのですが、私には良い経験だったと思っています。ブータンの彼らにも同じように感じてほしいと考えています。 |
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| (掲載2008/02/25) |
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ブータンでの気象業務支援活動
1.活動概要
経済省気象部門における天気予報の業務開始を全面的に支援しました。これは、当初の配属先ではなく、追加により支援要請があった経済省、当時の貿易産業省の気象部門に対して、天気予報業務が実施できるように支援したものです。
さて、支援対象を変更した理由は、当初の配属先では、技術的条件、人員条件、予算条件のすべてについて、要請事項を満たすことができないと判断したこと。また、経済省気象部門の要請は、次の2点であったことが、判断材料です。
・ 天気予報業務を実施すること
・ 気象観測データの気候的解析を実施すること
この部署では、天気予報業務を実施するための条件は、教育訓練以外はすでに整っていたこと。一方、観測データの品質はかなり粗悪であるために、気候的解析の以前に観測品質の向上が必要であること。これらの理由のために、経済省において、天気予報業務を開始するための事項を支援対象にすることを決定しました。
2.主な支援活動項目
1) 気象に関する基礎事項の教育訓練プログラムの実施
気象に関する知識について、習得するための取り組みを実施しました。対象とした知識は、基本的な気象に関する知識に加え、気象に深く関係する物理、数学、統計、情報の分野を範囲としました。具体的な実施方法は、以下の通りです。
・ 適切なテキストの購入
・ 管理運営のもとでの図書の自習
・ テーマを選定した勉強会の実施
・ 基本事項についての学習発表会、討論会の実施
2) 地上気象観測を国際基準で実行するための教育訓練プログラムの実施
天気予報業務を短期的、中期的な視点で円滑に実施するために、主に、現在の天気への深い理解を図るため、さらに、近い将来に予想されるインド気象局とのオンライン接続時に必要不可欠な国際規約への理解を目的に、地上気象観測について、技術訓練を実施しました。訓練は、図書の学習と実地における実習であり、その学習項目は、以下の内容です。
・ 観測項目の理解
・ 観測用語の理解
・ 実地での観測訓練
3) 基本的な天気予報技術を習得するための教育訓練プログラムの実施
天気予報業務を実施するまでの事前訓練、および天気予報業務実施後における事例研究のおもに2種類の訓練を実施しました。
@事前訓練
以下の内容について、実習を実施しました。
・ 基本的な天気予報業務の手法を理解すること
・ 観測データに基づいたブータンの気候を理解すること
・ 予測システムを構築すること
・ 現在の気象状況の把握方法を理解すること
・ 将来の気象変化の推定方法を理解すること
・ 最終成果物の作成方法と妥当性を理解すること
A事例研究
天気予報業務の実施上、予報作業が困難であった場合、あるいは特徴的であった場合などを事例として選択し、その時点での気象資料を再吟味しながら、精度の高い天気予報のための討論会を実施した。
4) 天気予報結果の評価手法及び予報技術向上のための教育訓練プログラムの実施
天気予報の恒常的な精度向上のためには、天気予報結果の評価およびその分析力が重要なかぎになることから、天気予報技術の向上プロセスを体験できる訓練プログラムを実施しました。具体的には、概要を説明し、実際の天気予報結果をもとに、次のようなプロセスを試行しました。
・ 集計、分析、問題点の発見、改善計画の作成、改善プログラムの実施
5) 気象観測データの品質向上に関する教育訓練プログラムの実施
観測についての重要な観点は、測器、観測技術、データの品質管理の3点だと思いますが、ブータン政府の担当部署では必要な技術水準にあるとは言えない状況です。しかし、その責任者・担当者ともに、過去の実績に基づいて、かなりの自信と意欲はあります。そこで、この事項に対しては、直接的に対応することではなく、天気予報技術の向上の観点から観測についての問題点を発見する方法で実施しました。つまり、観測データの精度向上が天気予報の精度向上に直接的に関連することから、観測データの具体的な数値に対して、その妥当性の評価を随時実施しました。
6) ブータン政府内の天気予報業務実施組織についてのコンサルティング
業務の組織については、基本的にはブータン政府の内部の問題ではありますが、気象部門が多くの部署に分散し、その相互関係がほとんど機能していませんでした。ところで、気象業務の特徴から、情報の一元管理と関係部署との効果的な連携が必要不可欠です。そこで、その理想形と現実とを理解してもらい、省を超えた討論の機会を持ちました。これにより、それぞれの部署においても共通の認識を深める効果が得られたと思います。
7) 中長期の気象業務政策立案に関するコンサルティング
3年間から10年間程度の将来的な展望について、部門の管理者及び中堅職員と討論を実施しました。気象部門の発展のためには、教育が欠かせません。しかし、その教育のためには、ブータンの場合には、国外へ出張をし、訓練を受けなければなりません。膨大な時間と予算が必要になります。このため、より効果的な教育のためには、中長期の政策計画が必須です。
8) その他の支援内容
主には、次の3点について実施しました。
@各県に展開している観測指導員に対して実施された、技術向上訓練において、観測の重要性についての講習を実施しました。
A気象についての知識普及と分散していた3省の関係強化を目的に、世界気象ディのイベント開催を実施しました。
B世界気象機関WMOの国際協力局との関係強化に協力しました。
3.配属先の動向等
ブータン政府における気象業務の実施機関は、次の3部門が存在します。
1) 経済省(旧貿易産業省)エネルギー局気象課;気象観測、天気予報
2) 農業省農業気象室;農業気象分野の農業試験場との共同研究
3) 情報通信省航空局航空気象課;パロ国際空港における航空気象業務
これらの組織は、2008年3月に実施される初めての国会議員選挙の直後に、統合化される予定で、経済省エネルギー局に新部、水文気象サービス事業部が創設されます。この部のもとに、観測課・予報課・航空気象課・農業気象課等の各組織が構成される予定です。また、これに先立ち、天気予報業務については、2007年10月において、農業省農業気象室から経済省気象課に業務移管されました。
ところで、気象業務の主要なものは、気象観測と天気予報です。ブータンでは、過去約20年間にわたって気象観測業務が実施されてきました。また今回は、天気予報業務を開始することができましたので、ようやく国家としての気象業務が本格的に稼動したことになります。今後は、より良い精度の情報を提供するだけではなく、関係機関との効果的な連携により、充実した気象業務に発展することが予想されます。
4.今後の支援について
気象業務は国際協力が欠かせません。今後もブータン政府気象部門にとっては、世界気象機関WMO、さらに隣国インド気象局との関係が強化されると思います。ブータンでは本格的な気象業務が開始されたばかりですので、今後はさらなる業務推進のために、職員への継続的な教育・訓練、効果的な設備投資等が実施されることになります。このために、今後も気象部門からさまざまな種類の支援要請が出されることは十分に予想がつきます。その要請に基づいて、どのように希望に応えるのかは、JICAにおけるブータンへの支援計画に依存するはずです。この支援計画が機能していなければ、支援の必要性は判断できないと考えます。
5.ブータンの人々との交流
ブータンの人々は、相手が日本人と限らず、どのような人にも、とても親切でおだやかに接します。その中でも、何人かの人から直接に、日本人は好きだ、ということを耳にしました。その理由はさまざまで、きれい好きだから、リッチだから、柔和だからなどの要素が返ってきました。この気象部門の一部の職員にも、機器等の贈与に期待した者がいましたが、物品ではなく技術の提供が目的であることを理解してもらいました。
また、気象部門の職場、職員に対しては、冷静な判断を心がけるために、一定の距離感を保ちましたが、日常生活の上では、さまざまな人たちと友人関係を築けたと思います。野菜市場で販売している家族、お祭ツェチュで会った家族、旅行中にあった友人など、いつでもどこでも気楽に話し合える、そのような人柄に巡り合えたと思います。
ところで、ブータンの人々の習慣や価値観に対しては、できるだけ尊重するようにしてきましたが、深く理解すること、あるいは共感することはできませんでした。例えば、時間的な感覚、人と人との物理的な距離感、仕事に対する責任感などについて大きな違いを感じました。このような状況の中で、違和感や反感などにより、以前は相当大きなストレスを感じたかもしれませんが、ここでの環境によって、一定の感覚的な距離感を保つことで、自分の感情をコントロールできるようになりました。
6.ボランティアとしての総合的な経験
海外シニアボランティアの経験は、そのインパクトの大きさから当初の期待を裏切らないものでした。習慣、価値観、風習などが異なる環境の中で、ある職場の人たちと共に行動し、手探り状態から、何らかの光を見つけ出す、このような経験はとても貴重なものだったと感じています。普段の生活においても、さまざまな人との交流は印象的でした。
一方で、離れた家族などには少なからず精神的あるいは経済的な負担があったことは、ある意味、覚悟が必要だということでもあるのでしょう。
ブータンとは限らないとは思いますが、自分自身や家族をとても大切に思う気持ちは、あらためて考えたいことになりました。また、支援活動の中でも、特に相手に対して、体験しながら技術を確実なものに作り上げるプロセスは、私にもすばらしい体験になりました。
残り日数が少なくなって、カウントダウンを始めたブータン・ティンプーより。
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